シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は神戸市のかわかみ整形外科クリニック院長・川上洋平先生が、現代社会で苦しむ人が多い「ストレートネック」による肩こりと予防法について詳しく解説する。

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「ストレートネック」と「スマホ首」

肩こりは、首回りの筋肉が硬くなってしまい、それに伴って肩と背中の筋肉が張ったような状態をいいます。

最近みなさんが話題にしている「ストレートネック」や「スマホ首」は、その名前の通り、首の骨がまっすぐになっている状態のことを意味しています。

骨が変形してしまうというよりも、筋肉が緊張してしまい、徐々に首の骨がまっすぐになってしまう状態です。

人間の頸椎は7個の骨から形成されています。
本来は生理的前湾といって、前にゆるやかに湾曲していて、そのアーチによって頭の重みを支えています。

これがストレートネックになると、このアーチがなくなってしまい、頭が前に出てしまう。
そうなると頭の重みを全部首の後ろの筋肉で支える形になり、筋肉が引っ張られて、それによって痛みが出ている状態と考えられます。

どうしてもスマートフォンを使うときに首が前かがみになったり、のぞき込むような姿勢が多くなるので、スマートフォンの使いすぎであったりとか、デスクワークで同じ姿勢をとることによってストレートネックにつながります。

症状は?

「ストレートネック」「スマホ首」の症状は、肩こりや首こり、背中の張り感だったり、首の周りの筋肉が硬くなることによって頭に行く血流が悪くなり頭痛を起こしたりとか、それに伴い吐き気を起こす人もいます。

また、自律神経症状といって自律神経のバランスが崩れることによって、めまいや吐き気、イライラがあったりうつ病の症状を伴うことがあります。

症状がひどくなると、最悪、筋力低下やしびれなどの神経症状が起こることもあります。

女性と男性で比べたら圧倒的に女性の方に肩こりやストレートネックが多いと言われています。
その原因としては、男性に比べて女性は、首や肩周りの筋肉量が少ない、また冷え性だったりして血流が悪くなりやすいというのも原因の一つと言われています。

女性の場合、どうしてもバストの重みを支えるために肩に負担がかかりやすいので、男性に比べて女性の方が起こりやすいと言われています。

ストレートネック自己診断法と治療法

自分でできる簡単なチェック法としては、壁を背にして立ち、かかと、お尻、肩甲骨、頭の後ろを壁にピタッとつけるような形で立って、後頭部が壁につかなければストレートネックの可能性があると言われています。

よくスマートフォンを使っている方、ドライアイの方、目が疲れやすい方、1日5時間以上スマホやパソコンに向かうことが多い方はストレートネックだったりとか、スマホ首の可能性があるので注意が必要だと思います。

治療法としては、一番大切なのは予防です。
のぞき込むような姿勢はできるだけ避けて、スマホを使うときも腕を上げてまっすぐにした姿勢で見るように心がける。

パソコンを使う際もできるだけ画面から40センチぐらい離れて使うことが大事です。
また、長時間作業する際は、1時間に1回程度の休憩を挟むようにして頂きたいです。

また、お風呂に長い間入って血流を良くしたり、枕の高さを意識することも大事です。
高すぎるとストレートネックに近い姿勢を助長するかたちになるので、高すぎない枕が良いです。
一方、沈み込みすぎる枕や柔らかい枕も首の筋肉が緊張した状態が続いてしまうので、柔らかすぎない枕を選ぶことも大切になってきます。

効果的なストレッチ

おすすめのストレッチがいくつかあるので、首の周りの筋肉をほぐしてあげることが大切です。

まずは、胸鎖乳突筋のストレッチです。
ストレートネックにつながる首の前の筋肉は、頭蓋骨と鎖骨を結ぶ筋肉で、この筋肉が硬くなってしまうとストレートネックになるので、片方の手で鎖骨を押さえてそのまま顎をグッと上に上げて反対側にグーッと伸ばしましょう。

鎖骨が押さえられますので筋肉が伸びている感じがすると思います。
反対側も同じように顎を上げてそのまま反対側に伸ばす。

2つ目に、肩甲骨ストレッチ
「肩甲骨はがしストレッチ」ともいいますが、鎖骨に両手を置いて、肘を上に上げて、肘を肩より下げないような状態でしんどくない範囲で後ろに肘を引きながらグルグル回す。

これで肩甲骨が動くので、肩の周りの血流が良くなったり筋肉がほぐれたりします。

次に、腕を後ろで組んでそのまま肘を伸ばしてグーッと上まで、痛くないところまで上げましょう。
その状態で5秒間数えてください。そして、ゆっくり元に戻します。

3つ目は、斜角筋のストレッチ
斜角筋は、首の前の筋肉で、これが硬くなるとストレートネックにつながるので、正面を向いて目線を前にしたまま、ゆっくりと首をかしげるようにしましょう。
3秒キープして元に戻します。

反対側も同じようにしましょう。
この時、正面を向いて顎を引きながら行うことが大事です。

次は、頭を軽く後ろに引いて、そのままゆっくり首を曲げていきます。
反対側も同様です。

ストレッチや予防で痛みが取れないような症例に対しては、私のクリニックでは鎮痛剤、痛み止めの内服だったり、ブロック注射という痛いところに打つ注射、筋膜リリースといって硬くなった筋肉に注射をして筋肉を和らげてあげる治療を行っています。

予防法が一番大事ですが、予防法で取れない痛みに対しては内服薬等の治療が必要になる場合があります。
ただ、ブロック注射もずっと効果があるわけではなく、一時的なものが多いです。

従って、ブロック注射で痛みが取れている間に十分なストレッチを行って、筋肉をほぐしてあげることが大切です。

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川上洋平
川上洋平

神戸大学医学部、神戸大学大学院修了 米国ピッツバーグ大学に留学
北播磨総合医療センター主任医長、新須磨病院整形外科医長などを経て
かわかみ整形外科クリニック 開院
• 医学博士
• 日本整形外科学会専門医
• 日本整形外科学会認定スポーツ医
• 日本整形外科学会認定リハビリテーション医
• 日本整形外科学会認定リウマチ医
• 日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
• 再生医療学会認定 再生医療認定医など

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