中曽根元首相の孫が小選挙区で初陣
「圧勝しないと意味がない」
そう語気を強めるのは、小選挙区で初となる戦いに挑む群馬1区の自民党公認・中曽根康隆氏(39)だ。「圧勝」にこだわるのには、理由がある。中曽根康弘氏、小渕恵三氏、福田赳夫氏、福田康夫氏と戦後最多の総理大臣を輩出した“保守の牙城”群馬で起きた熾烈な「公認争い」だ。
2017年の選挙では、財務相などを歴任した尾身幸次氏の娘・細田派の尾身朝子氏が公認され、二階派の中曽根氏は比例にまわった。雪辱を果たすため、中曽根氏は50の後援会を結成するなどして、支持固めを展開した。今夏には、安倍前首相や二階前幹事長が群馬入りし、公認争いは激化したが、事前の情勢分析で優勢だった中曽根氏に軍配が上がった。
10月15日、党本部から公認の連絡を受けた際には、「喜ぶ力もないくらい、崩れ落ちるくらいほっとした」と振り返るが、「これからが本当の戦いだ」と脇を締める。演説では、“中曽根ブランド”も存分にアピールし、票の上積みを狙う。
「私、中曽根康隆は康弘(祖父、元首相)、弘文(父、元外相・参院議員)のご縁のなかで生かされているが、これから先は康隆として頑張らないといけない。散々“七光りの孫”と言われているが、この七光りを十分使い切って、今度は自分の光を作っていきたい」
野党は3候補が乱立
公認争いが決着した自民党に対し、野党側は、3人の候補が乱立した。
共産党・新人の店橋世津子氏(60)、日本維新の会・元職の宮崎岳志氏(51)、無所属・新人の斉藤敦子氏(53)の3人だ。
立憲民主党、共産党などの野党は、全国で選挙区調整を進める中、去年12月、立憲民主党の群馬県連は、公募で、元大学准教授の斉藤敦子氏を選出し、その後、党本部に公認を申請した。しかし、党本部は、群馬1区には公認候補を立てない判断をした。
一方、共産党は、公認候補として、前・前橋市議の店橋世津子氏を擁立した。
また、宮崎岳志氏は、2009年の衆院選で、当時の民主党から群馬1区に立候補し、比例復活で初当選。2017年の選挙では、希望の党から立候補するも落選した。今回、立憲民主党の公認を目指すも果たせず、最終的に日本維新の会公認での立候補となった。
世襲批判の維新・宮崎氏、「命と暮らし守る」共産・店橋氏と無所属・斉藤氏
維新・宮崎氏は出陣式で、「自民党は元総理のお孫さん、そして、現職参院議員の息子さんでもある。右か左かの戦いではなく、上か下かの戦いだ。群馬の政治風を一風させたい」と、中曽根氏の世襲を批判した。
陣営は「維新からの出馬について、支援者からのハレーションがないのは有り難い」と話す。また、中曽根氏が公認候補となったことは「向かい風だ」としながらも、保守票の切り崩しを狙う。
一方、共産・店橋氏は、今回の選挙を「政権交代選挙」と位置づけ、「いのちと暮らしをしっかり支える政治に変えよう」「市民の声が届く新しい政権をつくる」と訴える。
また無所属・斉藤氏は、「私のルーツは看護職」と看護師の経験を活かして、「いのちと暮らし、環境を守るために身を挺す」と訴えるなど、4人の候補が激しくしのぎを削っている。
(衆院選2021・群馬県)