中国で2021年に生まれた赤ちゃんは1062万人で、1949年の建国以来、最も少なかった。この少子化を止めるため、中国政府は特定の地域で「結婚観の指導」を本格化するという。

FNN記者のイチオシのネタを集めた「ネタプレ」。今回はFNN北京支局の河村忠徳記者が「ジミ婚で負担が減れば少子化は解決?」を伝える。

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まるで宴会…中国では“ハデ婚”が一般的

FNN北京支局 河村忠徳記者:
中国が進める結婚に関するある政策についてお伝えします。それは“ジミ婚推進政策”というもの。この政策がどんなもので一体なぜ導入されたのか?まず、こちらの映像をご覧ください。広い会場内に所狭しと置かれた机。そこでは多くの人が食事をしていますが、実はこれ、1組の夫婦の結婚式の様子です。とてつもなく大規模な宴会なのです

FNN北京支局 河村忠徳記者:
こちらは別の結婚式の映像ですが、会場の中にある池を大きな船が進んでいきます。池には高級な錦鯉も見ることができます。中国ではこうした豪華な結婚式を開くことが、新郎新婦とその両親の面子を保つのに必要なことなのです。そのため、裕福でない人でも派手な結婚式を挙げる必要があり、借金をして盛大な結婚式を挙げることも珍しくないというのです

加藤綾子キャスター:
そこまでしないといけないのですね。でもこうなると大変ですよね?

中国の結婚慣習「彩礼」とは?

FNN北京支局 河村忠徳記者:
影響は出ていて、結婚率の推移を見てみますと、2013年は9.9%ですが、2020年には半分の5.8%まで下がっています。最も大きな理由とされているのが「結婚にお金がかかりすぎる」ということで、結構大きな社会問題になっています。特に問題なのが、結婚の際に主に男性が女性側にお金などを贈る彩礼」といわれる、中国にある古くからの慣習です。日本で言えば結納金にあたるのですが、この彩礼の相場が年々かなり高騰しているのです

FNN北京支局 河村忠徳記者:
1950年代はベッド、洗面器、魔法瓶といった生活用品が主な贈り物だったのですが、21世紀に入ってからはだんだんとこの形が変わり、現金などが多く求められるようになりました。実際の金額に関して見てみますと、全国平均は約124万2000円ですが、浙江省を見てみますとなんと約329万円と、とんでもない金額になっています

FNN北京支局 河村忠徳記者:
彩礼をめぐってはこんな問題も起きています。(映像では)女性が男性につかみかかりながら、泣き叫んでいるのがわかります。実はこの2人結婚しようとしていたのですが、女性側の両親が男性に860万円もの結納金を要求しました。男性はそんな高額なお金は払えないということで、女性に別れを告げたところ、女性が納得できないということでこのような修羅場になっています

FNN北京支局 河村忠徳記者:
さらに、彩礼をめぐってこんな事件も起きてしまいました。2020年に広東省で男がアクセサリー21点、現金にして約432万円相当を奪う強盗事件が起きました。男は警察に逮捕されるのですが、その時の供述として「交際中の彼女と結婚する予定だったが、結納金を払うお金がないことから強盗をした」というふうに話したということです。このようなトラブルもいろんなところで起きていて、このままでは婚姻率はさらに悪くなるとみられています

簡素化条約に合同結婚式…変わる結婚

FNN北京支局 河村忠徳記者:
実際に中国の独身の成人の数を見てみますと、2億6000万人を超えていて、日本の総人口の約2倍にあたるといえます。この現状の改善に向け、中国政府は上海市河北省などを「婚姻風習改革実験区」として32地区を指定。結婚式のあり方を見直す、ジミ婚を進めるように政策として行いました

FNN北京支局 河村忠徳記者:
具体的には2つ政策があります。こちらは結婚簡素化条例という遼寧省で行われたものなのですが、夫婦2人がサインをしているんですけども、高額な結婚式はやらないということを夫婦で誓い合った公的な書類を作成しています。もう一つは合同結婚式という形で、一組の結婚式だけで行うとどんどんいろんなものが料金増えていくのですけども、みんなでやることによって費用を抑えようという試みがとられています

FNN北京支局 河村忠徳記者:
こういった政府が行う取り組みに対して、北京に住んでいる若い、結婚していないカップルがどう感じているのか?実際にインタビューをしました

北京の未婚カップル:
彩礼は過去に娘を売ることからきているので、あまり良い風習ではない。だから私は国の政策を支持します

北京の未婚カップル:
家庭の条件が良いならもっと出してもいいし、悪ければ相談して少しにしてもいい

FNN北京支局 河村忠徳記者:
実際に取材をした私の感想なのですけども、過剰な祭礼は過去のものということで、政府の方針を容認する若者が多いというふうに感じました。しかしなぜ中国政府がこのような取り組みをするのか。それには明確な理由があります。一つは貧富の差を是正することなんですけれども、もっとも大きな理由として挙げられたのは、結婚が減ることによる深刻な少子高齢化への危機感です。中国の国家統計局が発表した、2021年に子どもが生まれた数ですが、1062万人で1949年に統計を開始してから過去最少の数字が出てしまいました

FNN北京支局 河村忠徳記者:
中国の人口は現在、約14億人と言われていますが、ある大学の教授はこのままこの数字が続いてしまうと45年後には人口は半分の約7億人まで減ってしまうのではないかという、驚きの調査結果を出しました。今後急激に人口が減少した場合、経済成長は鈍化し、さらに高齢者に対する社会保障は増加するという大ピンチを迎えます。そのため政府が結婚にまで介入し、出生率を上げようという政策が現在とられたわけです。ただ日本では、自由を尊重するのが当たり前の結婚や出産。そういったあり方にまで、中国政府が制度で縛っていくやり方は、明らかに異質と言えるのではないでしょうか

ジミ婚の推奨で少子化対策になるのか

加藤綾子キャスター:
なんだか女性にお金を払うという習慣が、時代に合わせてジェンダーという視点を含めて廃止というのは理解できるんですけど。ジミ婚を勧めるという、結婚のあり方まで国が入っていくというのは、独特だなと思いますね

社会学者 古市憲寿氏:
うまくいくかわからないと思ってて、今の中国は30年前の日本と似ていて、少子化に突き進むのかそれとも踏みとどまれるのかって結構分水嶺にもあると思うんですけど。ただじゃあ少子化対策として、このジミ婚推奨だけで果たして子どもが増えるかって、そういうことはないと思うんですよね。価値観自体がもう中国も変わり始めてしまっているから、もっと建設的なことをやらないと。逆に結婚に憧れている人もいるわけですから、憧れを削ぐことにもなると思うので。これだけで少子化対策にはならないんじゃないかなと思いますね

(「イット!」1月20日放送より)