2021年から始まったズワイガニの最高級ブランド「輝」。6日の初競りでは、ギネス記録に並ぶ500万円の値がついた。
今回、水揚げから落札までを密着。そこには関係者のさまざまな思いがあった。
11月5日の金曜日の夜、冬の味覚「ズワイガニ」を求め、底引き網の漁船が続々と出港していった。
「いってらっしゃーい!!」「お父さん、カニいっぱいとって来てねー」など声をかけ、家族が見送る。

待ちに待ったズワイガニ漁の解禁だ。
しかし、漁師達の思いは2021年は少し違うようだった。
2021年から重さ1.5kg以上、甲羅の幅14.5cm以上など、厳しい基準を満たしたズワイガニを「輝」として認定し、ブランド化を目指している。

そのため、船の中で重さを量ったり、漁師もそわそわしたり…
(Q.大きいカニが上がったときは?)
漁師:
でかいなーって。これ「輝」、いけるんじゃないかなって
こうした中、ある船では…
第八丸一丸の漁師:
おっ! 1.86kg、1.87kgか!?
「輝」の基準を大きく上回る大物に、漁師も大興奮だった。

第八丸一丸の漁師:
「輝」や! 俺の「輝」や、ほら!
第八丸一丸の漁師:
(輝に)本当に会えるのか? 会えたぞ! きのう禁酒したおかげやな

「輝」求め…厳しい基準で認定は
2020年の初競りでは、40万円の値がついたズワイガニ。各港で期待が高まる。

山下理恵リポーター:
午後4時前の金沢港。カニ漁を終えた船が港に戻って来ています。果たして最高級ブランド「輝」は上がって来るのでしょうか
カニを持って走ってくる女性が、「1.5kg以上!」と話す。1.5kgを超える大物に漁師の期待も高まるが…
担当者:
色が薄い

別の大きなカニも…
担当者:
甲羅がもうダメ
重さは1.7kgを超えているが、甲羅がへこんでいるため「輝」とはならなかった。

ほかにも候補となるカニは持ち込まれるものの、なかなか「輝」認定とはならず…
漁師:
なかなか「輝」のブランドのカニをとるのは難しいなと実感している

「輝」を求めているのは、漁師ばかりではない。
「クスリのアオキ」で鮮魚のバイヤーを行う坂尻浩之さん。
クスリのアオキ鮮魚バイヤー・坂尻浩之さん:
130万円で落とせんかなって…。ええっ! マジで? マジか!

クスリのアオキ鮮魚バイヤー・坂尻浩之さん:
やっぱりすごい金額で、落としにくい感じ。社長は150ぐらいでやっちゃえよと。それ以上かもしれません
しかし、ライバルはほかにもいた。
(Q.きょうの狙いは?)
温泉旅館「百楽荘」・島田大輔料理長:
もちろん新ブランドのカニ、「輝」です。やっぱり迫力が違う

(Q.ちなみに予算は?)
温泉旅館「百楽荘」・島田大輔料理長:
それは今言えないです。ワクワク、ドキドキですけど、必ず競り落とします
過去最高値からセリ開始…落札価格はいくらに?
そんな中、珠洲であがった第八丸一丸のカニに注目が集まり、市場がざわつき始めた。

そしてカニは、事務所の中へ運び込まれた。
山下理恵リポーター:
「輝」です! 今1匹のカニに「輝」認定を証明するタグが付けられました!

とうとう現れた「輝」、その大きさに…
クスリのアオキ鮮魚バイヤー・坂尻浩之さん:
けっこう長いことバイヤーやってるけど、めちゃめちゃ大きいね。あ~もう絶対無理や。絶対落とせん

この日 候補に上がった23のカニのうち、「輝」に認定されたのは、この1匹だけだった。
いくらの値が付くのか、注目が集まった。
競りが始まると、市場の熱気は最高潮に。次々とカニが競り落とされる中、最後は「輝」。

スタートは、2021年の過去最高値と同じ40万円。そこから、どんどん値は上がり…
担当者:
475!…、480万円! 490万円!…500万!

クスリのアオキ鮮魚バイヤー・坂尻浩之さん:
え~? いくらいくら!? 500万!? 社長すみません!
第一号の「輝」は、ギネス世界記録に並ぶ500万円。
競り落としたのは、「百楽荘」だった。

温泉旅館「百楽荘」・島田大輔料理長:
どこの旅館も飲食店も、本当に苦しい思いをしてきた。全国の方にこれを機に、本当にすばらしい、おいしいカニを知ってもらいたい。そういう思いで今回の値を付けさせていただいた

クスリのアオキ鮮魚バイヤー・坂尻浩之さん:
350万円まで予算があったので、(競り落として)やろうかなと思ったんですけど、500万円までつり上がってしまいました
(Q.来年はあそこに立つかもしれない?)
クスリのアオキ鮮魚バイヤー・坂尻浩之さん:
来年は頑張りますか。頑張りましょう!

値段を聞いたら食べられない? その味に舌鼓
そして翌日、競り落とされた「輝」は早速、宿泊客に提供された。

宿泊客:
このカニの値段はいくらなんですか?
開いた手を見た宿泊客は、「50万?」と答えたが、「もっと!」の声が。
そして「500万円」の答えに、「高すぎる」と一言。
その500万円のカニも、ついに鍋の中へ。

そしてお待ちかねのカニが運ばれてきた。

宿泊客:
これ(足)1本で50万円
宿泊客:
それ聞いたら、もう食べられん
気になる500万円のお味は…

宿泊客:
思ったよりも、めちゃくちゃうまい。ほっぺが全部とろけちゃう
温泉旅館「百楽荘」・島田大輔料理長:
(コロナ禍でも)お客さまが戻って来たことに、本当に感謝を申し上げたいと思うし、(「輝」を食べて)大変喜んでいただいたということに尽きるかと思います

そして、500万円の「輝」を取った漁師は…
第八丸一丸の漁師:
(ほかの船)どこでもないって聞いたので、もしかして…とは内心思ったけど。(とったのが)自分ではないと思った。今は酒盛りばっかりです

一方、「輝」の競りには破れたもの、「輝」に次ぐクラスのズワイガニを手に入れた坂尻さんの店には早速、カニを買い求める客が続々と訪れた。

客:
きょうの日を待っていました。さばいてカニ酢に付けて食べます
客:
すごくでかい
(Q.こんな大きいカイ見たことある?)
客:
見たことない
「輝」の誕生で、石川県産ズワイガニ、加能ガニの知名度アップにつながるのか。

ズワイガニ漁は、コウバコガニが12月29日まで、ズワイガニが2022年3月20日まで行われる。
この日、石川県内にあがったカニは約3万匹で、「輝」はその内の1匹だという。
(石川テレビ)