シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は感染症内科の専門医、グローバルヘルスケアクリニックの水野泰孝院長が、感染が拡大する新型コロナウイルスのオミクロン株について解説する。
従来株と違う特徴や風邪との見分け方、さらに感染防止策や流行中の今必要なことについて詳しく説明する。

この記事の画像(10枚)

オミクロン株と従来株の違い

コロナの疑いのある方や確定患者さんを含めた診療を行って2年になりますが、オミクロン株の特徴が徐々に分かってきて、まず一番従来株と違うところは潜伏期間です。
感染してから症状が出るまでの期間が、従来株だと大体5~7日程度と言われていたのが、中央値で3日程度と言われ、発症するまでの期間が非常に短くなりました。

短くなった上に従来株に比べて感染力が強くなったということがあります。
従来株(デルタ株)の大体3~5倍ぐらいと言われていて、短い期間で広がりやすいということなので、現状のように短期間で感染者数が一気に増えたという背景になっていると思われます。

これまでの従来株は肺炎を起こしやすいと言われていて、肺炎を起こしてしまうと重症化のリスクが高まる。
重症の肺炎で亡くなる方が比較的多いわけですが、今回のオミクロン株に関しては肺炎は比較的起こしにくいと言われています。

この背景は、動物実験ではありますが、ウイルスの増殖する場所が、従来株はどちらかというと肺に近いところで増殖するため肺炎を起こしやすかった。

一方、オミクロン株はのどに近いところで増殖する、いわゆる上気道炎を起こしやすいと言われていて、これは普通の風邪に近い症状が出現すると考えられます。

もう1つは、ワクチンの効果をすり抜けるようなことが言われています。
オミクロン株は2回接種しても、発症予防効果が50%程度にまで落ちてしまうというのが最近国内で出てきたデータです。

この辺りが感染拡大の要因の1つです。
2回接種した方でも多くの方が感染しています。ただ、重症化の割合は、オミクロン株自体が重症化しないということもあると思いますが、ワクチンをしていることによって重症化がある程度軽減されているとも言えると思います。

感染拡大はいつまで?

現時点でいつ頃までかを答えるのは非常に難しいです。
少なくとも毎日の外来診察においては(1月末までの時点で)、ブレーキがかかるような兆しは全くありません。

熱がある方、接触者の方が次々と来られるので、全く減るような兆しはないです。
これまでの流行の波は日本では5つ経験してきたわけですが、どの波も大体2~3ヶ月でおさまっていくことを経験しています。
したがって、何ヶ月も続くことは考えにくいと思います。

オミクロン株の特徴としては潜伏期間が短く、他の人にうつす期間もあわせて短くなっているという報告もあります。
急激に増えていますが、減るのも早いのではないかという見解は妥当であると思います。
ただ、これは明確なデータではありませんので、対策は引き続きとる必要があります。

オミクロン株と風邪の違いは「高熱」

新型コロナウイルスに感染するとが出る方が多いです。
高熱で来られて検査をすると陽性の方が多いです。ただ熱の持続期間は従来株よりも短い印象があります。

ほとんどの方が大体2~3日以内に平熱に戻って症状も改善しているという傾向から、従来株に比べればかなり軽症であるという印象を持っています。

風邪との見分け方をよく聞かれますが、もともと風邪というのは「風邪症候群」といって、定義は、咳・鼻・喉の3つの症状が同時同程度存在する病態です。

なので、オミクロン株の症状とほとんど変わらないと言えます。
ただ、風邪症候群の場合、熱が出ない方も比較的多いので、あえて違いをということであれば、オミクロン株の特徴は高熱が出る方が比較的多いというところでしょうか。

感染した時の対応、濃厚接触の判断は?

感染した場合は、持病のある方、重症化リスクのある方は入院といった対応になる可能性があります。
一方、持病がなく、若い方は自宅療養になる可能性があり、その時は熱を冷ます薬普通の風邪薬を適宜使用して構いません。

さらに各自治体には患者さんの支援センターがあると思います。必要に応じて相談して食料を送ってもらう、あるいは医療機関から処方箋を薬局に送り、薬を配送するサポート体制もあるようです。

濃厚接触の判断はこれまですべて保健所が行ってきたので、保健所から濃厚接触者と認定された場合は医療機関で検査をすることになっていました。
ただ、現在は感染者が急増して保健所の業務がひっ迫しているため、濃厚接触者の判断をご自身で行うように指示が出ている自治体もあります。

濃厚接触者をご自身で判断するのは難しいところがあるので、わからない場合には、相談センターやかかりつけ医などにご相談ください。

「マスクをしていれば大丈夫」ではない

オミクロン株の感染防止策は、マスクなしで至近距離で会話する機会をできるだけ作らないことが重要であることは変わりありません。
オミクロン株は感染力が強くなっているので、マスクをしていたとしても、狭い部屋大人数長時間換気もしない状態で会議などをしていると感染リスクは上がってきます。

従って、マスクをしているから大丈夫だということではなくて、やはり「3密」と呼ばれるようなところでの行動、滞在は控える。
3密にならない環境で過ごすことが重要であると考えます。

隔離期間はできるだけ“短く”

社会機能の維持、社会のインフラを止めないように感染対策をしていくことが喫緊の課題だと思います。
感染者だけではなく接触者も増えてくると、仕事を休まないといけない、学校に行くことができない、といった問題が生じてきます。

特に医療機関で勤務されている方、保育施設で勤務されている方、あるいは、公共交通機関に従事する方などが仕事ができなくなると社会機能が維持できなくなるおそれがあります。このような事態が起こらないように、できるだけ早く社会に復帰して維持するようなサポート体制、あるいは検査体制医療体制を構築する必要性があります。

対策として隔離期間はできるだけ短くする、そのために検査を併用するなどして出来るだけ早く社会に復帰できるようなサポートが必要であると思います。
 

水野泰孝
水野泰孝

グローバルヘルスケアクリニック院長 東京慈恵会医科大学大学院(熱帯医学)修了。長崎大学熱帯医学研究所 タイ王国マヒドン大学留学。国立国際医療研究センター国際疾病センター(現:国際感染症センター)技官 外務省在ベトナム日本国大使館医務官、東京医科大学准教授・同大学病院感染制御部長 感染症科診療科長などを経て2019年より現職。専門は熱帯感染症、渡航関連疾患、医療関連感染対策。

記事 1