31日の投開票の衆議院選挙について、中盤のFNNの調査では自民党が議席を減らすのは確実で、単独過半数を維持できるかは微妙な情勢であることがわかった。
ここ最近の衆院選で圧勝を収めてきた自民党にとっては初めて迎える正念場になると言えるだろう。
調査結果と取材により、今回の選挙の特徴と今後の展開を見通してみたい。

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接戦区多数で情勢混沌

過去3回の衆院選は、全てが自民党にとって有利に働いた。
旧民主党から政権を奪還した2012年、消費税率の引き上げを延期した2014年、小池東京都知事の新党立ち上げで野党が割れた2017年。

いずれも自民党が圧勝した選挙だ。
今回は野党の大きな失点もなければ、分裂もない。与党にも大きくアピールする材料はない。
つまり今回は自民党が支持されるのかどうかが冷静に問われる選挙だと言えるのではないか。

逆に言えば、野党がどれだけ現実的な信頼を得られるかが問われる選挙でもある。
FNNの調査では289ある小選挙区のうち、差が3ポイント以内の選挙区が29、差が5ポイント以内の選挙区は54にのぼった。野党が候補者を一本化させたこともあるが、前回に比べて明らかに情勢は混沌としている。
この情勢に追い打ちをかけているのが自民党の候補者事情だ。

野党が候補者一本化 試される自民若手議員

自民党が圧勝した過去3回の選挙しか経験していない1~3回生は100人以上。
あまりに数が多いため幹部らの指導が行き届かず、地盤が脆弱な候補が多いとされている。

今回の調査で自民党は比例の投票先で約38%の支持を獲得した。公明党(同10%)と合わせて、約5割に達する与党の支持者をまとめれば勝てるはずだが、実際にはそうなっていないところが多い。
支持政党は自民党と考えても、選挙区の候補は「人で決める」という有権者が増えているとの指摘もある。
風頼みの選挙に終始してきた若手候補の多くは今回、党の組織を固めることなど、初めてその実力が問われることになる。

立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党に国民民主党を加えた野党5党が候補者を一本化した選挙区が約7割にのぼることも、接戦区が多い要因のひとつだ。
立憲民主党や共産党などが前回の反省を踏まえ、多くの選挙区で候補者を一本化出来たのは、大きな成果だと言える。
「野党の得票は自民党に入れたくない人の受け皿になれるかどうか」(選挙関係者)との指摘があるように、“反自民票”をひとつにまとめることが小選挙区での選挙を勝ち抜く一番の近道であると言える。
野党間の政策面での温度差が埋まっていないことは課題として残されたままだが、自民党の当選者を減らし、野党勢力を増やすことは間違いなさそうだ。

こうした中で躍進が見込まれるのが「日本維新の会」だ。
これまで長く続いた安倍政権のいわゆる「タカ派路線」から、穏健な岸田政権になったことで保守層の一定の支持が見込まれることに加え、立憲民主党が共産党と共闘したことで野党候補の「左派色」が強まり、中間層の票が流れているとの指摘もある。
関西圏を中心とした人気は相変わらず根強く、比例と合わせて議席を大きく伸ばす見通しだ。

この他、公明党は選挙区での候補を絞り込む従来の選挙戦を展開し、国民民主党、社民党、れいわ、NHK党は議席獲得に全力を挙げている。

「追い風も逆風もない」

今後の選挙戦で焦点になるのは何だろうか。
ある選挙関係者は次のように述べた。

「与党候補にも野党候補にも、追い風もなければ逆風もない」「全く盛り上がらない選挙だし、今後もヤマ場は来ないだろう」つまり幹部の失言などの不測の事態が起きない限りは、候補者一人一人の資質や能力が問われることになるだろう。

別の関係者は自民党の議席について200~260という幅を示した上で「大勢は投票箱を開けてみるまでわからないのでは」と語った。
大きな風もなく、情勢の変化も選挙区次第のため「現時点で大勢は見えない」ということだ。

有権者にとって投票日までのこの1週間は候補者の実力をじっくり見定める、良い機会になるのかもしれない。

政治部
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日本の将来を占う政治の動向。内政問題、外交問題などを幅広く、かつ分かりやすく伝えることをモットーとしております。
総理大臣、官房長官の動向をフォローする官邸クラブ。平河クラブは自民党、公明党を、野党クラブは、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会など野党勢を取材。内閣府担当は、少子化問題から、宇宙、化学問題まで、多岐に渡る分野を、細かくフォローする。外務省クラブは、日々刻々と変化する、外交問題を取材、人事院も取材対象となっている。政界から財界、官界まで、政治部の取材分野は広いと言えます。