重労働のため後継者不足や高齢化が進み、生産者数の減少が課題となっている農業。その作物の1つがイチゴだ。課題の解決に向け、佐賀で全国初となる最新システムが導入された。

作業の7割はパック詰め 人手不足で睡眠時間減

色や形、重量などを瞬時に解析しデータ化して選別。パック詰めの処理能力は従来の倍以上になり、イチゴに触れる機会の減少で品質も向上。イチゴの“スマート農業”が進んでいる。

2021年12月から佐賀県白石町で装いを新たにし、動き始めたいちごのパッケージセンター。

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江北町のイチゴ農家:
うちは労働力不足で大変助かっている

JAさが 杵藤園芸センター 園芸指導課・赤坂友和さん:
生産者にとっても作業員にとっても、非常に効率が良いシステム

どのイチゴを詰めればいいのかを解決する最新のスマートシステムが、白石町にやってきた。

4年目の収穫が始まった県産の品種「いちごさん」。「さがほのか」などからの切り替えが進み、県内の生産者数は621戸に。栽培面積は110.6ヘクタールと全体の約9割にまで増加している。

栽培歴27年目、白石町の片渕勝信さんの21アールほどのハウスでも収穫作業が行われていた。

イチゴ農家・片渕勝信さん:
今年は結構、甘く出来ているんじゃないかな

「さがほのか」から「いちごさん」に切り替えた2年前からパッケージセンターの利用を始めた片渕さん、その理由は?

イチゴ農家・片渕勝信さん:
「さがほのか」の時、自分と妻と2人しかいないので、いっぱいいっぱいだった

「いちごさん」は「さがほのか」と比べ、収量が1.2倍から1.3倍ほど多いことから生産者の負担も増える。さらに…。

イチゴ農家・片渕勝信さん:
睡眠時間は1日3~4時間、それが1カ月~2カ月続いた。収穫してきて、1日中パック詰めに追われる感じ。最盛期になったら毎日休みなし

イチゴ栽培でパック詰めが占める時間は7割ほど。睡眠時間を削って作業にあたっている生産者も多いという。

生産者の負担を減らし、イチゴの品質を保つ

そして、収穫したイチゴを専用のトレーに入れて運んだ先が「JAさが白石地区いちごパッケージセンター」。生産者が利用料を支払い、委託したイチゴをパック詰めする作業場だ。JAさが白石地区の130戸のうち、現在は約60戸の生産者が利用している。

白石町のイチゴ農家:
結構便利で生産者側としても負担が軽減されて

トレーニングファームを卒業し、2021年の春から就農した男性の姿もあった。

イチゴ農家・今井博亮さん:
ハウスを管理する時間が作れるので非常にありがたい

生産者に好評な新しいパッケージセンターとは、どのような仕組みなのか?

JAさが 杵藤園芸センター 園芸指導課・赤坂友和さん:
国内では初めての選果システム。入っていただいてわかる通り、非常に静かな施設です

JAさが 杵藤園芸センター 園芸指導課・赤坂友和さん:
午前中に出荷いただいた分を、階級の大きさや重量を読み取る場所になる

選別装置では作業員が一度もイチゴに触れることなく、専用のトレーのまま色や形、重量など瞬時に解析しデータ化する。さらにポイントなのが、専用のトレー。

イチゴ農家・片渕勝信さん:
果実同士が接触することがないため傷みが少なく、はねられない。ちゃんとパック詰めされて出荷できたら、その分収入が上がる

白石町のイチゴ農家:
繁忙期は自分の収穫箱が回らなかったりしていたので、専用トレーになってすごく助かっている

処理能力は1日2.4トン 効率化で農家減少に歯止めを

しかし、新しいパッケージセンターの特長はこれだけではない。

JAさが 杵藤園芸センター 園芸指導課・赤坂友和さん:
きのう事前に読み取った分がデータ化されている。「このイチゴをこのパックに納めたらいいですよ」という風に機械化されていて、それを作業員がパック詰めする

イチゴ1個ごとに重さや大きさのデータが画面に表示されるほか、イチゴ自体に光が当たり、次にパックに詰める粒を教えてくれる仕組み。

詰めるイチゴには中心辺りに丸印の光が
詰めるイチゴには中心辺りに丸印の光が

パック詰めの処理能力は1日2.4トンと従来の機械の2倍以上になったことに加え、作業員がイチゴに触れる回数も2回から1回に減ったことから品質も保たれる。

JAさが白石地区のイチゴ農家は、1997年のピーク時に250戸だったのが、現在は130戸と半数ほどに減少している。県全体をみても、10年前には1043戸だった生産者数が、現在は677戸と4割程度減っている。

JAさが 杵藤園芸センター 園芸指導課・赤坂友和さん:
高齢化の中で、イチゴは栽培したいけどパック詰めがネックで栽培を断念される人もいる。パッケージセンターを利用していただくことで、1年でも長くイチゴを栽培し続けてもらえるようになれば

イチゴ農家・片渕勝信さん:
パッケージセンターに出した分、睡眠時間は取れるようになった。今は6時間、7時間くらいは寝る

白石町のイチゴ農家:
ちょうどこの時期が麦の追肥とかの作業が入るので、センターに預けてできるというのが結構大きい

空いた時間にゆっくり休むも良し。他の作物や規模の拡大、経営面に時間を費やすも良し。さらには新規就農者の獲得にも期待がかかる。

JAさが 杵藤園芸センター 園芸指導課・赤坂友和さん:
もう一度イチゴを復活させて、大消費地に送れるよう働きかけていきたい

儲かる農業を目指して、イチゴもスマート農業が進んでいる。

(サガテレビ)

サガテレビ
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