2021年11月15日、JR福島駅西口。
所持していた刃物で80代の女性を切りつけケガをさせたとして、1人の男が警察官に取り押さえられた。

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男は、4年前にJR福島駅西口にあるコンビニエンスストアで強盗未遂事件を起こし、福島刑務所に服役していた。出所してから数日後に今回の事件を起こし、事件前は駅周辺の宿泊施設に泊まっていたという。

社会でどう生きればいいかわからない

犯罪を繰り返し、この10年間のほとんどを刑務所で過ごしてきたという男。専門家は、事件の背景に出所後の生きづらさがあったのではないかと指摘する。

福島大学行政政策学類・高橋有紀准教授:
社会でどういうところに頼っていいのか、頼って本当に助けてもらえるのか。そこでどんな暮らしが待っているのかということが全然思い描けないなかで、刑務所の中の暮らしは思い描けるけど、社会の中での暮らしというのが全くイメージもつかないし、そこに前向きになれないというのがあったのかなと

三春町の国道で男女2人を車ではね殺害したなどとして、2021年6月に死刑判決を受けた男。

福島市のバス会社に「サリンをまく」と業務を妨害した男。
いずれも裁判の中で明らかになった、「刑務所に戻りたかった」という犯行の動機。

2019年に福島県内で検挙された2,231人のうち、再犯者は半数以上の1,147人。職や居住先がない人も多く、65歳以上の高齢者が占める割合も高くなっている。

更生に必要なことは「本人の意思」。そして欠かせないのが「社会全体の理解」と専門家は話す。

福島大学行政政策学類・高橋有紀准教授:
出所してきた人とか犯罪をした人というのは、また犯罪をするんじゃないか、なので「できれば関わりたくない」と思ってしまう人が、どうしても多くなってしまっている現状があるのかなと。排除しないで受け入れるという姿勢を、いろんな形で社会が示していくというのが大事かなと思います

更生保護施設でも受け入れのジレンマが

福島市の更生保護施設「至道会」。出所した人の受け皿として、原則半年間衣食住を提供して社会復帰を支援している。

現在入所する人は、25歳から70歳までの21人。プログラムを通じ、再犯防止にも取り組んでいる。施設長の高橋英昭さんは、入所者を受け入れる際にジレンマも抱えていた。

更生保護施設至道会・高橋英昭施設長:
再犯防止とはいいながらも、犯罪内容によって選別するということは、地域社会にとっては我々更生保護施設側としては判断をせざるを得ないだろうという思いはあります

統計上、再犯率が高いとされる「放火」や「性犯罪」などを犯した人は、地域でトラブルを起こす可能性がないか、面接などを行い受け入れの可否を判断している。

更生保護施設至道会・高橋英昭施設長:
更生保護と矛盾しているのではないかという指摘があるかもしれませんが、地域社会の理解なくして更生保護施設の存在はないんですから

この場所を出たあと、「職に就けるか」「住まいを確保できるか」。
再犯を防ぐためには、更生の意志を持つ人の不安を取り除き、社会がいかに手を差し伸べていけるかが大切だという。

更生保護施設至道会・高橋英昭施設長:
とにかく本人を信じることですよ。それが一番です。社会全体が犯罪を犯した人たちを大手を広げて受け入れてくれるという環境整備が、まだまだなってないという実感だけですよ

更生・再犯を防ぐために何が出来るか…社会を作るひとり一人が向き合うべき課題となっている。

(福島テレビ)

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