ロシアの軍事侵攻 岸田首相「ロシアを強く非難し迅速に対処」

ロシアがウクライナ侵攻に踏み切り、緊張の度合いが急激に高まる中、岸田首相は「今回のロシアによる侵攻は、力による一方的な現状変更を認めないとする国際秩序の根幹を揺るがすもので、ロシアを強く非難するとともに、米国をはじめとする国際社会と連携して迅速に対処する」と重ねて強調した。

岸田首相
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政府はすでに、ロシアが一方的に独立を承認した2つの地域について「関係者のビザ発給停止や資産凍結」と「輸出入の禁止措置」を2月23日に発表。加えてロシアによる新たな「ソブリン債(政府や政府機関が発行する債券)」の日本での発行や流通を禁止した。

ただ、これらの制裁について、政府内からは“ロシアへの影響はほとんど無い“との評価が聞かれる。ある政府関係者は制裁対象とした2つの地域について「そもそも人の往来や貿易関係がほとんどない地域」と指摘し、「象徴的な意味しか無い制裁だ」と話す。別の関係者は「あくまで第1弾の制裁だと思いたいがはっきり言ってぬるい」と辛口評価だ。

ロシアとの経済的な結びつきが強い欧州などと異なり「もともと切れるカードが少ない(与党幹部)」中で、ロシアへの効果ある制裁を日本独自で取ることが難しいのも現状だ。

外交関係者は「大手銀行の資産凍結など効果的な制裁に踏み切れるかどうかがポイント」と指摘するが、24日夜に予定されるG7首脳会議を経て、どれだけ実効的な対策が取れるかが焦点となっている。

経済制裁への賛否は拮抗 関係者「消極的な意見が多いのは意外」

こうした中で、経済制裁に対する国内世論の賛否は拮抗している。ロシアによる侵攻の可能性が叫ばれていた19日と20日にFNNが実施した世論調査では、ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合に「日本もロシアに対して制裁を科すべきと思う」43.9%、「思わない」44.1%と拮抗する結果となった。

ウクライナへのロシア軍の攻撃

これについて政府関係者は「消極的な意見が多かったのは意外。世論にとっては遠い国の出来事なのか」と驚きをもって受け止めた。

というのも、政府は「ウクライナの危機が巡り巡って日本への危機となる」という強い警戒感を持って対応しているからだ。

先の見えない燃料価格高騰で「あらゆる業界でコスト増の懸念」

一つは国内経済への影響だ。

経産省関係者は燃料価格の高騰による国内経済への影響を懸念する。2021年の年末以降、13年ぶりの高値水準となっているガソリン価格などをはじめ、燃料費の高騰は国内の製造業や農林水産業にもジリジリとダメージを与えることになりかねない。「例えばこれから収穫の時期を迎えるイチゴのハウス栽培などでは大量の燃料が使用される。燃料価格が高騰し続ければ燃料費もあがるとともに、トラックの輸送費もあがるので、結果として食卓に届くイチゴの価格も高くなる可能性がある」と具体例を示した。

また農水省関係者も「漁業のコストの中で燃料費は2割を占める。すでに原油の高騰対策として国と民間で基金を積み立てるなどしているが、高騰が続けば企業経営の逼迫や、水産物への価格転嫁も免れない」と指摘する。

別の政府関係者は「燃料費の高騰が製造業、運送業などあらゆる業界のコストアップにつながることは避けられず、最終的に製品の値上げの動きが広がるだろう」と話すなど、ウクライナ情勢が日本の食卓だけでなく、全体的な国内の物価高となって影響を与える可能性も十分に考えられるのだ。

政府は、長引くガソリンの高騰対策として、現在1リットル5円が上限となっている石油元売り会社への補助金額の増額を検討している。

それに加えて政府関係者は「部品や輸送費などの製造コストの増加による価格転嫁を妨げる動きはしっかり取り締まらないといけない」と話し、大企業による中小企業への買いたたきの取り締まりの強化など、経済界にも改めて協力を求める姿勢を示している。

国際社会の対応次第で中国の海洋進出も加速? 政府の対応問われる

国内経済だけではなく、今後の日本の安全保障への影響を指摘する声もある。

岸田首相はウクライナ情勢について「主戦場はヨーロッパと言いながらも、こうした力による現状変更を許すということになると、アジアにもこうした影響が及ぶことを十分考えておかなければならない」と話しているが、この「アジアへの影響」とは中国を念頭においたものだ。

中国・習近平国家主席

防衛省関係者は「ウクライナの事案が結果的に成立してしまった場合、中国に“こういう方法でもいけるんだ“と思わせてしまう」と指摘する。

つまり、今回のロシアによるウクライナへの侵攻を国際社会が止められない場合、台湾や沖縄県・尖閣諸島周辺で海洋進出を強める中国の「力による現状変更」についても、国際社会が止められない可能性を示すことにつながり、今後の日本の外交安全保障に重大な影響を及ぼす危険性があるということだ。

ある政府高官は「状況次第では今のウクライナ情勢が歴史的なターニングポイントになりうる」とも指摘していて、ロシアの力による一方的な現状変更は認めてはならないという強い危機感がにじみ出ている。

ただ、ロシアに対してLNG(液化天然ガス)などのエネルギー資源を頼るほか、北方領土問題など懸案事項も抱える政府にとっては制裁一辺到ではいかない事情もある。岸田首相は「G7をはじめとする国際社会との連携を大事にする」としつつ「我が国の国益を考え対応をしっかり打ち出して行きたい」と述べてもいる。

難しい舵取りが迫られる中でまさに「国益」の視点からも、岸田首相が今後どのような判断を下していくのかが問われている。

(政治部・官邸クラブ 亀岡晃伸)

亀岡 晃伸
亀岡 晃伸

フジテレビ報道局政治部

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