先日、東京都内で行われた大手住宅メーカー・住友林業の記者会見。そこで発表されたのが・・・。

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住友林業・光吉敏郎社長:社会全体のCO2排出量削減に取り組み、ウッドサイクルを力強く回すことで、脱炭素社会の実現に向け貢献してまいります。

2050年の脱炭素社会の実現に向けた、木を通じた取り組み「ウッドサイクル・プロジェクト」。森林経営から木材の加工、流通、木造建築からバイオマス発電まで全てを手掛ける住友林業。

このウッドサイクルを効果的に回すことで、社会全体のCO2の吸収量を増やし、排出量を減らすことを目指している。中でも、「Live News α」が注目したのが、ウッドサイクルの川上にあたる森林に関する取り組みだ。

国土のおよそ7割を森林が占めている日本。その木々の多くは、樹齢が若いときにCO2を多く吸収するといわれているが、日本の人口林の半分は樹齢50年以上。

そのため、高齢化した木々を伐採し、有効活用した上で、若い木を再植林し、国内の森林を若返らせようというのだ。さらに、森林の減少が深刻な海外では、現地の人やほかの企業とも協力しながら、森林を管理、保全。

IHIとの協業で、衛星を使った宇宙からの森林管理も始めた。国内外におよそ28万ヘクタールの広大な森林を管理し、その多くを保有する住友林業。これまで培ったさまざまな技術を使って、ウッドサイクルをまわし、脱炭素社会の実現を目指す。

住友林業・光吉敏郎社長:今やらなければ、いつやるんだというぐらいの覚悟を持って、今、全員で取り組んでいる状況です。木材を使った提案を、我々はさせて頂きたいと思っていますし。

住友林業・光吉敏郎社長:それが浸透すれば、少なからず多くの企業に対しての、それぞれの脱炭素の目標、脱炭素シフトに対して、お手伝いできるのはないかと思っています。

小澤陽子キャスター:このニュースについては、 デロイト トーマツ グループの松江英夫さんに話をうかがいます。大手住宅メーカーによる、こうした森林に対する取り組みですが、どうご覧になっていますか。

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:森林というのは脱炭素だけでなく、生物多様性の観点からも、これからますます重要になるんですが、ただ日本においては、林業の人口が減っていったり、樹木の高齢化やCO2の吸収に関してはかなり深刻な状況があるのも事実です。

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:これから我々は、CO2に関しても排出削減だけではなくて、森林による吸収拡大、ここにもしっかり目を向けて取り組んでいくことが大事なんですね。そのためには、吸収拡大に貢献する取り組みを、お金がしっかりそこに回るようにしていく、こんな仕掛け作りも大事になってくると思います。

小澤陽子キャスター:具体的にはどういった仕組みが必要なんでしょうか。

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:まず、自治体レベルではしっかり吸収拡大の目標を設定して、そこの達成を促す。仮に達成できなかった場合は、達成した自治体に対してお金が回るような、ある種、排出権取引、これを全国へ拡大していく。こんな発想を持つことも大事になってくると思うんですね。さらに企業レベルでは、CO2の吸収拡大に貢献する活動に対して、例えば企業版のふるさと納税の仕組みを使いお金を回すとか、カーボンクレジット制度を活用する、こんな工夫も必要になると思うんです。

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:具体的には、森林の若返りとか、木材をより需要として使っていく。例えばバイオマス発電に使っていく。こうした取り組みを国や自治体がクレジット、認証を与えていくことによって、こういった権利を売買できるような仕組みを作っていく。これによって吸収拡大に取り組んだところにお金が回るようにしていく、こんな環境整備が大事になってくると思うんですね。

小澤陽子キャスター:そうすることで、こうした取り組みに直接関わらない企業でも、脱炭素に貢献できるということなんですね。

デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:そうなんですね。こういった企業が、資金の出し手になる、これだけでも、いろんなメリットがあるんですね。自分たちのCO2の排出を相殺するようなメリットもとれるし。ESG活動として対外的な評価を高めることも期待できる。こういったCO2の吸収拡大、これを経済価値に変えることによって、脱炭素と林業の再活性化につなげる、好循環につながっていくことを期待したいなと思います。

小澤陽子キャスター:脱炭素に向けて、いかに排出しないかという点ももちろん必要ですが、二酸化炭素の吸収量を拡大。この重要性をあらためて感じさせられました。それに向けて今後どういった仕組みが作られるのか注目されます。

(「Live News α」2月25日放送分)