静岡・富士市を走るローカル線の岳南電車で、このほど貨物輸送で活躍した電気機関車の展示施設がオープンした。

社内で譲渡の話が出るなか、機関車を残して展示施設のオープンにこぎつけた背景には、ベテラン運転士の機関車に対する強い思いがあった。

退役車両に再び脚光「機関車ひろば」

池田孝記者:
重厚で迫力ある車両。これは岳南電車が新しい観光スポットとして、所有する電気機関車を整備し展示したものです

2021年8月、岳南富士岡駅にオープンした「機関車ひろば」。

2021年8月にオープンした「機関車ひろば」
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90年以上前に製造されたED291をはじめ、岳南電車で長年活躍した4両の車両が展示されている。

岳南電車鉄道部・井上昌久部長代理:
新しい観光施設として見てもらえるとうれしい。コロナが収束して旅に出たいという方に来てもらい、当社の増収にもつながればうれしい

会社は新たな収益源にと期待

1949年の開業から地域の足としてだけでなく、製紙業を支えるため紙製品を運ぶ貨物輸送をしてきた岳南電車。

製紙の街・富士市を貨物輸送で支えた

しかし、製紙業の衰退で貨物輸送は2012年に終了し、今では富士市の補助金に頼らざるをえないほど厳しい経営状況が続いている。さらに新型コロナが追い打ちをかけ、売上は例年と比べて3割ほど減少した。

製紙業衰退やコロナで経営は厳しい

収益の確保をめざし、終電後の駅のホームに滞在できるイベントや運転体験を実施するためのクラウドファンディングなど、さまざまな取り組みを進めてきた。

収益確保をめざし様々な工夫

こうした中、新たな賑わいづくりにと注目したのが、貨物輸送で活躍した4両の電気機関車だ。
展示施設には電気機関車のほか、くつろげる展望デッキやグッズ販売コーナーを設けた。

展望デッキやグッズ販売も

地域住民の“よりどころ”としてだけでなく、鉄道ファンや観光客を呼び込む狙いだ。

観光客:
企業努力が感じられてとても良い

別の観光客:
いろいろ知ることができて良かった

観光客「新名所になり乗客が増えれば」

別の観光客:
街の人の協力できれいになったと聞いたが、すごく良いこと。これをきっかけに観光名所になり、電車を利用する人が増えてくれると良い

譲渡か保存か ベテラン運転士の願いかなう

しかし機関車をめぐり、社内ではさまざまな意見があった。

機関車は置いておくだけで費用の負担も大きく、役目を終えたので譲渡したほうが良いという意見もあった。

岳南電車・井上昌久部長代理:
機関車がメンテもできずにこのまま朽ちていくのが残念だったので、大事にしていただける方を募集した。10件ほど全国から(欲しいという)話が来た

井上氏「譲渡に10件ほど打診が」

役目を終え、数年にわたり置かれたままの機関車。「残すべきだ」と考えたのはベテラン運転士だ。

岳南電車運輸区・山岸洋一運転士:
邪魔だという話もあった。でも機関車が置いてあることにより、それを目当てに来る人もいるので、できれば残しておいた方が良いとずっと言ってきた

山岸運転士(62)は人生の半分を機関車と一緒

30年以上にわたり電気機関車を運転してきた現役運転士の山岸洋一さん(62)。

岳南電車・山岸洋一運転士:
入社してから自分自身の人生を一緒に過ごしてきた友達という感じでいる

愛着がある機関車の譲渡に反対し、再びスポットライトが当たることを願っていた。

願いがかない4両を展示

運転士ガイドが観光客に人気

山岸運転士:
この機関車は重さはどれくらいかわかりますか?

観光客:
10トンくらいかな

山岸運転士:
40トンあります。触ってもらうと鉄の塊とわかります

山岸運転士はガイド役も

この「機関車ひろば」で観光客へのガイドも務めている山岸さん。多くの人に機関車の魅力を伝えたいと考えている。

山岸運転士:
(運転席の)視界はいいです、高さも高い。入れ替えや走行はその時の状況を見ながら運転します。気を遣う、繊細な操作が必要です

運転していた頃の様子を織り交ぜながら説明するガイドは、観光客にも好評だ。

観光客:
昔の機関車に乗れて丁寧に説明してもらい、とても感激している。わかりやすくて、勉強になることばかり

ガイドは観光客に好評

“人生の相棒” 機関車の魅力を伝えたい

以前は貨物線路があった場所を見つめて…

山岸運転士:
線路があったことは、今ではわからないですね…

製紙業が盛んな頃は貨物線路があった

貨物業務の中心となっていた比奈駅。今でもここに来ると、貨物業務で活気があった頃を思い出すという。

山岸洋一運転士:
(当時は)機関車をみると「きょうも相棒がいるな、一日がんばろうか」という気持ちになった。貨車につかまって、冷たい風の中を移動した時の寒さを覚えている

機関車の姿に励まされたことも

人生を共に歩んできた相棒。

そんな相棒の機関車が、展示施設で陽のあたる場所に戻ってきたことに胸がいっぱいだ。

岳南電車・山岸洋一運転士:
(来場者が)「かっこいい機関車だな」と思ってくれればいい。(機関車は)本当にいてくれるだけでいい

山岸運転士「機関車がいてくれるだけでいい」

「機関車を残したい」という山岸さんの強い思いから始まり、オープンにこぎつけた「機関車ひろば」。

地元の人だけでなく観光客から愛される場所となるよう、山岸さんはこれからも機関車の魅力を大勢の人に伝えていくつもりだ。

これからも機関車の魅力を伝えたい

(テレビ静岡)