2022年春のセンバツに、21世紀枠で出場する福島県立只見高校・野球部。「歴史を変える」を部のスローガンに、まさに新たな歴史をつくろうとしている。人口3,900人の町が「心ひとつ」に挑む。
2月の福島・只見町。
この記事の画像(16枚)積雪は約3メートルに迫り、野球部は冬の期間はグラウンドでの練習はできない。室内の限られたスペースでのバッティングや、下半身を鍛えるトレーニングなど基礎的な練習を日々積み重ねている。
只見高校野球部・吉津塁主将:
(出場が決定し)いつもより良いモチベーションの高さで、良い雰囲気で練習にチームとして臨めていると思います
只見高校が21世紀枠に選出された理由の1つが、豪雪地帯という困難な練習環境を克服していること。そしてもう1つが、只見川沿いに甚大な被害をもたらした「新潟・福島豪雨」。
部員も被災…「新潟・福島豪雨」乗り越えつかんだセンバツ
当時、保育園児だった羽染治輝選手もその1人。
只見高校野球部(1年)・羽染治輝選手:
自分の家は1階がすべて浸水して、町のゴミだったり、ガレキがすべて家の中に入ってきてしまって。お母さんは長靴を履いて、水に漬かりながら自分をおんぶして。兄もいたんですけど、兄はおやじの背中におんぶされて避難した
町の中心部にある羽染選手の自宅では、母親の亜紀子さんが美容室を営んでいる。
「新潟・福島豪雨」で只見川が氾濫し、店や自宅が約80cmの高さまで浸水した。被災後は、町民やボランティアの協力を受けながら美容室を再開。
亜紀子さんは水害からの復興が進む中で、町が1つになり、町民の絆も深まったと感じていた。
町全体で災害を克服し、つかんだセンバツ出場の切符。息子や野球部の頑張りが報われたと同時に、町がまた1つになるきっかけになったことを実感している。
羽染亜紀子さん:
なによりも本当にいろんな人に声をかけていただいて、こんなに甲子園に行くってことが、町の活気につながるんだなって。あらためて町の良さというか、絆の深さも実感しているところです
わずか10日で500万円…町がクラウドファンディング
只見町役場地域創生課・菊地明さん:
かなりいろんな方から「寄付をしたい」というような問い合わせがありましたので、そういったこともあり、クラウドファンディングを始めることになりました
ふるさと納税制度を活用し、野球部への寄付金を募るクラウドファンディング。2月4日のスタートからわずか10日で、目標金額の500万円に達した。
野球部への応援の輪は全国に広がっていた。
只見町役場地域創生課・菊地明さん:
全校生徒が少ない中で頑張っているというのが、たぶん皆さんの共感を得られて、「甲子園出場を頑張ってほしい」という思いがあるのかなと思っています
一際目を引く垂れ幕 「ありえないことが現実に」
垂れ幕を作ったのが、只見高校OBの目黒邦友さん。甲子園出場が決まった直後には、花火を打ち上げて選手たちを祝福した。
只見高校OB・目黒邦友さん:
ちょうど雪まつりも中止になってしまった。その中で、甲子園出場が決まるっていうありえないことが、現実に起きてしまったみたいな。だからお祭りの一環として、もう盛り上がればよいかなっていう
野球部を応援するメッセージが込められた手作りの垂れ幕はすぐに反響を呼び、これまでに商店や事業所など40枚ほど製作した。
只見高校OB・目黒邦友さん:
それぞれの立場でできる人が、できることをやればいいんじゃないかなと。(現地に)行きます。もちろん行くつもりです。「とにかく頑張れ」しかないですけど、「楽しんでこいよ」という感じ
チームも、町も。「心ひとつ」に夢舞台へ全力疾走する。
(福島テレビ)