無料通信アプリ「LINE」での会話の終わらせ方が難しいと感じている人も、少なくないのではないだろうか。

こうした中、社会言語学が専門の武庫川女子大学・言語文化研究所の岸本千秋助教が、学生を対象に、「LINEの会話の終わらせ方」に関する調査を行い、その結果をまとめた。

調査を行ったのは、昨年の6月と10月の2回。岸本助教の授業を受講する学生に、LINEでのやりとりが続く場合の「やめ時」について、経験や気持ちを自由回答で聞いていた。

調査概要(出典:LCりぽーと48・2021年10月)
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1対1のLINEで「やめ時」を気にするのは95.2%

有効回答の186人分のデータを分析したところ、1対1でLINEのやりとりをしている場合、「やめ時」を気にするのは177人で、全体の95.2%に上った。「やめ時」を気にしないのは9人だけだった。

一方、グループでLINEのやりとりをしている場合、「やめ時」を気にするのは45人で、こちらは全体の24.2%。気にしないは141人で、全体の75.8%だった。

LINEのやめ時は気にする?(出典:LCりぽーと48・2021年10月)

この結果について、岸本助教は「1対1では、お互いが唯一の当事者であるため、会話を切り上げるタイミングをはかる難しさを感じたり、会話を終えることへの罪悪感を覚えたりすることもある。そのため、やめ時が気になるのだと考えられる」と分析している。

一方、グループの場合は「自分以外のメンバーが対応してくれるだろうと思える点で、1対1に比べると気が楽だと言える」としている。

終わらせ方で最も多かったのは「スタンプを送る」

「やめ時」を気にする人が多い1対1のやりとり。

どのように終わらせているのかというと、岸本助教の調査で最も多かったのは「スタンプを送る」で、91人だった。

これについて岸本助教は、送る側だけではなく、送られてきた時にも、「そろそろ終了」という合図として受け取られる場合が多いとして、「スタンプは気軽に使える終了のサイン」と分析している。

スタンプを送る(出典:LCりぽーと48・2021年10月)

スタンプの次、2番目に多かったのは「短い返信」で、32人。

こちらは、「へえー」「了解」「バイバイ」など、返信を短い語句のみにするというもの。これについては、新しい話題を提供しないことや会話が続かないようにすること、返信の必要性を感じにくくさせることを狙ったものだと分析している。

短い返信(出典:LCりぽーと48・2021年10月)

3番目に多かったのは「既読無視」で23人だった。

「既読スルー」とも言うが、送信した内容を相手がメッセージを開くと画面上 に「既読」マークが表示される。実際に内容を読んだかどうかは別として、少なくとも受信者がメッセージに気付いたことが送信者に分かる仕組みだ。

既読無視(出典:LCりぽーと48・2021年10月)

「未読無視」や「返信間隔をあける」方法も

そして、そのほかとしてあがったのが、「未読無視」で18人、「返信間隔をあける」が20人、「メシ・フロ・ネル」が19人だった。

「未読無視」は既読マークをつけないまま、放置しておくパターン。「読まない」ことで終了の意思表示をするもので、この回答で多かった理由が「返信がめんどうくさい」というものだったという。

「返信間隔をあける」は、会話のテンポを少しずつ遅くしていく方法。返信をしないのはコミュニケーション上、あまり好ましくないと考え、それを避けるために、いったん何もしない時間を作った上で反応を返す。その空白時間が会話終了のサインになると分析している。

「メシ・フロ・ネル」は、「ごはんを食べる」「お風呂に入る」「寝る」というように、何らかの口実をつけて、会話を切り上げる方法のこと。理由を伝えることによって、円満に会話を終わらせようとする意図がうかがえる、と分析している。

今回の調査では、LINEの終わらせ方の6つのパターンが示された。たしかにこのような形で終わるLINEは多いが、相手を不快にさせないためにはどのような終わらせ方が適切なのだろうか?

調査を行った、武庫川女子大学・言語文化研究所の岸本千秋助教に話を聞いた。

LINEの終わり方も大切な場面だと考えた

――このような調査を行った理由は?

対面でもオンラインでも、会話が終わりに向かう際の「終結部分」は、お互いの交流内容を確認し、今後の付き合いに結びついていく上で、大切な場面の一つであると言えます。従来の対面や電話などでは、お互いの様子を察し合いながら別れへとつなげていくことができますし、手紙の終結部分は一定の形式が決まっています。

しかし、コロナ禍では、特に対面でのコミュニケーションが制限され、大学生の多くはLINEでのやり取りの時間も頻度も増加傾向にあります。そのような中で、顔が見えないLINE上での付き合いをなるべく失敗しないためには、「どのように終わるか」という「終わり方」も大切な場面であると考えました。

もちろん、会話の内容そのものも重要ですが、「最後の場面」は気を遣うポイントと言えます。


――調査を行ったのはいつ?

2020年6月と同年10月の2回。授業時間(オンライン)を利用して行いました。


――調査方法は設問に対する自由記述。自由記述の回答をもとに、調査結果にある「LINEのやめ時は気にするかどうか」などをどのように抽出した?

LINE会話の終わり方で困ったり苦心したりといった経験があるのは「気にしている」ことの現れと言えます。それを基準にカウントしました。

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相手を不快にさせないLINEの終わらせ方

――岸本助教も、LINEのやめ時を気にする? 

「1対1」の場合は、非常に気にします。たとえ急にやめても、おそらく相手は不快になったり気分を害したりしないだろうな、とは思っていても、そのように思うこと自体が気にしている証拠ですね。

「グループ」の場合は、ほぼ気にしない方です。複数人がいるというのは気が楽なものだな、と改めて思いました。


――岸本助教は、LINEをどのように終わらせている?

「1対1」の場合、基本的にはスタンプが多いと思います。ただ、スタンプの前には、言葉で「またね」「元気でね」など、対面や手紙など、従来のコミュニケーションで行われている終結部分に相当する文言を使いがちです。

「グループ」の場合は、スタンプの時もありますが、何もしない時も多くあります。他の全員がスタンプで「よろしく」などと送り合っている時は、一人だけ何もしないのはマズイと思い、同じようにスタンプを送って終わらせますが、しれっとフェードアウトできるようなときは、そのまま「既読無視」になります。


――「今回の調査結果」と「岸本助教自身の経験」を踏まえ、相手を不快にさせない(角が立たない)LINEの終わらせ方は、どのような方法だと思う?

スタンプであれ短い返信であれ、相手に対して「あなたとの関係を大切に思っていること」や「配慮していますよ」というこちらの気持ちが分かれば、方法はどのようなものでもいいと考えます。

そこには、やはり日ごろの人間関係がどうかという点が大きくかかわってくるはずなので、特に関係が疎の相手に対しては、「これで終わりにしますね」という意味が通じるような文言やマークがある方がいいと思います。

反対に言えば、「終わりの合図」に相当するものがまったくないままでやり取りが終了すると、戸惑いなどが生じて、結果として相手との関係がうまくいかない可能性も出てくるでしょう。今回の調査結果では、やはりスタンプは「手軽」に使えて、かつ、相手にそれとなく終了を匂わせられる「意思表示の代わり」として活用されているようです。

また、「メシ・フロ・ネル」は、たとえそれがウソでも、受けた方も納得できる「方便」だと言えます。

私自身の経験で言えば、スタンプにプラスして、一言を付け加えることは効果的だと思います。たとえば、「また明日ね」という文言を送ったなら、その文言に関係する「スタンプ」を送るというようにです。

こうすることで、送る方も受ける方も、それによってキリがついたと思えるはずです。

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今後「ルール」へと昇格する可能性がある

――今回の調査結果をどのように受け止めている?

LINE であっても会話を終える時には相手への配慮ゼロというわけにはいきません。ただ、配慮や丁寧さの程度がどうかという点では、従来の対面や電話とはやや様子が異なります。

LINE では、互いに何度も別れの挨拶を繰り返したり、ということはありません。そっけない表現を終了合図のように用いてフェードアウトしていくというのが現状のようです。コミュニケーションツールとしての歴史が浅いLINE では、対面や電話のような、会話終了に向かう一定の形式が確立しているとは言い難いです。

とは言え、いかに円滑に、また、より小さなストレスで会話終了を成立させるかという点においてはLINEも同様です。

終わらせ方の6つのパターンは、そういった場で模索しつつ生まれた「解決策」であり、「知恵」だと考えられます。
そして、「解決策」として編み出されたこれらの「知恵」は、今後、多くの人が知り、使いこなすことで「ルール」へと昇格する可能性があります。今はその過渡期にあると言えるのではないでしょうか。このような中で、大学生が試行錯誤し、時に悩み、そしてやりとりを楽しむ姿が垣間見えます。
 


気軽にコミュニケーションできる便利なツールだからこその悩みだが、LINEの終わらせ方を気にしてしまうという人は、まず、「スタンプ」を試してみるのが良さそうだ。また、今後、スタンプで終わらせること自体が定着し、悩まなくなる状況が訪れることを期待したい。