18日、報道陣に公開された色鮮やかな車両。JR東日本が3月から実証実験を行う、国内初の水素ハイブリッド電車「HYBARI」。
水素と酸素を化学反応させて発電する燃料電池と、ブレーキをかけた際に生じる力で発電した電力を蓄電して走るため、二酸化炭素を排出せず、環境に優しい電車だ。
水素のタンクは車両の屋根の上に。床下には、トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」の技術を活用した電池を設置。
発電の際に燃料電池から発生した水は、車両の下から排出される。1回の水素の充填で走れる距離は140km。
JR東日本は、南武線や鶴見線で試験走行をして、2030年には地方路線などで使っているディーゼル列車を水素ハイブリッド電車に置き換えたい考えだ。
JR東日本研究開発センター・大泉正一所長:水素ハイブリッド電車だけのために水素を使っては、自動車もそうだと思うんですけど、なかなかコストが見合わないと思っています。鉄道車両だけではなくて、他のモビリティとの水素の共通利用とか、トータルで見ることによって、水素を使った電車は世の中に広がると思っています。
小澤陽子キャスター:このニュースについては、デロイト トーマツ グループの松江英夫さんに話をうかがいました。CO2を排出しないで走る電車ということですが、松江さんは、どうご覧になりましたか。
デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:はい、この水素ハイブリッド車両。私は、水素普及のキッカケになるのではないかと期待しているんです。実は、水素の需要は、世界的には、50年後の2070年代に向けては、現在より7倍近くに広がると言われていて、かつ、そのうちの最大の30%近くは、鉄道をはじめとする輸送から生まれると言われているんです。
デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:ただ、水素の普及に向けた最大の課題は、コストをいかに下げるかというところにあるんですけれども、そのためには大胆に投資をして、スケールメリットを生かしていく必要があるんですが、そこで最大のカギを握るのが、水素の需要を確保できるかどうか、そこにあるんですね
小澤陽子キャスター:需要の確保ですね。そういった中で、今回のような鉄道会社が果たす役割については、どう考えていますか?
デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:はい、まさに需要確保に向けて、輸送の主たる鉄道会社が果たす役割は、非常に大きいと思うんですが、私は、そこをひと言で言うと、地域と産業をつなぐハブになる、これが期待される役割なんじゃないかと思うんですね。まず、地域に向けてということでは、鉄道会社がハブになることによって、水素エネルギーの地産地消のモデル、これを作ることに期待が寄せられると思うんです。具体的には、今回のような水素車両、これが広がっていくと、各地域の中で、水素の需要が生まれますから、それに伴って、水素ステーションのような供給も結びついてきて、地産地消のモデルができる。こんな展開が期待できると思うんですね。
デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:さらには、地産地消のモデルができると、これから各地域の中で、太陽光とか風力、再生可能エネルギーがますます広がっていきますから、そこで生み出された電力の余剰分を、水素に変えて貯蔵する、こんな仕組みができるようになる、そうすると単にCO2の削減だけではなく、有事の際に、安定的にエネルギーを供給できるような防災対策、こんな効果にも期待が広がると思うんですね。
小澤陽子キャスター:なるほど。地域で作った水素を地域で使う、そういった循環が生まれれば、普及もさらに広まりそうですよね。
デロイト トーマツ グループCSO 松江英夫氏:そうなんです。さらに、鉄道会社に期待される役割がもう一つありまして、産業を繋ぐということなんですが。これからは、産業も企業も、お互いが一緒に協力しながらCO2を削減しよう、これは「スコープ3」と呼ばれているんですが、ここへの期待がますます求められる中で、水素が有効だという実績ができると、一気に水素の需要が広がる可能性も秘めている、そこを鉄道会社がハブとして繋いでいく、こんな役割も期待されると思うんですね。これからは鉄道会社がハブになりながら、技術革新と需要の創造と、そしてコストダウンによる水素の普及、こういった好循環につながっていくことを期待したいと思います。
小澤陽子キャスター:需要を増やすことでコストダウンにつながれば、さらに普及しやくなるということですが、未来を見据えた地球に優しい形、モデルを残していこうという動き、本当に素晴らしいですし、さらなる加速に期待したいです。
(「Live News α」2月18日放送分)