宮崎県内の育児休業対象者の育休取得率の推移を表した資料によると、2020年度、県内の男性の取得率が初めて15%を超えた。
この取得率アップに貢献している、えびの市の企業の取り組みを紹介する。
大手メーカーの協力企業として、えびの市の本社や都城市など、6つの工場で電子部品や自動車部品などを製造している。
社長みずから育休取得…有給取得評価の導入も
従業員は女性が約450人、男性が約220人で、女性が3分の2を占めていて、有給休暇の取得については家庭を持つ女性パート従業員が優先される状況が続いていた。
この記事の画像(10枚)えびの電子工業 津曲慎哉代表取締役:
社員になると有給取れなくなるから、パートのままでいいですとか、そういう声がどうしても生まれてしまっていた。リーダーさんが倒れてしまうと、ほかの人もみんなもっと辛くなってしまうとか、これではどうなんだろうと思って
そこで、2年前から誰もが有給を取得できる仕組みづくりを進めてきた。
えびの電子工業 津曲慎哉代表取締役:
うちの場合は、年始の挨拶ですべての工場で(有休取得推進を)言ってまわった
年始の挨拶を皮切りに、有給取得評価を導入したり、年間カレンダーに有給推奨日を設定したりなど、従業員の意識改革を推し進めた。
そして、津曲社長自ら行ったのが、育休の取得。
役職員の育休取得には休業保険の適用はないが、前例をつくることに乗り出した。
えびの電子工業 津曲慎哉代表取締役:
頼りたいのは、やっぱりパートナーの旦那である私だよねということで、私が助けに入ることで妻がやっぱり安心した。お姉ちゃんたちがかわいいって言って長男を抱っこしている写真を私が撮ったのを、病室の妻に送るっていう行為自体が一生の宝物ですよね
えびの電子工業 津曲慎哉代表取締役:
女性はもともと(育休を)100%取ってますから、その分 男性も遠慮なく取りやすい環境ですので、これからどんどん男性も取る人が増えていくと、もっといい好循環になるといいなと思ってます
えびの電子工業では、2016年度には社内全体で40.1%だった有給取得率が、2020年度には78.1%に。
そして、対象となった3人の男性社員のうち、2人が育児休暇を取得した。
その1人が、都城市の早鈴工場に勤務する古谷将人さん。
えびの電子工業早鈴工場 古谷将人さん:
思い通りにいかないことばっかりだったっていうのはあるので、とにかく大変だったっていうのは感じました。子どもと一緒にいられる時間というのは、すごく幸せと思った。その分さらに仕事頑張ろうっていうのも、やっぱり増しますよね
育休取得の仕組み作り…その先にある"雰囲気作り”
えびの電子工業では、育休中のフォローアップ体制として、工場内のほかの工程を覚えることや、引っ越しをともなわない工場間の応援などを活発化した。
その結果、有給取得率に比例し、会社の生産性も上がっている。
えびの電子工業 津曲慎哉代表取締役:
休みがちゃんと取れるのでリフレッシュして、てきぱき早く仕事ができてミスが減るとか、正直、生産効率は上がって、心配していた経営陣からかなり驚かれた
えびの電子工業では、育休取得の仕組み作りを行ったことで、会社にとっても社員にとってもプラスに働いている。
えびの電子工業早鈴工場 古谷将人さん:
育児休暇をいただいて助けてもらったから、その分(育休を)次取るっていう人がいたら、今度は僕がフォローしなきゃっていう風に感じますね
えびの電子工業 津曲慎哉代表取締役:
ほかの人が休むときに、「自分も手伝っている、助け合っている」という自負があるので、全然遠慮なく休むって言えると思います
2021年6月には、育児・介護休業法が改正され、より育児休暇が取りやすい仕組みが整えられつつある。
津曲社長は、地元の社員が多いので、えびの市の人柄が助けあいの心を生みやすいといい、あらためて仕組みづくりのその先にある雰囲気作り、そして協力体制というところの大切さを感じさせた。
【取材後記】
全国的にまだまだ高い水準とは言えない、男性の育休取得率。
弊社でも男性社員の育休取得の前例がなかったので、どんな会社が取得の実績があるのだろう?と興味が沸き、2020年に初めて男性の育休取得の企画を担当しました。
そこは、宮崎県が認める働きやすい職場に贈られる「ひなたの極」認証の取得第一号の企業(建設業)で、男性の育児休暇取得率が100%という実績がありました。
夕方のニュースで取り組みをご紹介したところ、社内の女性社員から「旦那さんに見てほしいからまたやって!」という声をいただきまして、今回が第2弾となりました。
今回取材をしましたえびの電子工業は、えびの市の穏やかで自然豊かな土地柄も手伝って、とにかく“助け合い”精神に溢れた社風で、当たり前に有休をとれる雰囲気が広がっていました。
どちらの企業でも共通して言えるのは、育休を取得することで、職場復帰後の生産性が上がり、会社にとってもメリットになっているということ。
国でも育児・介護休業法については盛んに議論されていて、働く人が育児をしやすい環境がさらに整いつつあるところも多いかと思います。
宮崎県の男性育休取得率は15%と、県の目標を超えました(令和2年度)。
また、7月にはテレビ宮崎初の男性育休取得者が誕生しました。これからもフルタイムで働く女性の1人として、取材や日々の放送が働きやすい職場づくりを進めることの一助となりますよう精進していきたいと思います。
(テレビ宮崎 武田華奈アナウンサー)