寒い季節でも7〜8割の客が注文

岐阜市に1928年創業の老舗そば店がある。この店の看板メニューは、創業当初から人気のソウルフード「冷やしたぬき」。

しかし今、この店の他にも市内に冷やしたぬきを出す店が急増。なぜ冷やしたぬきがブームとなっているのか。調べてみると、テイクアウトに向いているなど様々な理由があった。

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100年以上の歴史を持つ岐阜の有名店「更科」には、平日にもかかわらずたくさんのお客さんが訪れる。

男性客A:
冷やしたぬきのダブルです、いつも

男性客B:
温かいそばが食べたくなる時もあるけれど、これが普通になっちゃってる

寒くてもお構いなしと、多くの人が「冷したぬき」一択。冷水で締めたそばに、刻みネギとワサビと油揚げを2枚。

そこへ創業から継ぎ足し使ってきた甘辛のつゆと、サクサクの自家製天かすをのせた、岐阜のソウルフード「冷やしたぬき」(並盛 680円)。

天かすが甘辛いつゆに馴染み、ワサビが効いた一杯は、寒い季節でも客の7〜8割が注文する人気メニューだ。

近くにも人気店がオープン「更科をリスペクト」

そんな岐阜で今、「冷やしたぬき」がブームになっている。

更科の店主:
いろいろ食堂ができたり、中には「冷したぬき天国」ってお店もできたり…

「更科」のすぐ近くにある「冷したぬき天国」を訪れると、こちらにもたくさんのお客さんが。

男性客C:
冷たいそばの方がおいしい

女性客A:
いつ来ても、冷やし(たぬき)。冷たくておいしいね

この店は2021年4月にオープンして以来、週末は行列ができる程の人気だ。さっそく名物「冷したぬきそば」(並盛 700円)を注文し、更科との味の違いをチェック。

冷したぬき天国の店主:
昆布の粉末が乗っていますので、よくおつゆで溶いてから…

この店の冷したぬきは、昆布の粉末が添えられている。麺は更科より少し細目で喉越しが良く、さらにつゆに昆布だしのうま味が加わることで、より深い味わいに。生まれも育ちも岐阜市という店主に、冷やしたぬきの専門店を始めた理由を聞いた。

冷したぬき天国の店主:
実家も、うどんそば屋をやっていまして。生まれた時から冷やしたぬきそばを食べて育っているので、“冷やしたぬきそば愛”が強すぎる…

冷したぬきの元祖「更科」のことは意識しているのだろうか。

冷したぬき天国の店主:
メチャメチャ意識しています。レジェンドというか。近くでやらせてもらえることは、胸を借りる気持ちもありますし、更科さんにリスペクトしかないです

店主には、あふれる“更科愛”があった。多少の違いはあるが、更科のスタイルを踏襲したリスペクトメニュー。岐阜の人たちにとって、更科の存在は大きいようだ。

昼休みにサッと…岐阜市役所・新庁舎近くの「そば家 吉右衛門」

冷やしたぬきに詳しい山本慎一郎さんは、岐阜市の冷やしたぬき愛好家らで作った団体「冷やしたぬき王国(キングダム)」に所属し、これまで更科のバックヤードツアーなどを行ってきた。

山本慎一郎さん:
これまで「更科」が一強。ところが、新たに冷やしたぬきを主軸としてメニューを展開する店が増えてきた

「冷やしたぬきが今キテる」と話す山本さんに案内してもらったのが、「冷したぬき天国」から徒歩1分のところにある「そば家 吉右衛門」。

この店の「冷したぬきそば」(並盛 700円)は、刻んだ油揚げにそばの実がトッピングされていた。

そば家 吉右衛門の店主:
オープンする時にメニューを色んな人に相談したんですけど、「“冷やしたぬき”だけは必ずやれ」と皆に言われまして

周りからの強烈なプッシュでメニューに入れた“冷やしたぬき”は、予想を上回る人気メニューに。なぜそれ程の人気となったのか?

そば家 吉右衛門の店主:
5月に岐阜市役所の新庁舎が移転してきた。特にランチの限られた時間の中で、早く出て早く食べられる。そういう点で、冷やしたぬきは一番あっている

2021年5月、店の近くに岐阜市役所の新庁舎が移転。多くの職員が越してきたため、昼時はランチ難民が出るほどの人出になっていて、「限られた休み時間で、サッと食べられる冷やしたぬきが人気になったのでは」と店主は話す。

そばアレルギーの人でも食べられる…ラーメン屋も参戦

冷やしたぬきを出す店は、そば店だけではない。続いて、山本さんが案内してくれたのは「ラーメン天外 長良店」。

この店の「冷やしたぬき中華」(780円)は、2種類の揚げにワサビがのっていて、見た目はまさに冷やしたぬきだが…。

ラーメン天外の店主:
うちラーメン屋なので、肉そぼろ。(麺は)中華麺で

そばの食感に近い特注の中華麺は、そばアレルギーの人でも食べられると人気だ。

山本慎一郎さん:
油脂感があるのが、ラーメン屋さんらしさですよね

なぜラーメン店が、冷やしたぬきなのか?

ラーメン天外の店主:
できたっていうのを聞いて「ヤバイ!」みたいな…。後乗りにならないように、すぐ出すようにして

ブームの兆しを知って、慌ててメニュー化したとのこと。

そばに自家製ラー油を絡めて 個性的な居酒屋の“冷やしたぬき”

他にも、繁華街としてお馴染みの岐阜市玉宮町では、居酒屋が冷やしたぬきを出しているとのこと。訪れた「和食バル ふわり」には、個性的な冷やしたぬきがあった。

和食バル ふわりの店主:
青のりとエビの粉末を入れてあります

青のり入りの天かすやカマボコだけでなく、自家製ラー油をのせていただく個性的な「特製冷やしたぬきそば」(700円 ※トッピングの食べるラー油はプラス200円)。ラー油が冷たいそばに意外に合う。

居酒屋で冷やしたぬきをメニューにした理由を聞いた。

和食バル ふわりの店主:
コロナ禍で夜の営業がなかなかできないようになって…。その中で、ランチで岐阜のソウルフードである冷やしたぬきやってみたらって。多分、コロナがなければ始めてない

コロナ禍で始めた冷やしたぬき。麺を茹でて具をのせるだけと、テイクアウトに向いているのも時代にマッチしているようだ。このブームを“元祖”はどう受け止めているのか。

更科の店主:
お客さんも色んな味に親しんでいただけて、盛り上がったらいい。ボヤボヤしていられないというか、しっかりとおいしいものを提供できるようにしたい

専門店からラーメン店、居酒屋まで…。様々な店で食べられるようになってきた岐阜の冷やしたぬき、ぜひ味わってみてほしい。

(東海テレビ)

東海テレビ
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