2021年暮れ、愛媛・西条市の養鶏場で県内で初めて鳥インフルエンザが確認され、36万羽余りのニワトリが殺処分された。あれから1カ月余り。
養鶏場の経営者が、当時の状況などを振り返り、苦しい胸の内を明かした。

県内2例目の鳥インフル確認 養鶏場「終わったな」

とくながたまご・徳永剛史社長:
うちは(鶏舎が)全部で5棟あって、8万3,000羽くらい入るんですけど、今はゼロです

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西条市で養鶏を営む徳永剛史さん。
自身の養鶏場で愛媛県内2例目となる鳥インフルエンザが発生した。

とくながたまご・徳永剛史社長:
朝の見回りの時に30羽くらい(ニワトリが)死んでいるのが見つかって、「終わったな」っていう感じで。そのあとの記憶があんまりないですね

2021年の大みそか、西条市の養鶏場で愛媛県内で初めて確認された鳥インフルエンザ。
殺処分が進む中、年明け1月4日には隣接する徳永さんの養鶏場などでも感染が確認された。

結局、3つの業者の西条市と今治市の4カ所の養鶏場で、あわせて36万羽余りのニワトリが殺処分された。
その後、新たな感染は確認されず、2月9日までに周辺でのニワトリや卵の移動制限などはすべて解除された。

とくながたまご・徳永剛史社長:
今は石灰と消毒で手がいっぱいで、再建に向けて頑張っていますけど、なかなかハードルが高いので、今は一生懸命、復旧活動を頑張っています

ニワトリがゼロに…「このままでは終われない」

悪夢のようなあの日から1カ月余り。
ハーブなどを加えたこだわりのえさを使って、8万羽余りのニワトリを育てていた鶏舎に、 今 ニワトリは1羽もいない。

鶏舎にはニワトリの姿がない
鶏舎にはニワトリの姿がない

実は徳永さんの養鶏場は2020年、卵の増産を目指すが、愛媛県外のヒヨコの仕入れ先で鳥インフルが確認され、仕入れがストップ。
その後、ようやく手に入れたヒヨコが育ち、半年前の2021年夏ごろから卵を産み始めた矢先だったそう。

とくながたまご・徳永剛史社長:
一番新しい鶏舎に半年しか鳥が入っていないので、僕もこのままでは終われないなっていう、今やめたら本当にみんなに迷惑をかけるのが分かっているので、何とか復活さそうという気持ちです

同じタイミングで感染が確認された、隣接する養鶏場の冨田康広さん。

冨田養鶏・冨田泰広社長:
今治(の養鶏場)に6,000羽弱いて、こっちが16万羽弱くらいいたんですけど、経営者が同じという理由で(発生していない)今治も殺処分になって

同じく殺処分の処置を受けた冨田さん
同じく殺処分の処置を受けた冨田さん

冨田さんは今治市の関連施設の再建を諦め、西条市の施設だけを残す決断をした。

冨田養鶏・冨田泰広社長:
復活するのに最短でも2年半くらいかかるんですよ。2年半たった時にお世話になった方にお返し、きちんとした卵で品質をお返しをするだけですね。それだけが原動力ですね

“なんだ、この国”と思うことも…簡単に進まない再建

しかし、養鶏場の稼働には3カ月間に及ぶ封じ込めや、ウイルスが完全に消えたかどうか調べるモニタリング検査など、クリアすべき課題がまだまだ山積み。

冨田養鶏・冨田泰広社長:
もう一度、鳥を飼うにしても、「なんだ、この国」と思うんですけど、国の認可が必要なんですよ。1月4日に発生して、濁流の中に放り込まれて、ワラをつかもうかなと思ったら、国の偉いさんが石を投げてきている感じですね。国の指針で(殺処分など)しているけど、何かしてくれるんかと思ったら何もしてくれないし、今は怒りだけですよね

国の指針に怒りを露わにする冨田さん
国の指針に怒りを露わにする冨田さん

養鶏業者などの再建を手助けするため、愛媛県は相談窓口を設置し、国の手当や融資制度などを積極的に紹介している。

愛媛県畜産課・青野逸志課長:
県としましては、発生した農家については何とか再開してもらいたいという強い思いがありますので、まずは国の支援を最大限活用できるように農家の方をサポートしていきたいと考えています

簡単には進まない再建。
それでも2人は消費者においしい卵を届けたいという思いを諦めていない。

冨田養鶏・冨田泰広社長:
一般のお客さんから、飲食店から、うちの卵の代わりがないという声が多々来ているので、早く再生産して、品質のいいもの、お客さんが納得するものを早く届けたいですね

とくながたまご・徳永剛史社長:
たくさんの人に電話とか励ましの言葉をいただいたので、まずフル稼働まで頑張って持っていって、そこからみなさんに卵をお届けしたいです

(テレビ愛媛)

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