福井・鯖江市に、ダイレクトメールの代筆サービスで業績を伸ばす企業がある。その特徴はデジタル化が進むビジネスシーンで、あえての「アナログ風」。
全国から注文が入るという人気の理由とは?

ロボットが手紙を“手書き”

こちらの手紙。便箋にはボールペンで書かれた文字が並んでいる。丁寧な筆跡から、さぞ筆まめな人が書いたと思いきや、実はこれらの手紙を書いているのはロボット。

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福井・鯖江市の「エクネス株式会社」。
この会社では、ダイレクトメール(DM)などの宛名や書面の代筆サービスを行っている。オリジナルの代筆ロボットがなぞる文字は、まるで人が実際に手書きしたような仕上がり。

エクネス株式会社・平井康之社長:
一番の特徴は人の手書きを再現しているところです。スタッフやその家族がタブレット上で一文字一文字、実際に手書きをしたデータを取り込んで、その文字をロボットが再現する仕組みです

文字フォントは美文字、男性風、若い女性風など5種類から選ぶことができ、依頼主は送付リストと文章データを用意するだけで、手書き風のDMが出来上がる。

元々はWebコンサルタントとして立ち上げたこの会社。本業の傍ら、隙間産業として需要があるのでは、と代筆サービスを始めた。

当初はパートを雇い、人の手で代筆していたが、開始当初から注文が殺到。大量の注文に対応するためロボットで自動化し、今では220台の代筆ロボットが1カ月5万通のDMを作成している。

エクネス株式会社・平井康之社長:
パソコンやスマートフォンなどIT化が進んでいると思うが、進めば進むほど、手書き独特の温かみというか、人気(ひとけ)感というのが逆に貴重になり、希少価値を増している。そこが支持されている

平井社長も予想以上だったという事業の急拡大。
デジタル全盛の時代に、アナログを感じさせるサービスが支持された理由の一つが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。

メールより反応がある“手書き風”手紙

東京で営業コンサルタント業を営む松田輝正さん。
新規顧客へのアポイントの手段として、エクネスの手書き風DMを利用している。

株式会社TSUIDE・松田輝正代表取締役:
コロナ前に関してはオフラインの面談が9割ぐらい、1割がオンラインだったが、今は真逆になっている。今までは名刺交換の瞬間がお客様と打ち解けるファーストステップだったが、それに似たような温もりを感じることができる部分が重宝している理由

新型コロナの影響で対面での営業が制限される中、一般企業は電話やメール、DMなど人の移動を伴わない営業=「インサイドセールス」に頼らざるを得ない状況が続いている。
しかし、顔を合わせての直接的なコミュニケーションが取れない分、アポイントの獲得など成果が出づらいのが現状。

株式会社TSUIDE・松田輝正代表取締役:
メールでお客様に新規のアポイント頂けませんかと送付した場合は、開封率がおよそ0.03%と言われていて、私のところでもそれくらいの数字だったが、手書き風DMを使った場合は最大で3.5%くらいの反応があった。何百倍も違う数字が実際出ている

成果率が低いというインサイドセールスの弱点を、手書き風DMは補完できるという。

エクネス株式会社・平井康之社長:
「こんなに丁寧な手紙を送ってくれてありがとうございました」とか、「どうしても御社のサービスは導入が出来ないんですけども」という断りの電話が何件も入ってきているとか、通常のDMではない反応があると聞く。(手書き風DMが)人の心に届いているのかなと感じている

新型コロナがもたらした「新しい生活様式」。
企業においても旧来の活動や行動が見直され、テレワークやオンライン会議などデジタル化が大きく進んだ。
しかし、人の心に直接訴えるロボット代筆サービスの需要の高まりは、ビジネスの基本が「人」であることに変わりがないことを投げ掛けているのかもしれない。

(福井テレビ)