夏の参院選をめぐり、自民党と公明党の選挙協力にむけた調整が難航している。公明党は15日、自民党との選挙協力の見送りを検討していることを、党の都道府県本部の代表者に伝えた。
公明党は参院選で自公両党が候補者を擁立する埼玉、神奈川、愛知、兵庫、福岡の5選挙区で自民党の推薦を求めていたが、その調整が難航していることが背景にある。
「相互推薦」で票を上積み
自公両党は参院選で「相互推薦」という形を取ることで、お互いの票の上積みをはかっていた。これは、改選数が1議席の「1人区」では公明が自民候補を推薦し、改選数が3議席以上の選挙区では自民が公明候補を推薦するというものだ。与野党の事実上の一騎打ちとなることが多い「1人区」では自民が議席を獲得しやすくなり、後者では自民・公明の両党が議席獲得を狙えるというメリットがある。
2019年の参院選では、その前の年の12月には自公で選挙協力を行う方針で合意していた。
渦巻く不満 「自民が落ちたら元も子もない」
ところが、今回、夏に迫る参院選に向けての協力がうまくいっていない。
推薦が難航する理由のひとつとして兵庫選挙区の問題があげられる。
改選数3の兵庫選挙区。前回(2019年)の参院選は、
1位 維新・清水氏 57万3427票
2位 公明・高橋氏 50万3790票
3位 自民・加田氏 46万6161票
4位 立憲 安田氏 43万4846票
5位 共産 金田氏 16万6183票
維新、公明、自民の候補が当選した。
しかし、自民党関係者は危機感をあらわにする。「次の参院選で維新が1位になって他の野党がまとまったらどうなるか分からない。公明を推薦して自民が落ちたら元も子もない」と話す。仮に立憲と共産が候補者を一本化した場合、前回の結果を単純に足し算すると、自民候補が4位となり、当選圏外となる。夏の参院選は、前々回の参院選(2016年)の当選者が審判を受けることとなるので、この計算が必ずしも当てはまるとは限らないが、維新の勢いや他の野党の動きなどを警戒する声は根強い。生き残りをかけた戦いとなるため、候補者にとっては否が応でも必死になる。
また国民民主党と小池都知事が特別顧問を務める「都民ファーストの会」の合流が実現すれば、首都圏の選挙区でも構図が変化し、自公同士で議席を争う可能性が出てくる。こうなると、兵庫だけの問題ではなくなる。
公明幹部によると、自民党に昨年末までに5選挙区の推薦を求めたが、返事はなかったという。また、同じ公明幹部は「自民党は軽く見ている」と憤りを隠さず、「もう舵は切った」と強気な姿勢を見せている。
一方で、自民党内からは「公明党がやり過ぎている」と不満をこぼす。
自民党幹部が渦中の地へ

双方から不満の声が出る中、18日、自民党の福田総務会長は「自公には長い歴史があり、これまでも色々な局面があったが、そのたびに自公は知恵を出して乗り越えた」と強調した。
同日、自民党の遠藤選対委員長は岸田首相と会談し、選挙協力を早期に行うことを報告した。会談終了後、記者団に対し「課題となっている県で話をつめる」と述べ「公明党から理解を得られるような形で進めたい」と調整を急ぐ考えを明らかにした。

翌19日には渦中の兵庫を訪問、県連幹部と協議した。県連側は難色を示したものの、「党本部の判断であれば最終的に受け入れざるを得ない」と応じたという。
遠藤氏は近く、埼玉や愛知なども訪れる予定だ。
公明による「自民候補への推薦見送りの検討」という異例の事態に、自公両党はどのような「知恵」を見せて乗り切るのか。
(フジテレビ政治部)