北京五輪の開会式会場のすぐ横、メイン・メディア・センターに通うようになって1週間。ここは私たちメディアの拠点になっていて、仕事スペースや食堂などが整備されている。

東京大会に続くコロナ禍の開催となった今大会。選手、メディアそして外部とを遮断する“バブル方式”がとられ、ホテルと会場の行き来しか許されない。

しかし、この“限られた環境”だからこそ、見えてきた人たちの存在があった。

市民の声を聞きに街へ取材に行くことすらできず、必然的にメディアセンターにいる時間が増えた中で、ある人たちの姿に目が止まった。清掃員だ。

広いメディアセンターの中で、数十メートルおきに、オレンジ色の制服を着た彼らがいた。いつ見ても黙々と働く姿が気になって声をかけてみた。

「夕方4時から12時までのシフトです。」 
「武漢の近くから、会社の募集で来ました。清掃員は全国から集められています」 

年齢は30歳代だろうか。 いかにも都会慣れしていない印象の彼女は、私に突然声を掛けられ、緊張した様子だったが、ある質問をするとパッと笑顔になった。 

「そうです!北京に来たのは人生ではじめてなので、とてもうれしいです!」 

家族とはなれて暮らしてさみしくないんですか?と聞くと「友達と一緒にこっちにきてるから耐えられます」とのこと。お金について聞いたら、「給料のために来たのではなく、国のために来た」ときっぱり。

メディアセンターの床には、ごみひとつなく、いつも清掃が行き届いていて、それもシフト制で働く彼女たちのおかげだった。

また、タクシーの運転手との会話も印象的だった。今大会は、移動手段が限られていて、ホテルと会場を結ぶバスなどはあるが、時間に融通がききにくい。そこで利用できるのが、アプリで配車可能な「Games Taxi」だ。五輪関係者を乗せるため、運転手も勤務期間中はホテルで寝泊まりし、一般市民と隔離された生活となる。

北京市内のタクシー 運転手も”バブル”生活を余儀なくされている
北京市内のタクシー 運転手も”バブル”生活を余儀なくされている
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運転手に話を聞くとその仕事の大変さに驚いた。

「1日12時間のシフトだよ。オリンピック・パラリンピックで50日間の勤務するんだけど休みはないよ。でも、普段の倍の給料が入る」

さらに運転も普通とは違う過酷なものだった。

目的地につくまではトイレに行くこともできないという。
車内にもバブル方式がとられているのだ。
運転する彼の背中を見て、私は少し切ない気持ちになった。 

東京大会以上に厳しいと言われる“バブル方式”のなかで、その運営を陰で支える人たちの姿があった。中国各地から集めれたボランティアは約2万人。今回、ボランティアの94%が35歳以下、その多くが大学生というのが特徴だ。多くの若者の時間が「五輪の開催」という一つの目標のために費やされている。

先に話しかけた清掃員の彼女は「給料のために北京に来たのではない。国のために来た」とはっきり言っていた。日本であまり聞くことのない、この「国のため」という言葉に日本と中国の違いを感じつつも、その裏にどんな本音が隠されているかまでは聞き出せなかった。
Beijing2022は選手はもちろん、中国国民にとってどのような大会になるのか興味は尽きない。
 

(フジテレビ五輪取材団 中澤しーしー)