新潟・燕市産のカトラリーの魅力をより多くの人に広げようと始まった、新たな取り組みを取材した。
国内シェア90% 燕市のカトラリーの魅力発信
燕市にあるイタリアンレストラン・ロルノ。
地元で製造された窯で焼かれるピザが看板の店だが、1月から期間限定で一風変わったメニューが登場した。
ロルノ 遠藤忠彦オーナー:
こちらが燕産寄居カブと自家製ボッタルカのミッレフォリエ
提供されていたのは、スプーンに盛り付けられた一口サイズの料理。

ロルノ 宗村正平シェフ:
“カトラリーをメインに料理を作る”という点では難しかったところもあるし、楽しかった点もあった
これは国内シェア90%を誇る燕市のカトラリーをアピールするキャンペーンで、スプーンやフォークを主役にした料理が、新潟県内、そして東京・浅草の飲食店で提供された。(2022年2月13日に終了)
新型コロナで打撃…「カトラリーを主役に」

キャンペーン開催の背景には、長引く新型コロナウイルスの影響があった。
小林工業 小林貞夫 社長:
オミクロン株が流行りだして、年末にホテル・レストランから注文が入り始めていたのが、また止まってしまった
こう話すのは、燕市で100年以上にわたり洋食器を製造するメーカーの社長・小林貞夫さん。

ウイルス禍で外食産業からの需要が激減する中で始まったキャンペーンでは、普段テーブルの脇役となっているカトラリーがスポットライトを浴びることに。
小林工業 小林貞夫 社長:
最初は『なんでうちらなんだ』と。今までカトラリーは脇役。料理が主役だから、取り上げられるというのはほとんどない。でも非常にうれしかった
熟練の技で“美しいデザイン・早い作業”が可能に

東京オリンピックの選手村などでも採用された燕市のカトラリー。細やかなデザインが刻まれているのが特徴だという。
記者リポート:
こちらの作業所では、スプーンをプレスする際にできた“バリ”と呼ばれる部分を削り、形を整える作業をしている

小林工業 小林貞夫 社長:
海外では途中まで機械でやるのが中心。ただ、その場合はバリを出さないように金属を薄くし、良いデザインを造形するようなことは避けて、コストを抑えたなかで製造している
一方の燕市は職人の手仕事によって、美しいデザインのカトラリーを提供し続けてきた。
小林工業 小林貞夫 社長:
機械は1本ずつしか磨けないが、この方は10本以上まとめてこすっている。機械より全然早くて安い
“生産者の思いをお客様につなぐ”

機械ではなく、職人の熟練の技が支える燕市のカトラリー。
その職人の思いは、今回のキャンペーンの限定メニューにも込められている。
ロルノ 宗村正平シェフ:
盛り付けだったり、どういう形で料理を提供すればカトラリーが映えるということを考えて提供している

さらに食材も地元産にこだわり、スプーンの中で燕市が表現されている。
「自家製ボッタルガと燕産寄居かぶのミッレフォーリエ 」770円(税込み)
記者リポート:
スプーンの口当たりがとても滑らかで、口に入れた瞬間に食材に集中することができます。また、カブのシャキシャキ感とからすみの魚卵のプチプチ感がとてもマッチしておいしい

お客も、そのワンスプーンの中に込められた思いを感じ取っているようで…
お客:
盛り付けも美しいが、一口で料理が完成されるというのは消費者にしては味わい深い
お客:
職人さんがどのようにして作ったのかとか、どういう思いで一つ一つ手作業しているのか知りたくなった
ロルノ 遠藤忠彦オーナー:
メーカーや生産者の思いを、お客様につなぐというのが飲食店の役割。今回、地場の食材・カトラリーの作り手の思いが一口で伝わったかなと思う
燕市が誇るカトラリーの知名度UPへ

思いのこもった一皿を通して、メーカー側にも発見があったという。
小林工業 小林貞夫 社長:
うちのスプーンがすごく滑らかで、料理を一口で食べられた。特別に研磨したものではなく、今までずっと連綿と同じようにやってきた結果を自分で改めて体験できて、“これで間違っていなかったんだ”という気持ち

長年にわたって引き継がれてきた燕市の技術に、新たな魅力を加えて…
ロルノ 遠藤忠彦オーナー:
燕という街は洋食器などで全国的にも有名だと思うけど、今まで有名だったからそのままでいいのではなくて、変化・進化というか、街ぐるみでどんどん発信できたら
燕市が誇るカトラリーの知名度UPへ、その魅力を発信する新たな挑戦に注目だ。
(NST新潟総合テレビ)