道路や街中に捨てられた、たばこの吸い殻。これを図鑑にすることで、マナー問題の解消や非喫煙者への配慮につなげる取り組みが行われている。

それが「ポイ捨て図鑑」というプロジェクト。吸い殻の写真を“喫煙所に戻れず、迷子になったモンスター”になぞらえて、集めようというものだ。

ポイ捨て図鑑の公式サイト
ポイ捨て図鑑の公式サイト
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参加方法は落ちている吸い殻を撮影し、ポイ捨て図鑑の公式サイトから、名前とストーリーを記入して投稿するだけ。SNSでシェアすることもできる。※投稿にはTwitterかFacebook、Google、いずれかでのアカウントでのログインが必要。

プロジェクトへの参加方法はシンプル
プロジェクトへの参加方法はシンプル

公式サイトでは、吸い殻の発見場所をマップで見ることができるほか、投稿された写真に「イイネ」をすることもできる。ゲーム感覚で状況を共有できるのだ。サイトはレトロゲーム風になっていて、大人世代には懐かしさも感じさせる。

マップで吸い殻の分布が分かる。サイトでは拡大や縮小も可能
マップで吸い殻の分布が分かる。サイトでは拡大や縮小も可能

ポイ捨て図鑑は、公衆喫煙所「THE TOBACCO」を運営する「コソド」(本社・東京都渋谷区)が企画したもので、2022年2月28日までの間、都内の豊島区、新宿区、文京区、渋谷区、世田谷区、港区、中央区、千代田区での投稿を募集している。

2月1日時点の投稿数は約760件で、内容もユニークなものばかり。道路に捨てられたガムと吸い殻を哀しい友達に例えたり、吸い殻で埋まった排水溝を地獄に例えたりしていた。

イイネを集めている投稿
イイネを集めている投稿

喫煙所の閉鎖でマナー問題が深刻

イイネを多数獲得した投稿者には、ギフト券のプレゼントも行うというが、図鑑として集めたデータはどう役立てるのだろう。実際の投稿内容と活用方法について、担当者に聞いた。


――ポイ捨て図鑑を始めた経緯を教えて。

理由は2つあり、「ポイ捨てを減らすための社会の意識を高めたい」「新たに喫煙所を設置、清掃活動をする上での需要が高い場所のデータ取得がしたい」というものです。

2020年の「改正健康増進法」施行後、飲食店を中心に多くの喫煙所が閉鎖されました。それに伴い、喫煙者と喫煙できる場所の需給バランスが崩れ、その結果、路上喫煙やポイ捨てが数多く見られるようになりました。ポイ捨てをなくすには意識を向けていただくこと、需要がある場所にしかるべき喫煙所を設置することが大切だと実感し、企画しました。

吸い殻図鑑の広告を出した渋谷で、実際に拾った吸い殻
吸い殻図鑑の広告を出した渋谷で、実際に拾った吸い殻

――投稿で印象に残っているものはある?

個人的にはNo.000207の「火曜サスペンス」とNo.000154「吸い殻の精霊」No.000117「送られたチョウセンジョウ」が好きです。吸い殻は見かけると気持ちが落ち込む感じがしますが、ユニークに名付けいただいたおかげで、主宰側も楽しみながらごみに関して考えられています。吸い殻の形状や周りの状況を元に名前が付けられていたり、色々な視点から投稿いただいており、大変面白く拝見しています。投稿者の方々に感謝しています。

投稿の一例。ユニークに表現している
投稿の一例。ユニークに表現している

――投稿にゲーム性を持たせた狙いは?

ポイ捨てされた吸い殻に興味を持ってもらうため、どう参加動機をつくれば良いか?という悩みからスタートしています。普通の吸い殻は「汚いだけの存在」で無視されがちですが、キャラクターという要素とゲーム的な参加性を加えることで「喫煙所に戻れなかった可哀想な存在」として描き、「楽しそうだからやってみよう」という“ゲーミフィケーション”を通じて新たな動機を作り出すという答えに行き着きました。 楽しみながら参加していただきその結果、街のごみや受動喫煙を減らせる流れになればいいなと期待しています。

ごみや受動喫煙の解決にも役立てられる

――プロジェクト結果はどう役立てるの?

今回のプロジェクトは実証実験的な意味合いも強い取り組みになります。どの場所でポイ捨てが多いか、どれくらいの方に参加していただけるか、ネット上の広告はどれくらいが適正なのかなど、さまざまな側面から中長期で機能するプロジェクトを育てる土台となります。

喫煙所を設置すればごみや受動喫煙の問題を解決できそうなエリアへの設置行政と連携した啓蒙活動や協業を全国に広めていきたいと考えています。既に豊島区など、複数の自治体から問い合わせをいただいており、連携をしていきたいと考えています。

コソドが運営する公衆喫煙所「THE TOBACCO」
コソドが運営する公衆喫煙所「THE TOBACCO」

――投稿が吸い殻の削減につながる要素はある?

ポイ捨てに関して考える、意識を持つきっかけを創出できているという点においては、削減の一助になりうるのではないかと考えています。イベント開催時に来場したお客様からも「普段吸い殻を見かけるものの、そこまでなかなか意識できなかった」という声もいただいております。問題を考えるきっかけをつくることが大切だと思っています。

また、実際のデータを元に我々が喫煙所を設置していく準備をしていますので、結果として、問題が起こっているエリアでの問題解決にはつながるのではないかと思います。

渋谷では図鑑イメージの広告も張り出した
渋谷では図鑑イメージの広告も張り出した

――ポイ捨てが多いエリアに見られる傾向は?

やはり、人流が多いこと。また、住宅地ではなく商店街などの商業エリアやオフィス街に多い傾向があります。中でも、人の目につきにくい場所、裏路地や駐車場が多いです。

第二弾、第三弾や全国展開も視野

――投稿募集は2月28日で終了予定だが、その後はどうなる?

現状の施策の分析などを行いますので、2月28日で第一弾は終了予定です。その結果を踏まえ改善するところや伸ばすところを洗い出し、次につなげていきたいと思います。

行政からのお問い合わせもいただいておりますので、第二弾、第三弾と自治体と連携して進めていきたいと考えております。一部の地域のみでは、全国的なポイ捨て問題の解決にはなかなかつながらないので、ぜひ地方でも行えるとうれしいです。


――たばこには厳しい意見も多い。最後に、“伝えたいこと”を教えて。

たばこが嫌いという方がいらっしゃるのは、当然理解しています。一方で、非喫煙者でも喫煙行為自体に寛容な方もいらっしゃることを取り組みで実感しました。弊社は8割が吸わないスタッフで運営しており、喫煙者と非喫煙者で議論をしながら、吸う人も吸わない人も、共に気持ちよく共存できる街の実現ができないかと日々模索しています。

喫煙者には、マナーよく喫煙していらっしゃる方も数多くいらっしゃいます。それぞれの趣向や好きを認め合えるような社会の実現のために、ポイ捨てをなくす活動や喫煙場所の提供などをしていくことで、少しでも力になりたいと考えています。


喫煙所が少なくなっているからといって、歩きたばこやポイ捨てがされる状況では、喫煙者に向けられる視線はより厳しくなっていくだろう。吸わない人への配慮を第一に、マナー啓発とともに環境整備を進めていくことが今の課題なのかもしれない。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。