人生で1度しかない成人式。
そんな成人式で、“世界に一つだけ”の振袖を職人である父親が手作りした投稿が話題になっている。
娘が最高に綺麗だった成人式!
— tomi/toitofabric (@JanuaryTomy) October 9, 2021
「成人式の振袖織ったろか?」
『えーいいの?』
と軽く言ってしまった会話が、3ヶ月間僕を苦しめる事になる🙄
彼女はやりたいスタイルがあったみたいで、ベレー帽とレトロを取り入れた自分らしく可愛いスタイルにしたいのを当日聞いたww#成人式 #振袖 #着物 #綿 pic.twitter.com/SETHbNZ7Bl
娘が最高に綺麗だった成人式!
「成人式の振袖織ったろか?」『えーいいの?』
と軽く言ってしまった会話が、3ヶ月間僕を苦しめる事になる
彼女はやりたいスタイルがあったみたいで、ベレー帽とレトロを取り入れた自分らしく可愛いスタイルにしたいのを当日聞いたww
このコメントと共に投稿されたのは、振袖姿の娘さんの写真。

色鮮やな振袖のイメージとは違い、白と黒とグレーのシンプルな“格子模様”で素敵な振袖だ。
投稿したのは、tomi/toitofabricさん(@JanuaryTomy)。tomiさんは、山口県柳井市の沖合にある平群島で織り師をしており、伝統的な織機を使った手織りの生地を使ってテキスタイルデザインから機織りまで1人で行っているそうだ。

この投稿には「めっちゃ可愛いです」「振袖織ってくれるなんて最高のプレゼント」「シンプルだけどオシャレ」と絶賛するコメントが続々寄せられ、3万3000いいねがつくなど話題になった(11月4日時点)。
tomiさんによると、この振袖の見本は伝統柄の「弁慶縞」。弁慶縞は弁慶格子とも呼ばれ、縦2色横2色で、縦横同じ太さの幅広の格子縞(縦横縞)のことだという。

振袖は「父親の僕にできる事の1つ」
tomiさんは軽い気持ちで聞いたようだが、その出来栄えは素敵だ。だが、投稿には「3ヶ月間僕を苦しめる事になる」とある。やはり、大変だったのだろうか?
まずはtomiさんに話を聞いた。
ーー振袖を織ろうと思ったきっかは?
父が他界した時にふと考える時間があり、僕は生きてきて何かを残せたのか疑問に思い考えた結果、憧れの職人になりたいと思いました。じゃあ何の?僕は服が好きという事と子供の頃にみた「まんが日本昔ばなし」の鶴の恩返しが強烈に頭に残っていたので、機織り職人になって生地を沢山残していきたいと思いました。
これまで子供達には苦労をかけてきたと思います。父親の僕にできる事の1つとして、娘の成人式に振袖をプレゼントしようと思いました。娘も個性的なものが好きなので、思いの外喜んでくれ嬉しかったですね!

ーー「振袖を織ろうか?」と提案した時、娘さんの反応はどうだった?
まさしく一瞬の間の後に、「いいの?」じゃあやりたい事があるって感じでした。待ってたのかな?
ーー娘さんからの要望を聞いた時、どう思った?
要望は「白黒の格子」である事です。かなり意外でしたね。古風な伝統柄でしたので、ただ、華やかな着物の中にあの柄は面白いと直ぐに思いました。

ーー制作期間はどのくらい?
娘との話し合いはトータルで2時間程度だと思います。実際の作業自体は1ヶ月ぐらいでしたが、デザインに時間がかかったのと他の仕事と同時にやってたのでスケジュールがタイトでした。
振袖姿の娘は「とにかく綺麗!綺麗だった」
ーーこだわった部分を教えて
こだわりは黒に近い藍染の糸を使う事、綿である事、格子のサイズ感です。

ーー大変だったことは?
見本は伝統柄の弁慶縞でしたのでありましたが、苦労したのは格子のサイズ感です。格子のサイズは何度もパソコンで作り直しました。中々ピタリハマらなかったですね!
ーー完成した時、どう思った?
とにかく背伸びしながら「終わったぁ~」の一言です!

ーー娘さんの反応はどうだった?
反物までは随時画像を見せてたので結構あっさりしたものでした。ただ仕立てが終わって振袖が完成した時は直ぐに羽織ってはしゃいでましたね。

ーー振袖姿の娘さんはどうだった?
とにかく綺麗!全く普段とかけ離れていて別人でした。表情も大人びて見えましたし、皆んなの中でめちゃくちゃ目立ってました!綺麗だった。

本当に完成できるのだろうかと最初は不安
tomiさんの話から、娘のためにに“最高”の振袖を贈ろうと、いろいろ苦労した様子が伝わってくる。
一方で、自分がイメージした振袖を織ってもらえるのは、娘としてとても嬉しかっただろう。そして、アイデアはどうやって思いついたのだろうか? 娘さんにも話を聞いた。
ーー「振袖を織ろうか?」と言われた時、どう思った?
父が織っている姿など実際に見たことはなかったので、本当に完成できるのだろうかと最初は不安でした。
ーーアイデアはどうやって決めた?
市松模様の着物をテレビで見て素敵だと思い、模様はこの一択でした。帯などに色を持っていきたかったので振袖自体の色は合わせやすいものにしました。

ーー完成した振袖を見た時、どう思った?
最初生地だけ見た時はこれが振袖になるのかと不安でしたが実際に形になった時は当日着るのが凄く楽しみでした。
ーー成人式ではどうだった?
周りは華やかな振袖の中、綿の振袖は逆に目立っていました。周りの方からもどこの振袖ですか?と声かけられたりたくさんの方に写真を撮っていただきました。父の織った振袖ですと伝えると凄く驚かれました。

ーー話題になったけどどう思う?
tomiさん:
凄まじい反響!返信が間に合わなかった程。全く思って見なかった事なので、あたふたしてました。反対もあった綿の振袖をやり遂げた達成感と綿の振袖が認められたとも思いました。でもSNSの中での事で、直接仕事に繋がるかは難しい所です。
娘さん:
成人式当日も沢山声をかけて頂きましたが時間が経った今でも話題に上がるのは嬉しいです。

なお、このエピソードは実は3年前のことなのだそう。現在、tomiさんが振袖を管理しているとのことで、依頼があれば展示することもあるという。
また、この振袖そのものを「必要な方に使ってほしい」ということで、コロナ禍で結婚式を挙げられなかった人に無償で貸し出したこともあったという。娘への愛情が詰まった振袖は、今も活躍しているようだ。