定番の液状のりが「イメージチェンジ」
学校での工作にペタペタ、オフィスで封筒にサッと塗り…誰もが一度は目にしたことがあるだろう液状のり「アラビックヤマト」。
ヤマト株式会社から販売されているこのアイテムといえば、とろりとした琥珀色ののりと、スポンジのついた容器、オレンジ色のキャップが特徴。しかしそのイメージを塗り替える、のりが透明でカラフルな「アラビックヤマト」が数量限定で1月20日に発売された。
それが、こちらの「アラビックヤマト クリアカラー」。
中身ののりが透明になっただけでなく、オレンジ一色だったスポンジキャップが「パープル」「ピンク」「レモンイエロー」「ライトブルー」「アラビックオレンジ」の5色展開になり、通常は黒地にオレンジ色の文字のラベルも、カラフルになっている。
全国の大手文具店や生活雑貨店、量販店等で購入でき、価格は1つ187円(税込)。
ヤマト株式会社が、アラビックヤマトで透明の液状のりを採用するのは初めてとのことで、細長い容器の形状は変わっていないが、従来の「アラビックヤマト」に慣れているせいか、一瞬「あれっ、色が…」と目を疑ってしまう。
SNSでは早速「透明なアラビックヤマト!?」と驚きの声が挙がっているほか、「これ可愛い!」「推し色が欲しいな」とのコメントも寄せられている。
実は2021年に数量限定で、キャップの色がパステル調になった「アラビックヤマト パステルカラー」を販売していた同社だが、このシリーズは従来の「アラビックヤマト」と同じく、中身は琥珀色ののりだった。
それをなぜ今、透明にしたのだろうか? 多くの人が“おなじみのあの色”で記憶しているアラビックヤマトの色を変えてみた理由は?
ヤマト株式会社にお話を聞いてみた。
おなじみの琥珀色は「あえて着色」
――なぜ「クリアカラー」のアラビックヤマトを販売した?
第一弾のパステルカラーが好評だったことから企画しました。アラビックヤマトの代名詞である琥珀色から、アラビックシリーズで初めての透明のりを採用しアラビックヤマトの新しい挑戦として位置づけたかったということがあります。
置いておくだけでデスクの上が明るくなるビビッドカラーのアラビックヤマトは、キャップとノリを透明にすることで今までとは異なるクリアで新鮮な印象に。事務用品イメージを払拭させるカラーリングで、よりパーソナルな文具として家庭での使用を期待しています。
また、時代背景として、テレワークやコワーキングスペースなどからの法人需要から、パーソナル需要へのシフトへの対応などがあります。
――パステルにクリアと、「カラー」にこだわった理由は?
最近はパーソナル需要を意識した商品展開から、機能性はもちろんデザイン性などが重要視されています。商品のカラーバリエーションも、パステルカラー人気は高く、さらに文具女子博などの注目度の高いイベントなども開催されており、まずは、女性向けの展開として、パステルカラーを販売しました。おかげ様で大変好評で、数量限定という稀少性もあって複数のカラーバリエーションでご購入いただいたりしました。
また、最近はアイドルやアニメなどの推しカラーがあって、推しの色を購入しSNS発信していただくことも見受けられました。こういった成功体験もあり、今回は前回の女性とは違うターゲット層も視野にクリアカラーを発売しました。ビビットなカラーの組み合わせで、存在を主張しつつも、インテリアの中にあっても違和感を持たせないクリアな仕上がりを意識しており、生活に取り入れていつもと違うアラビックヤマトを楽しんでいただきたいと思います。
――透明になった中身…そもそも“あの色”はなぜついていた?
液状のりは本来透明で、アラビックヤマトはあえて着色しています。着色の理由は、開発ヒントとなった「アラビアのり」が琥珀色をしていたためです。
昭和30年代まで、アラビアゴムの樹液を主成分としていた液状のりを、別名「アラビアのり」と呼んでおり、手を汚さず使えとても便利なものでした。その商品イメージからも琥珀色のほうが「くっつきやすい」というイメージがあり色をつけています。
――では、透明になったことで成分などに変化はない?どんな点がメリット?
ラベルと外キャップの素材を変更しています。最近は、パステルやくすみカラーの人気が増えているので、逆に売り場で目立つという点がメリットです。
同社によると、実はもともとアラビックヤマトは無色透明だった。主成分はポリビニルアルコールという化学樹脂の一種と水だそうだが、名前の由来となった「アラビアのり」の「容器のビンを逆さにすると、液状ののりが海綿に染み出して手を汚さずに使える」という利点を残し、さらに改良されたのが今の「アラビックヤマト」だそう。
そんな「アラビアのり」が琥珀色をしていたため、「くっつきやすいのり」のイメージとしてあえて今も“あの色”に着色しているのだという。
そのため、今回“クリアカラー化”するにあたって、のり自体の成分に大きな変化があったわけではなく、変更されたのはキャップとラベルのみ。特徴である塗り口のスポンジも従来のものを使用しており、接着力についても変わらず「抜群です」とのことだ。
そんな「アラビックヤマト」だが、最近は文房具としての機能性の需要ではなく、デザイン性も求められているという。
「推し色が欲しい」という声も実際に挙がっていたが、キャップのカラーバリエーションに購入意欲をかき立てられた人が続出。大好評となったパステルカラーシリーズに続くクリアカラーも、透明なのりとビビッドカラーなキャップの組み合わせで事務用品イメージを払拭し、生活の中に取り入れていってほしい、とのことだ。
――今後「クリアカラー」が定番商品化することはある?
今のところ予定はしておりません。基本的にオレンジキャップのアラビックヤマトが定番として変わらずご愛顧いただいていますので、そこに安定の定番があるからこそできる数量限定のカラー展開等の冒険であり、稀少性があってこそユーザーさんも楽しんでいただけるのではと考えております。
多くの人が慣れ親しんできた「アラビックヤマト」の新たな挑戦。ぜひ“推し色”をデスクに並べて楽しんでみてはいかがだろうか。