大手パンメーカーが手がけるコンビニエンスストア、通称「Yショップ」。衣料品を扱ったり、飲食スペースがあったりと個性的な店が多く、特に山あいでは頼もしい存在となっている。信州の「Yショップ」に注目してみた。
「町のよろずや」が「Yショップ」に

パンにおにぎり、そして肉まん。ここは小海町のJR小海駅近くにある「Yショップ小海嶋屋」。
記者リポート:
店内の手前のスペースは、このようにいたって普通のコンビニのようになっているんですが、奥へ進んでいきますと、洋服であったり、こたつ布団といったものまで販売されています

嶋屋本店・浅沼洋一郎社長:
いろんなものを少数・多品種そろえられるところに魅力を感じ、ヤマザキショップと契約、形態を変えたというのがスタート
「嶋屋」は明治20年(1887年)創業。衣料・寝具の他、砂糖や油も扱う町の「よろずや」的な存在だった。
山崎製パンの「ヤマザキショップ」と契約し、コンビニエリアを設けたのは2003年だ。

嶋屋本店・浅沼洋一郎社長:
一軒で店舗を構えていると入りづらいし、買わないと出づらいお店もあると思う。気軽に出入りできるお店にしたくて
気軽に立ち寄れる店への転換。町内には他にもスーパーやコンビニはあるが、近くの住民にとっては今も「よろずや」だ。
住民(70代):
助かりますよ、足がないから。歩いて行かれるところで買えるから
住民(70代):
毎日ここに来て、コーヒー飲んでタバコ吸って、もう日課みたいなもの

店先は「憩いの場」にもなっている。
嶋屋本店・浅沼洋一郎社長:
経営の方は、ほとんど任せてもらえている。繊維関係は安くて良い物が入るルートがあるので。Yショップさんの場合、許してもらえるので、そこら辺は自由にやらせてもらっている
個性的な店づくりができる訳は…
大町市の木崎湖畔にある「Yショップ ニシ」。店内にはカウンター席があり、そばやうどん、おやきを提供している。

一番人気は「カレーうどん温玉のせ」(税込730円)。カレーは独自に調合したスパイスで作っている。

客:
とてもおいしくて、いつも食べます。揚げが入っていて、カレーがジューって入って、おいしい
開業は1994年。現在の店主・舘友希江さんの母・西沢百合子さんが国道沿いの土地活用の一環で店を開き、飲食の提供も始めた。

初代店主・西沢百合子さん:
(そば、うどんは)待たずに食べられるので、便利じゃないかと

現在はまきの販売や、スノーシューのレンタルなども手掛け、さらに音楽ライブの会場になることも…

Yショップ ニシ・舘友希江さん:
常連さんに合わせていったら、こうなったという感じ。自分の責任でやる方が何倍も楽しい。ヤマザキさんにして良かった
通常のコンビニ店にはない個性的な店づくり。Yショップはなぜ「独自路線」が可能なのだろうか。山崎製パンが手掛けるコンビニ店には「デイリーヤマザキ」もある。そもそも、どこが違うのだろうか。山崎製パンの担当者は…
Yショップ事業部店舗運営課・穴吹芳樹課長:
ヤマザキショップは、ヤマザキパンが店舗運営をサポートするボランタリーチェーン。オーナーさま独自の取り組みが運営に反映されやすいのが特徴

ボランタリーチェーンは、「共同仕入れ」をする独立した店が集まった形態を指す。

一方、デイリーヤマザキのようなフランチャイズチェーンは、本部が商品だけでなく、営業のノウハウも提供して加盟店の運営を図る形態。
一般的にボランタリーチェーンはロイヤリティーが低く、その分、出店しやすく、立地や規模に合わせた独自色のある経営が可能だ。

Yショップ事業部店舗運営課・穴吹芳樹課長:
立地に応じた営業時間や定休日を設定できる。運営費は月額固定、費用を抑えることができる。ヤマザキパンの物流ネットワークを使えるため、全国津々浦々に出店できる
山あいの暮らしを支える

立地や規模に合わせた出店・運営ができるという利点を生かし、山あいの暮らしを支えているYショップもある。

南相木村のYショップ、通称「Mショップ」だ。
南相木村故郷ふれあい公社・中島昭裕さん:
地域の皆さんに愛されるように、南相木村の頭文字のMをとって「Mショップ」とさせていただいている
村にはYショップと契約をしていたJAの店があったが、経営難から2021年2月に撤退。存続を望む声を受けて村が建物を整備し、2021年5月に公社が運営する「Mショップ」がオープンした。
トラックから降ろされたのはYショップの品々。契約は継続し、住民に日用品を提供している。

南相木村故郷ふれあい公社・中島昭裕さん:
おむすびとかお弁当、お菓子類はYショップさんの協力でかなりのアイテムが入れられることがメリット
村の人口は966人、高齢化率は約40%。お年寄りにとってMショップは無くてはならない店だ。
住民(90代):
しょっちゅう来る。年寄りにはいい、とっても近所だから
住民(80代):
自分は運転できないから、これだけの店があると助かります。
(Q.どんな存在?)
なければいられない存在
若者も…
住民(20代):
近隣の町村まで行かないと生活用品は買えないので、ちょっとしたものをすぐに買えるので助かっています

店はコメや肉を独自に仕入れて生活を支えるほか、「活性化」の役割なども担っている。

地元産のトウモロコシを加工した「スープ」などの特産品や(1袋500円)、人気アウトドアブランド「NANGA」とのコラボTシャツ(1枚5000円)も販売。
さらに…

小学校や保育園へ、給食用の野菜や肉の配送も担っている。

南相木村故郷ふれあい公社・中島昭裕さん:
気軽にいつでも来ていただいて、必要不可欠で空気や水のような存在でやっていければ
Yショップ事業部店舗運営課・穴吹芳樹課長:
過疎化や買い物難民という課題の解決に貢献できているとすれば、大変ありがたい
Yショップは全国2650店舗、県内48店舗。山国・信州で存在感を放っている。
(長野放送)