再評価されている『経木』。板を薄く削ったもので、食べ物を包装するのに長く使われてきた。今、その使い方が広がるだけでなく、いわゆる「SDGs」にかなう取り組みとして、改めて注目されている。

ランチプレートで仕切りに使われているのは…?

「Alps gohan」のランチプレート(長野・松本市)
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彩り豊かなランチプレート。長野・松本市の飲食店「Alps gohan」(アルプスごはん)では、地元の野菜や発酵食品を使った料理を提供している。

客:
不思議とごはんが進むというか、おいしい

ここでお伝えするテーマは、料理ではなく、仕切りに使われているこちらの材料だ。

Alps gohan・金子健一さん:
経木ですね

再び光が当たり始めている「経木」

経木はスギやヒノキの板を薄く削ったもの。日本に伝わった当初、仏教の経典を書くのに使われていたことから、この名が付けられた。

その後、食べ物を包んだり乗せたりするものとして長く利用されてきた。
しかし、プラスチック容器などの出現で生産量は減り、最盛期の昭和初期に比べると、60分の1にまで減少した。

今、ある理由から経木に再び光が当たり始めている。

木工製品を製造・販売している伊那市の『やまとわ』。2020年8月から経木も生産している。

記者リポート:
削りたての経木、持った感じもすごくしっとりしていて生の木という感じです。そして、香りがすごい、いい香りがします。松の匂いが広がってきてとってもいい香りです

県内で経木を生産しているのは、長野市信州新町の業者と「やまとわ」だけ。実はこちらの経木削り機も、信州新町の業者から譲ってもらったもの。既に生産されておらず、51年前のものを修理して使っている。厚さ10センチほどの板をセットして、0.18ミリの薄さになるように削る。

酒井邦芳さん

職人・酒井邦芳さん:
左右測るわけですね、こんなふうにして。これはまあまあ良くできてるんですけど、多少手前が厚いんでこっちのねじをちょっと触るわけです

厚さが均一になるよう刃の出具合を調整する。職人の酒井さんは経木づくりを任されて1年ほどになる。

職人・酒井邦芳さん:
こだわりは、やっぱり刃の切れ味。削れた経木が本当に奇麗につるんつるんになって仕上がるのが一番気持ちがいい。(仕上がった経木に)筋もない、割れもない、それが一番自分にとっては楽しい

アカマツの間伐材を使うことで林を整備する

「やまとわ」の経木はアカマツで作られている。アカマツはすぐ裏にある民有林で伐採されている。

松枯れが広がっていたことから、アカマツを伐採し広葉樹の林に転換する整備契約を地権者と交わしている。

やまとわ・中村博社長:
今100%地元の木だけで木製品を作っているんです

「やまとわ」の中村博社長(52)。家具店で働いていたが、5年前に独立。地元の木を使いたいと思ったのは、森林の荒廃を憂いてのことでした。

やまとわ・中村博社長:
今は、使われないことによって森林は過密状態にあって、不健全な状態になっている。僕は家具屋として、海外の木を使って木製品を作っていることは本当にいいことなのかと

森林を育てるには間伐が必要だ。それをどう利用し、消費してもらうか…
その課題の答えとして見つかったのが、経木だった。

経木の製品

やまとわ・中村博社長:
消費されていくような木製品がないと山の問題って解決できないと考えていて、省資源・枯渇しない・ローエネルギーで生産できて、経木は『スーパースター』だなって思ってます

料理、照明、飾り…経木の使い方はさまざま

冒頭で紹介した「Alps gohan」は、人づてに経木の良さを知り、油切りや落とし蓋にも活用している。

Alps gohan・金子健一さん:
キッチンペーパーだと接着している部分が常にあるんで、カリっとしない。(経木は)揚げた断面が接着しないので、その分 カリっとあがります。時間が経っても、さっくりしてる

細長く切って丸めた仕切りは、料理の演出にも役立つという。

Alps gohan・金子健一さん:
これ(経木)が盛り付けのアクセントになるんですよね。華やかな感じにもなるし、『これなに?』みたいになるので

客:
抵抗がなくて、おいしそうに見えると思います。最近プラゴミ減らそうとか、そういうのにも生かしていけると思うし、見た目も機能性のところで考えても、すごく素敵な取り組みだなと思います

「やまとわ」は幅広い使い方も提案している。優しい明かりを灯す経木の照明。フラワーアレンジメント風に飾ることもできる。

フラワーアレンジメント風に飾ることも

地元自治体も経木に注目 SDGsが追い風

そして、こちらは伊那市などと共同開発したメモ帳。経木の原点に帰ったような商品だ。

伊那市は、国連が掲げる持続可能な開発目標「SDGs」の達成に向けた取り組みを進めている。伊那市の約8割は森林。森林資源を次世代に残し、加えてプラスチックごみの削減につながるとして、森林整備とセットの「やまとわ」の経木づくりに賛同し、メモ帳の開発を一緒に進めてきた。

伊那市農林部 50年の森林推進室・三宅慎平主任:
一見、使い捨てなので、もったいないんじゃないかって見方もあると思う。木材、山の森林はどんどん育っていって、いつか枯れてしまうもの。適切に活用していく循環型の資源として、活用していくことは大事だと思う

SDGsが追い風となっている経木。中村社長は、もっと身近なものになって欲しいと願っている。

やまとわ・中村博社長:
(経木は)各ご家庭の食卓の上まで届く木製品だなって思うので、『この木って一体どこから来たんだろう』ということを考えてくれるきっかけになる。このぺらぺらした一枚の紙みたいな素材なんですけど、その辺が『スーパースター』かなって

(長野放送)