ウクライナ政府は、ロシア軍捕虜の映像をSNSで公開。

激しい戦闘はウクライナ領土だけでなく、インターネット上でも繰り広げられています。

ウクライナとロシア情報戦 ネットを使った戦略

ウクライナの国防省がSNSに投稿した映像…画面に映っているのは、捕虜のロシア兵だといいます。

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捕虜が語った言葉は…

映像の“ロシア兵捕虜”
お母さん、ここから連れ出してください。

――ここに何をしに来た?ここは…一般国民を殺している…悪いこと何もしていない人たちを殺している

「悪いことを何もしていない人たちを殺している」という言葉。

さらに、侵攻を命じたロシア政府や軍へも厳しい言葉が。

映像の“ロシア兵捕虜”
もともと一般国民を殺さない、避けて通る

――それは全部嘘だったぞ!幼稚園も、住宅地も攻撃しているじゃないか!子ども達がいるでしょ!これを見ているなら、声を出せよ、大きな声をプーチンにでも、これ(この動画)見せて!

アメリカCNNニュースによると捕虜たちの中には、装備が十分与えられていないと訴える者や全く訓練を受けていない者、19歳の兵士もいたといいます。

ロシア兵の捕虜についての情報をウクライナ側が発信する狙いは?

軍事ジャーナリスト井上和彦さん
これはロシアに対する心理戦ですよね。やはりここに自分の夫であったり、息子であったり。こういった人たちが映っているということになったら気が気じゃないですよね。当然ながら戦争が長引けば、彼らが帰還するのが長引くし、その親族家族から「戦争早くやめてくれ」といろいろ声がロシアの中で起こっている。そういう声を出してもらうように、これが目的ですよね

映像公開はロシアに対する「心理戦」と指摘。

さらにこんな映像も。

ロシア兵「占領者が店で強盗」ウクライナ側が公開

これはウクライナ国防省のフェイスブックに公開された防犯カメラの映像。

ウクライナの街の店の様子だといいます。

兵士の一人はレジ前に立ち何かを物色しているように見えます。

さらに、白い袋を手に足早に店を出ていく兵士の姿も映っていました。

ウクライナ国防省は、ロシア兵による集団略奪の様子を撮影したものだと説明。「占領者が店で強盗している」と激しく批判しました。

軍事ジャーナリスト井上和彦さん
このことによってロシア軍の威信の失墜と、国際社会に向けてロシア軍というのがこんなことをやってるんだと。ウクライナのNATO加盟に反対し、やってきた軍隊がこの末端の兵士が個人の商店に入って、こんなようなことをやっぱりやってると。なんてけしからんやつだ、というロシアに対する非難の声は、さらに、大きくなってきますからね。その意味では効果的なんです

ロシア国内でも軍事侵攻に反対する声が上がっています。

筑波大学 中村逸郎教授
反プーチン運動が大きくなってきている。そこに刺激を与えたのでは?もう7000人近い一般市民が身柄を拘束されたという情報まで入ってきています。また前線にいるロシア兵たちも、インターネット、恐らく携帯などでやっていると思うんですね。ロシアの兵士達の士気を低くしてやろうという狙いもあると思います

一方、ロシア側も、情報統制に乗り出しています。ロイター通信によれば、ロシア通信規制当局は、2月28日、Googleに対し、ロシア軍やウクライナ市民の被害状況について誤った情報をすぐに遮断するよう命じました。

激しい戦闘の裏側で続く、ロシアとウクライナの情報戦。

この先の戦況にどのような影響をもたらすのでしょうか?

ウクライナ発表「ロシア軍死者5300人」真実は?

情報発信をめぐって、両国には大きな食い違いがあります。

なかでも差があるのが、ロシア軍の死者数です。

ウクライナ国防省の発表によりますと、2月24日~28日午前6時までで、ロシア軍死者は約5300人という発表がされています。

一方、ロシア側、ロシア軍はこれまで「死者ゼロ」と発表していましたが、27日、初めて軍の死傷者の存在を認めました。ただ、人数は公表していない状態です。

そんな中、ウクライナはSNSでロシア兵の死者や捕虜を検索できるサイトを開設し、動画を公開しています。

ウクライナ側の情報は正しいという主張にもなり、ロシア国内で起きている反プーチン運動に刺激を与えて、さらに前線にいるロシア兵たちの士気を下げる狙いがあると筑波大学教授・中村逸郎教授は言います。

ロシア側の動きは報道に対する規制です。

ウクライナでの軍事行動について、「攻撃」「攻略」「宣戦布告」といったワードを禁止し、もし使用した場合「虚偽情報の流布」として削除命令がでるといいます。

さらに、この命令に従わない場合、約510万円の罰金を科される可能性があります。

つまり、メディア側を規制する動きがロシアでは出ています。

私たちはロシア、ウクライナ、両者の情報についてどのように捉えていけばよいのでしょうか?

専門家「現代戦の特徴」両面みることが大切

フジテレビ報道局 風間 晋解説委員
ロシアやウクライナに限らず、戦争をやっている国というのは、古今東西、情報戦というのはやります。それは、相手の国に対する情報戦であると同時に、自国民に対する情報戦という側面も持っています。やはり、捕虜の映像や、あるいは略奪の映像を流すことによって、それは自国民の戦う意志を高める、自分たちは正しい戦いをやっているという動機付けにも繋がります。だからこそ、両面見なくてはいけないと思います

フジテレビ報道局 風間 晋解説委員
これは確証があるわけではないのですが、こういったビデオ作りというのは、ウクライナの国防省がダイレクトにやっている話ではなく、PR会社など入ったりしていると思います

情報戦は軍事的にどのような意味合いがあるのか軍事ジャーナリストの井上和彦さんに聞きました。

軍事ジャーナリスト井上 和彦さん
軍事的には現代戦の特徴となっています。高度にIT化された社会では、個人が端末で直ぐに情報が見られる。そうすると、流された情報というのは、短い時間で影響を与え心理的な効果がある。これはかなり効果的な心理戦です。しかも、戦っている両者の立場の違いというのは大きいです

軍事ジャーナリスト井上 和彦さん
ロシアは、被害の数、戦死者の数を出さない。それは、やはり厭戦ムードが広がり、国内約60カ所における反戦デモに火がついている、それに対する恐れがあります。捕まった兵士たちが言っているのは、「訓練だと思った」ということも言っているんです。ところが、ウクライナ側というのは国境を越えてポーランドからウクライナに戻って、母国を守るんだということでやってくる兵隊たちがいる。そういった人たちにとっては追い風になります。なので、情報戦というのは立場の違いによって不利になったり、有利になったりする。これは昔の戦いとは大きな違いになります

(「めざまし8」3月1日放送より)

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