国内外から投資を呼び込む狙い
東京証券取引所は4月、市場を再編する。
1部上場企業の8割が最上位の「プライム」市場に移行すると発表した。

東証は、これまで東証1部、2部など4つの市場に分かれていたが、4月4日から、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場に再編される。
最上位のプライム市場に移るのは、現在の東証1部の84%にあたる、1,841社にのぼった。

この再編で3つの市場の特徴を明確にし、国内外から活発な投資を呼び込む狙いで、プライム市場への上場には、投資家が市場で自由に売買できる「流通株式」の時価総額が100億円以上などと、より厳しい基準を設けている。

ただ、今回プライム市場に区分された1,841社のうち、296社は基準を満たしておらず、改善に向けた計画書を開示することになる。
優良企業が埋没しない市場構造
三田友梨佳キャスター:
経済アナリストの馬渕磨理子さんに聞きます。
プライムを頂点に3つの市場に再編する狙いはどこにありますか?
経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本はこれまで、最上位市場である東証1部に上場する企業が多く、下位の市場の企業数が少ない尻すぼみとなる逆三角形の構造になっています。
本来、最上位市場は上場基準をクリアするのが最も難しく、優良銘柄が選定されている状態でないと、投資先として少し魅力にとぼしい企業の中に優良企業が埋没してしまうことになります。
そのため、海外投資家にとって非常に分かりにくく、日本株への投資マネーを集めることができないといった課題があります。
また、これから成長していく新興市場やスタートアップ企業を育てる気がないと判断され、長い目で見て「日本売り」になるのです。

三田キャスター:
株高が伝えられているアメリカの株式市場はどのような形になっているのでしょうか?
馬渕磨理子さん:
アメリカは「NY証券取引所」を頂点にしてきれいな正三角形のピラミッド構造です。
厳しい上場基準をクリアして 「NY証券取引所」で株式を公開していると、それだけで投資家に与える信頼が高くなります。
例えば、日米の最上位市場の時価総額を比較すると東京が6兆ドルに対して、ニューヨークはその4.8倍にあたる29兆ドルもあります。
アメリカは世界一、魅力的な株式市場に投資マネーを吸い寄せてきました。
これによって株高による企業価値の向上と、投資による家計資産の増加を図り、さらには企業の賃上げにも成功してきました。

日本を代表する優良企業が集まる市場に
三田キャスター:
ただ、東証1部上場企業のうち、 およそ8割がプライムに移行するようですがこれではせっかくの改革が看板倒れになってしまう懸念があるのではないでしょうか?
馬渕磨理子さん:
制度の移行期には経過措置が設けられるのは混乱を避ける意味で当然のことですが、今回の改革で最上位のプライム市場を日本を代表する優良企業の集まる市場にできるかどうかにあります。
海外から「単なるマイナーチェンジ」だと受け取られないようにしなければならないですし、骨抜きにならないことに期待したいです。

三田キャスター:
市場の改革で成果を上げるのはやはり、それぞれの企業の努力がポイントになりそうですね。
馬渕磨理子さん:
具体的には成長を保証する『稼ぐ力』、そして海外マネーを呼び込む 『グローバル視点のIR』さらに良き社会の担い手であることを示す 『ESG経営』に力を入れていく姿勢が必要になります。
三田キャスター:
移行期間を経ていかに市場を高めていけるのか注視していきたいと思います。
(「Live News α」1月11日放送)