岸田文雄自民党総裁が第100代内閣総理大臣に指名され、新たな内閣を発足させた。初入閣が13人、また衆院当選3回の若手議員を閣僚に抜擢する一方、重要ポストは主要派閥からの登用となった。

BSフジLIVE「プライムニュース」では、橋下徹元大阪府知事と政界の舞台裏を熟知する橋本五郎氏をゲストに迎え、人事の狙いを徹底検証。さらに総選挙の行方を展望した。

閣僚人事の裏の狙いは「安倍色を消す」こと

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新美有加キャスター:
岸田新内閣の顔ぶれ。閣僚20人のうち初入閣が13人、続投や再登板が7人という布陣です。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
今回の岸田首相の動きは、テンポがすごく良い。それをメディアが追っかける形。安倍さんの時のようなテンポを感じる。
顔ぶれではなくやった仕事で評価しないといけないが、一般的に言えば、大臣として適格期数になったから各派閥からの要請で入ったパターンと、自分のやりたいことのために欲しい人材をとるパターンがある。どちらのパターンなのかということをメディアも伝えて欲しい。あとは国民が評価する。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
すぐ派閥均衡と言われるが、意味のない批判。自民党には派閥があるんだから、うまくバランスを取らなければ安定しない。そして、誰でも最初は初入閣。橋下さんがおっしゃるようにやっぱり中身を見ないと。
若手・中堅も起用するという公約だったためこの起用になっているが、公約の陰に何があったか。それは安倍色を消すこと。とにかく「安倍・菅政権はひどいことをやったからそれを継続する政権はひどい政治だ」という、ある種のレッテル貼りがある。それを避けるため。新型コロナに対応する大臣も3人替えた。安倍さんに近い萩生田さんも一度は官房長官にという話があったが、あまりに安倍色が濃すぎるためやめた。福田達夫総務会長も、松野博一官房長官も安倍系じゃない。当然ながら安倍さんは不満でしょう。

反町理キャスター:
とはいえ、今回の総裁選での安倍さんの目標として、河野さんを総理にしないこと、高市さんを担いで保守票を掘り起こすこと。それらは達成できましたよね。高市さんも政調会長になった。閣僚人事に多少不満はあっても、全体でいえば安倍さんは個人的に大黒字なのでは。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
何よりの黒字は、政治家にとって一番大切な存在感、影響力。安倍さんが動くことで高市さんもあれほど得票した。野党は安倍政治の継承が問題だと言っているが、辞めて1年以上経つのに安倍さんの影響力を問題にすることで、いたずらに安倍さんの評価を高めている。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
自分に近い人が大臣になったかどうかで、安倍さんや麻生さんは一喜一憂しないですよ。

広報本部長就任は河野氏にとってチャンスとも言える

新美有加キャスター:
国民の関心が高いコロナ関連のポストは、担当の3大臣が全員交代となりました。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
この人事はいいのだが、ちょっと残念なのは、河野さんを厚労相にすれば厚労省改革の意図がはっきりわかった。あえて敗れた河野さんにその重責を担わせる方法はあった。だが年金問題の発言があって、その方法はなくなった。

反町理キャスター:
河野さんにとってはよかったかも? 厚労相となると、ものすごいプレッシャーがかかるポストで「さあお前、自慢の突破力と発信力でこの役所をなんとかしろ」となっていた。結果的に、広報本部長という格下げとも言われるポジションになったが。

河野太郎 自民党広報本部長
河野太郎 自民党広報本部長

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
干したとも言われるが、河野さんにチャンスを与えたともいえる。下積みをやりながら、広報本部長は選挙に向けて目立つことができる。岸田さんはそれを期待しているのでは。厚労相はある意味、汚れ役。評価がすぐ出てしまい、もっとキツいかもしれない。

反町理キャスター:
岸田さんが河野さんに対して、君の発信力を使って僕を発信せよと命じているように見える。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
それほど広報能力は優れている。河野さん自身がいわば改革の象徴的な存在。彼は表に出ないとあまり意味がない。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
ツイッターとかYouTube、ネットでの発信もうまくやっている。

岸田首相の就任会見。政策は具体性不足も、選挙日程は大胆な決断

岸田文雄 内閣総理大臣
岸田文雄 内閣総理大臣

反町理キャスター:
岸田首相の就任会見がありました。印象は。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
「信頼と共感」は、おそらく池田勇人内閣の「寛容と忍耐」を少し変えた感じ。「聞く力」も含め、取り組む姿勢について気持ちの表れがあった。それから、コロナ後に目指すという「新しい資本主義」について、安倍・菅内閣との違いを出すために強調したかったのでは。

反町理キャスター:
総選挙の日程についての話があった。10月14日に解散、19日に公示、31日に投開票。そこで「この岸田にお任せいただけるのかどうか」という言いぶり。いきなりトーンが変わった。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
「どうだ」という感じでしたね。この日程についてはまたマスコミの先を行っている。みんな総選挙は11月7日と頭に描いていたが、それを変えた。解散後公示までにはある程度の期間が必要だが、そうしているうちに新鮮さがなくなってしまう。せっかく収束に向かっているコロナもぶり返したら元も子もない。そこで、1週間早い準備は可能だとなった。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
「新時代共創内閣」や「信頼と共感」は政治の言葉ではなく、文学の言葉。岸田首相がどこをセンターピンに据えて権力を使うのかはっきり言って欲しい。それが見えなかった。

反町理キャスター:
コロナ感染の不安に対して、検査の拡充など対応策の全体像を取りまとめるように3大臣に指示したという部分は。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長
橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
これまでもずっと言われてきたこと。いざというときには政治が法律を作り、強制力を持たせますと言ってほしかった。総理にしか使えない最高権力をどこに使うのか。分配の話でいえば超過累進課税のパーセンテージなど考えられるが、物足りなさを感じた。ぶち上げるのではなく、まず調整というのが岸田さんのスタイルだが、所信表明演説でさらに踏み込むのでは。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
就任演説の内容は総論になるものだが、その総論の背後に具体論があるのかは早晩わかります。早く示さないと。

立憲民主党は批判の姿勢を改め価値観の違いを示せば、国民の選択肢に

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員
橋本五郎 読売新聞 特別編集委員

新美有加キャスター:
岸田首相が総選挙のスケジュールを明言。何が争点になっていくのでしょうか。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
野党はちょっとやりにくくなった。アベノミクスの最大の問題として、格差が広がったと言ってきたが、岸田首相の「成長と分配」はずいぶん野党の主張を取り入れている感じになる。なかなか安倍政治の継承だと批判できない。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
岸田首相もおそらく、野党が言うようなことは飲み込んでいく。野党が安倍さん・菅さんの政治を前提にしていれば飲み込まれてしまう。だが、立憲民主党が今出している政策は、国民に対する選択肢としては有意義だと思う。

反町理キャスター:
政権公約は第8弾まで出ている。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
賛否はあります。個人的に賛同できないところもありますが、少なくとも安倍・菅首相がやってきた自民党政治との対立軸になることを打ち出している。どちらかに100%賛成ということは、普通の国民にはあり得ない。この点については自民党に賛成、これについては立憲民主党に賛成という形で、最後はどっちだと思わせるような政策が出てきている。
特に子ども関係の予算を増やすことについては立憲民主党に大賛成。自民党では野田聖子さんがずっと言っていたこと。ただいつも言っているが、野党間で一度、予備選を行えばいいのだが。

反町理キャスター:
立憲民主党の枝野代表が自民党に対して、表紙が変わっても自民党の本質は変わらないと批判。この言いぶりで、2つの政治集団が政権を争う戦いの構図になるか。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
立憲民主党は、この政策をパッケージとして出せばそれなりに。財源はあるということを示す必要があるが。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
政策は多分、かなり重なってくる。ならば価値観的なところで明確に色の違いを示す。国民の自由選択にどこまで重きを置くかというところでは、自民党と野党にかなり差が出る。

反町理キャスター:
だが、この枝野代表の批判は価値観の話ではなく、党運営のスタイルや安倍・菅政治の継承者たる岸田内閣を批判しているように見える。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
こういう批判はダメ。やめた方がいい。僕が予備選をしろと言うのは、この人たちが世の中の空気を全然読めていないから。こういうメッセージで国民がついてくると思っているのかな。それで支持率は低い。根っこの価値観で私達にはこういう違いがあるんですよ、っていうことを出さないと。こんなん、悪口言っているだけですよ、こんなん。

BSフジLIVE「プライムニュース」10月4日放送