今年に入り、ヨーロッパ各国の軍艦が続々と日本に寄港している。地理的に遠く離れた極東地域に艦艇を派遣する背景には、軍事活動を活発化させている中国の存在が念頭にあるものとみられている。日本はこうした動きを「自由で開かれたインド太平洋」の実現に寄与するものとして歓迎している。

ドイツ艦艇が約20年ぶりに訪日 インド太平洋は“重点地域”

11月5日、ドイツのフリゲート「バイエルン」が東京国際クルーズターミナル(東京・江東区)に寄港した。ドイツ軍の艦艇が日本を訪れるのは実に約20年ぶりだ。

ドイツは、2020年9月に発表した「インド太平洋ガイドライン」でインド太平洋地域を外交政策の重点地域に位置づけていて、今回のフリゲート派遣はそれを体現する形となった。

ドイツ軍フリゲート「バイエルン」東京国際クルーズターミナル 11月
ドイツ軍フリゲート「バイエルン」東京国際クルーズターミナル 11月
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視察に訪れた岸防衛相は「今回のバイエルンの寄港はインド太平洋地域の平和と安定に積極的に貢献するというドイツの強い決意を国際社会に広く示すものであり、自由で開かれたインド太平洋の維持・強化を推進していく上で重要なターニングポイントになった」と歓迎の意を表した。

日独共同会見に臨む岸防衛相 11月5日
日独共同会見に臨む岸防衛相 11月5日

これまでバイエルンと海上自衛隊の艦艇は、ソマリア沖アデン湾やインド洋、そして関東南方海域で計3回にわたり共同訓練を行い、連携を強化してきた。インド太平洋地域における自衛隊やアメリカ軍を中心とした多国間訓練は近年増加しており、2021年はこれに合わせるかのようにヨーロッパ各国が軍艦を続々と派遣した“異例の年“といえる。
 

欧州艦艇がはるばる日本へ その思惑は?

5月にはフランス軍の戦術艦隊「ジャンヌ・ダルク」が海上自衛隊・佐世保基地に入港。自衛隊やアメリカ・オーストラリア軍との多国間訓練や、海上自衛隊の補給艦との洋上訓練を行い、インド太平洋地域における相互運用性の向上を図った。

フランス軍強襲揚陸艦「トネール」 長崎・佐世保港 5月 提供:海上自衛隊
フランス軍強襲揚陸艦「トネール」 長崎・佐世保港 5月 提供:海上自衛隊

9月にはイギリスの空母「クイーン・エリザベス」やオランダのフリゲート「エファーツェン」などが参加する空母打撃群が来日。沖縄南西海域にアメリカやカナダ軍など計6カ国、空母3隻が集結する大規模共同訓練などを行った。

イギリス軍空母「クイーン・エリザベス」 神奈川・横須賀港 9月
イギリス軍空母「クイーン・エリザベス」 神奈川・横須賀港 9月

一連のヨーロッパ各国の艦艇寄港ラッシュについて、防衛省・自衛隊内では「中国やロシアをけん制する戦略的なメッセージだ」や「中国の抱える人権問題に対し、行動で示すことで、欧州内でのプレゼンス(存在感)を高めたいのでは」といった見方をしている。

オランダ軍フリゲート「エファーツェン」 海自・横須賀基地 9月
オランダ軍フリゲート「エファーツェン」 海自・横須賀基地 9月

鮮明化する 民主主義vs権威主義

一方、中国も依然として軍事活動を活発化させている。10月下旬には、ロシア軍の艦艇と隊列を組み日本列島を周回する動きを見せた。艦載ヘリの発着艦に対しては、領空侵犯の恐れがあるとして自衛隊が緊急発進(=スクランブル)を行った。

自衛隊制服組のトップ・山崎統幕長は会見で「いわゆる戦術運動の様子が確認されていた。中露の共同演習や共同での航行や、これまで中露両国が実施してきた爆撃機による共同飛行などとあわせ、近年、両国間での軍事面での連携が進んでいることを示すものと考えている(10月28日)」と警戒感を示した。

中国海軍艦艇(右)とロシア海軍艦艇(左) 提供:統合幕僚監部
中国海軍艦艇(右)とロシア海軍艦艇(左) 提供:統合幕僚監部

また、中国は9月、ドイツ政府によるバイエルン上海寄港の打診を拒否している。バイエルン訪日直前のタイミングに、これまで中国へ歩み寄る姿勢を一定程度見せていたドイツへの“塩対応”をとったことは、中国とドイツの関係にとどまらず、民主主義と権威主義の対立構図を鮮明に表している。

日本としては、地域の平和と安定のために、ヨーロッパ各国の“利害”を見極めつつ、多国間との防衛交流・協力を広げていくことが求められている。

(執筆:フジテレビ政治部・伊藤慎祐)