愛媛・内子町の山あいにある「みそぎの里」。かつて小学校だった建物から、地域を元気にするいろいろ挑戦が始まっている。

閉校した小学校を地域の集いの場に

名護谷希慧アナウンサー:
内子町の山あい、御祓(みそぎ)地区です。稲刈りも終わりに近づいています。「みそぎの里」は、奥に見えている白い建物です

「みそぎの里」を訪れた名護谷希慧キャスター
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地域おこし協力隊・水谷円香さん:
本来だったらこの小学校に通うはずだった地域の子供たちに、集まって絵を描いてもらいました

旧御祓小学校に飾られた絵

名護谷希慧アナウンサー:
閉校しても、なお地域とつながりが…

2019年にも取材した旧・御祓小学校は、閉校後に地域の人が集える場「みそぎの里」に生まれ変わった。

地域おこし協力隊の水谷さんが中心になって、カフェをオープン。
地域を元気にしていたが、コロナ禍で思うような営業ができなくなった。
そこで、地元の高齢者への手作り弁当の配達を新たに始めたのだ。

地域おこし協力隊・水谷円香さん:
何もできないままだと、せっかく続けてきたものも、なにか止まってしまう感じもしたので

新たな挑戦を始めた地域おこし協力隊・水谷円香さん

和紙と印刷の掛け合わせを体験

過疎の進む御祓地区を盛り上げようと活動する水谷さん。
2021年、学校の空き教室の利用者を募集したところ、3つの教室が新しく生まれ変わった。

名護谷希慧アナウンサー:
今ここで、何をされてるんですか?

ゆるやか文庫・青山優歩さん:
大洲和紙の専門の印刷所ということで

青山さんは、かつての図工室で、伝統工芸品「大洲和紙」専門の印刷所兼貸本屋を営んでいる。

図工室で営まれている印刷所兼貸本屋の「ゆるやか文庫」

凹凸のある大洲和紙と相性がいいという「活版印刷」の機械。

ゆるやか文庫・青山優歩さん:
全部手動です

名護谷希慧アナウンサー:
印刷している時の音がいいですね

ゆるやか文庫・青山優歩さん:
大洲和紙自体が、職人さんが一枚一枚手ですいているので、こちらも一枚一枚手作業でやるっていうのが、なんとなく相性がいい気がしていて

ゆるやか文庫・青山優歩さん

手仕事の良さを感じられる「ゆるやか文庫」では、「印刷」の体験もできる。

ゆるやか文庫・青山優歩さん:
みなさんにも身近に、和紙と印刷の掛け合わせを体験いただくのが一番 魅力を分かっていただけるので、そういう体験ができるといいなと思って

紙の魅力に触れる 世界の手すき紙

みそぎの里には、「紙」に思いを寄せる人がもう1人いる。

名護谷希慧アナウンサー:
ずらっと並んでいるのは何ですか?

kami/かみひとえ 浪江由唯さん:
タイで作られている手すき紙になります

文字がプリントされた異国情緒が漂う紙に、本物の草花をすき込んだものは、何とも柔らかな印象。

異国情緒が漂う手すき紙

「kami/かみひとえ」では、世界の手すき紙を扱っている。

世界の手すき紙を扱う「kami/」(理科準備室)

kami/かみひとえ・浪江由唯さん:
木から紙を作る体験をさせてもらった時に、すごく衝撃を受けて。すごく手間がかかるものが、何千年も続いているのがすごいなって思って。約1年かけて世界各地の紙の工房を回るっていう旅をしていました

浪江由唯さん撮影

並んでいるのは、浪江さんが実際にめぐった各国から取り寄せた、美しく個性的な紙の数々だ。
アクセサリーや財布などの小物も紙でできている。

名護谷希慧アナウンサー:
浪江さんがお気に入りのもの、好きなものは?

kami/かみひとえ・浪江由唯さん:
レースペーパーです

名護谷希慧アナウンサー:
見た目は布というか、レースそのものですね

タイ製のレースペーパー

紙の魅力に触れてほしいと、浪江さんは自由に使える作業場もオープンさせた。
好きな紙を針と糸でつなぎ合わせ、オリジナルの手製本を作ったり、和紙の端切れを新しい紙に再生したり、紙を使ったものづくりを楽しめる。

kami/かみひとえ・浪江由唯さん:
1枚あるだけで、その場の雰囲気が変わったり、誰かに何かを贈るときに、気持ちがより伝えられたりする。薄いけど、すごく大きな存在だなって思って。その存在感そのものに惹かれています

“学校”ならではの懐かしさ漂うコーヒー店

ぽたり珈琲・黒岩健介さん:
基本的に、中深の前後というかそのくらいの、それでも飲みやすい感じにはしています

9月、家庭科室に「ぽたり珈琲」がオープンした。自家焙煎のコーヒーが楽しめる。

自家焙煎のコーヒー店「ぽたり珈琲」(家庭科室)

名護谷希慧アナウンサー:
すっきりですね、しっかり苦みはあるけど、後味すっきりで

ぽたり珈琲・黒岩健介さん:
そのように焙煎してます。珈琲が苦手だったって人も、これなら飲めるって

名護谷希慧アナウンサー:
あっ! これ、給食のかご!

「学校」ならではの懐かしさが漂う、居心地のよい空間だ。

学校の懐かしい雰囲気が漂う

そんな店内には、古いものが好きだという黒岩さんのコレクションがあった。

ぽたり珈琲・黒岩健介さん:
こういうちょっとぎっしりした、古い…メーカーが分からないんですけど。形がかわいいんです。あと、人気があったりするのは、プジョーの「g1」っていって、ミル好きな方はだいたい持ってる。

プジョー製のコーヒーミル「g1」

ぽたり珈琲・黒岩健介さん:
完璧じゃないところがあるというか、何年も使われてきて味わい深くなってるっていうのが、すぐに生活の中に溶け込んでくれるというか

ぽたり珈琲・黒岩健介さん

地域とともに歴史を紡いできた学校に並ぶ古道具。何とも粋な組み合わせだ。

地域おこし協力隊・水谷円香さん:
地域の人にとって、意識的に中心はここだっていうのがあると思うので。(教室が)全部埋まるくらいにぎやかになって、本当にもう、ここがひとつの地域のデパートみたいに

【取材後記】
少子高齢者による過疎が課題の、内子町御祓地区。
そんな地域を盛り上げたいと、閉校した小学校を利用して、コミュニティスペースとして再スタートした「みそぎの里」。
今、さらにパワーアップしていると聞き、2年ぶりに取材に伺いました。

印象的だったのは、空き教室を利用するみなさんが、共通して「地域のためにあった学校だから、地域の人に喜んでもらいたい」という、御祓地区への熱い思いを持っていたこと。
そして、「みそぎの里」の挑戦をおもしろがっていたことです。

テレビ愛媛・名護谷希慧アナウンサー

全員町外からの移住者ですが、地域の人のあたたかさに魅力を感じ、御祓地区を盛り上げる力になりたいという思いで活動しています。

それぞれが自由に好きなことを持ち寄っていて、一見バラバラのようにも見えますが、根底にある「御祓が好き」という思いによって、ひとつになった場所。
まるで学校の文化祭のような、懐かしくエネルギッシュな空間に生まれ変わっていました。

過疎の進む小さな町に、若い世代が集まり、「学校」という特別な場所にあかりをともし続けたいという気持ちの輪が広がっています。
やはり、町を作るのは「人」だと、強く感じました。

空き教室を利用したいという問い合わせはさらにあるそうで、今後ますますパワーアップしていく「みそぎの里」に注目です。

(テレビ愛媛・名護谷希慧アナウンサー)