店舗などに入る際に、消毒液で手をきれいにするのはもう当たり前になった。しかし、その種類によって効果が全く異なることをご存じだろうか?

京都府立医科大学大学院の廣瀬亮平助教などのグループが研究した結果、アルコールタイプの消毒薬(消毒液)は効果が高いものの持続せず、一方でノンアルコールタイプは使用してから数時間も消毒効果が続くことが分かったというのだ。

研究グループは、アルコールタイプとノンアルタイプの消毒薬8種を、それぞれをヒトの皮膚に塗って10分乾燥させ、その後ウイルスを付着させて消毒効果が残留するかを調査。

(出典:京都府立医科大学)
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結果、ノンアルタイプによく使われる「塩化ベンザルコニウム」や「グルコン酸クロルヘキシジン」は4時間後でも残留消毒効果があったという。

一方、アルコールタイプによく使われる「エタノール」や「イソプロパノール」は、乾燥した後だと消毒薬を塗っていない皮膚と同じような状態になり、消毒効果は残らなかった。

(出典:京都府立医科大学)
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ただし、以前の研究で皮膚表面に既に付着するウイルスに対する両タイプの消毒効果を比べたところ、「エタノール」などアルコールタイプの方がノンアルタイプより優れていたという。つまり、アルコールタイプは効果は強いが持続せず、ノンアルタイプは効果が控えめとなるが長続きするというわけだ。

(出典:京都府立医科大学)
(出典:京都府立医科大学)

それぞれにメリットがあるのは分かったが、では実際どう使い分ければいいのか? 家庭や携帯して使うならどちらがおすすめなのか? 廣瀬亮平助教に聞いてみた。

新型コロナ対策ならアルコールタイプ

――この研究に取り組んだきっかけは?

日常で何気なく使用している消毒薬ですが、いろいろな成分のものがあるにも関わらずその違い(メリット・デメリット)はあまり知られていません。これらの違いを解明することで、より良い感染制御の実現を我々は目指しています。


――アルコールタイプとノンアルタイプ、今現在、多く使われているのはどっち?

アルコール消毒薬の方が多く出回っていると思われます。我々の研究でも新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどのウイルスに対する消毒効果自体は、アルコール消毒薬がノンアルコール消毒薬を上回っていますので、当然のことかと思われます。

――では、アルコールタイプとノンアルタイプをどう使い分ければいい?

残留消毒効果に関してはノンアルコール消毒薬の方がアルコール消毒薬より優れていることが今回の我々の研究で示されました。

一方で、ノンアルコール消毒薬はアルコール消毒薬に比べて新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどのウイルスに対する消毒効果自体は劣ることが、我々の以前の研究でも示されました。

残留消毒効果は付加価値みたいなもので、主目的はあくまで消毒ですので、新型コロナウイルスなどのウイルスに対しての手指消毒は、アルコール消毒薬を選択するという従来の方針通りで問題ないかと思われます。

一方で、流水での手洗いを行い、既に手が清潔な状態である場合は、ノンアルコール消毒薬を使用すると「ウイルスが生存しにくい皮膚環境の創出」が出来て良いかもしれません。

またアルコール消毒薬に塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンが追加されている消毒薬は、「消毒」と「ウイルスが生存しにくい皮膚環境の創出」が両立出来るため最も万能な消毒薬といえるかもしれません。

ノンアル消毒薬は成分の濃度で効果が異なる

――アルコールタイプとノンアルタイプを合わせた消毒薬は現在使われているの?

はい、私から具体的な商品名を申し上げることは出来ませんが「70%エタノールと 0.2%塩化ベンザルコニウムの合剤」と類似した消毒薬は市販されております。これらの消毒薬はメインの消毒成分が類似しているため本研究結果と同様の結果になることが予想されます。

一方で、市販されている(製品化された)消毒薬は、メインの消毒成分以外にも様々な化学物質が含まれており、それらの成分が残留消毒効果にどのような影響を及ぼしているかは分かりません。

本研究は製品ではなくメインの消毒成分のみを含む消毒薬を自身で作成して解析しておりますので、製品そのものを同様に解析して結果を出してみないことには、全く同じ効果があるとは現段階では断言することはできません。


――家や携帯用として持つならどちらがお勧め?

消毒薬を携帯する場合は、手洗いの代わりとして手指消毒を行うことが想定されますので、目的とする病原体に十分に効果のある消毒薬を選択する方が良いと思います。新型コロナウイルスなどのウイルスを対象とする場合は、アルコール消毒薬を選択するのが良いと思います。

もちろんアルコール消毒薬に塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンが追加されている消毒薬を使う場合は、手指消毒だけでなく「ウイルスが生存しにくい皮膚環境の創出」も出来るため一番効果的といえるかもしれません。

そして、最後にひとこと…

ノンアルコール消毒薬である塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンは製品によって濃度が異なります。例えば塩化ベンザルコニウムは濃度が0.05%と0.2%のものをよく見かけますが、濃度によって残留消毒効果は大きく変わります消毒薬を選ぶ際は成分だけでなくその成分の濃度も気にかけて頂けると良いかと思います。以上お役に立てれば幸いです。

たしかに、前半で紹介した「各種消毒薬の残留消毒効果」の図を見ると、塩化ベンザルコニウムは濃度が0.2%の方が0.05%より強い。

みなさんはアルコールタイプとノンアルタイプ、どちらの消毒液がお好みだろうか? 施設に置いてあるものは選べないが、家庭や携帯用にはこうした効果を知った上で選択してみるのがいいかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。