森を地域の宝にする取り組み。長野・伊那市の伊那西小学校では「学校林」に教室やステージがつくられ、イベントなどに活用されている。子どもたちと共に、森を資源として守る取り組みだ。

学校林に「森の教室」…住民有志が一緒に

木材の防腐剤を塗る児童
木材の防腐剤を塗る児童
この記事の画像(22枚)

木造の建物で児童たちが作業をしている。塗っているのは木材の防腐剤だ。

児童:
ちゃんと薬が効いてほしいです

ここは伊那市の伊那西小学校の学校林。
広さは約1ヘクタールある。

建物はこの春、建てられた「森の教室」。自然環境などを学ぶ拠点で、使われた木材は全て学校林から切り出されたものだ。

唐木賢治さん:
こっち塗って、こっち。ここ塗って

児童と一緒に作業をしたのは、「森の教室」を建てた「伊那西地区を考える会」のメンバー。

「伊那西地区を考える会」のメンバーが一緒に作業
「伊那西地区を考える会」のメンバーが一緒に作業

「考える会」は保育園の廃園問題をきっかけに住民有志でつくられ、2015年から移住者・定住者を増やそうと取り組んでいる。

伊那西地区を考える会
伊那西地区を考える会

事務局長の唐木賢治さんを含め、多くが伊那西小のOBだ。

伊那西地区を考える会 事務局長・唐木賢治さん:
林間でマラソンをしたり、飯ごう炊飯したり、小さい頃から森(学校林)と一緒に生活してきたということもあって、すごく愛着ある中で、森の木を使って「森ステージ」を作ったり、「森の教室」を作ったりさせてもらった

「森は財産」…離れて気づいた自然の豊かさ

唐木さんは、仕事の関係で伊那西を離れて生活する時があった。
離れて気づかされたのが、学校林に代表されるふるさとの自然の豊かさだった。

児童と一緒に作業する唐木賢治さん
児童と一緒に作業する唐木賢治さん

伊那西地区を考える会 事務局長・唐木賢治さん:
「伊那西小学校=森」というような感じで、人と自然と地域の中心に学校があるというのがやっぱり一番の魅力

伊那西地区を考える会・中村博さん
伊那西地区を考える会・中村博さん

「考える会」のメンバーで、木工製品の会社「やまとわ」を営む中村博さんも森の魅力を再発見した一人だ。

 
 

伊那西地区を考える会・中村博さん:
小さい頃は何もないと思っていて、もっと都会とかに憧れていて…実際に一度離れてみたら、ここには何もないのではなくて、学校林は地域の宝だって、すごく意識させられた

かつて森は暮らしと密接に関わり、林業も盛んだった。
しかし戦後、燃料を石油・ガスに依存し、安い輸入材が入ってくると、暮らしは森から遠のき、林業も衰退。森林が荒れていった。

中村博さん
中村博さん

伊那西地区を考える会・中村博さん:
森林は過密状態にあって、不健全な状態になっている。僕は家具屋として海外の木を使って木製品を作っていることは、本当にいいことなのかって考える時があった

中村さんは家具店を辞めて独立。森を守るためもあって、地元の木材を活用する木工製品の会社を立ち上げた。子どもたちにも、森は財産であることに気づいてほしいと考えている。

伊那西地区を考える会・中村博さん:
森の中に入れば、食べ物も燃料になるもの、工夫すればいろんなものが価値に変わっていく。役に立つものに変えていけるような力を持った子どもたちが育っているとうれしい

学校林でイベント…子どもや移住者に魅力伝える

学校林は「地域の宝」。考える会は、環境保全や地域活性化につなげようと学校側と連携し、学校林で「芸術祭」などを開催してきた。

そして、2021年11月には…

学校林に響くジャズ。「森のジャズコンサート」は、コロナ禍で発表の場を失った信州大学のジャズ研究会に声をかけ、実現した。

ジャズが流れる中、地域の有志が地元の木や落ち葉などで作った的あてやゲームに、親子連れが興じていた。

遊んでいた親子(娘):
楽しかったです。知っている音楽が何個かあった

遊んでいた親子(父):
自然の中ですてきな音楽を聴けて、とてもリラックスしたいい時間を過ごせた

訪れた人:
今年、伊那に移住してきたんですけど、外から来た人にとっても魅力的だなと思いました

学校林の「松枯れ」テーマ…授業を企画

考える会はイベントだけでなく、授業も企画している。

この日は学校林のアカマツが20本以上も枯れてしまったことを受け、樹木医を講師として招いた。

樹木医を講師に招いた授業
樹木医を講師に招いた授業

樹木医・宇治田直宏さん:
例えば樹幹注入をする。みんな興味あるよね、注射。樹幹注入をすると、マツノザイセンチュウが少なくなります

樹木医が松枯れの原因となる虫の駆除方法などを説明すると…

5年生:
アカマツに注射をしても、木は枯れないのですか?コロナの予防注射で具合が悪くなった人もいるので心配です

樹木医・宇治田直宏さん:
無駄に注射をする必要はないかもしれない。その木をずっと枯らしたくないと思えば、正しい方法で注射をすれば、もしかしたら長生きするかもしれない

授業を終えて児童は…

2年生:
アカマツをしっかり守っていきたい

(Q.学校林ってどんな存在?)
2年生:
大切な存在

学校林は小学校創立当初からあったが、考える会のイベントや授業によって、小学校にとってこれまで以上に重要なものになっている。

学校林は「宝の場所」

伊那西小学校・川上明宏校長:
(学校林は)「学校の宝」だと思います。林間が地域の人とのつなぎ役というか、林間を通して地域の方と一緒に話ができる。学校にとっても地域にとっても、宝の場所なのかなって思います

伊那西小学校の学校林
伊那西小学校の学校林

身近過ぎて気付かなかった森の魅力。唐木さんは学校林を通じて、子どもたちに、財産である自然を大切にする気持ちを育んでほしいとしている。

伊那西地区を考える会 事務局長・唐木賢治さん:
今の風景を維持できるように(子どもたちに)自然の中で育ってもらって、森と一緒に生活するってことを大人になっても受け継いでもらいたい

(長野放送)