「握手した手を離してくれない」「今から会えないかと夜中に連絡がある」地方女性議員が受けるハラスメントの実態
女性活躍時代のジレンマ

「握手した手を離してくれない」「今から会えないかと夜中に連絡がある」地方女性議員が受けるハラスメントの実態

岸田花子
岸田花子
国内

「握手をした手をなかなか放してくれない」
「電話番号を教えてほしいと言われる」
「今から会えないかと夜中に連絡がある」

これらはすべて女性地方議員が有権者や支援者から受けた話である。ジェンダー指数が156か国中120位のジェンダー平等後進国である日本では、女性政治家を増やすことは大きな課題だ。

世界のジェンダーギャップランキングで日本は120位:内閣府HPより
(出典:WEF Global Gender Gap Report 2021)
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ところが、女性が政治家を目指すときには幾つもの大きな壁があり、女性議員が多方面から受けるハラスメントは壁の一つである。2021年5月に女性議員・候補者のサポートするStand by Womenという団体を立ち上げた濵田真里さんに、話を聞いた。

Stand by Women  濵田真里さん

地方女性議員が受けているハラスメントの実態

濱田さんは2021年4月~6月に地方議会の女性議員60名にヒアリング調査を行った。そこには信じられないハラスメントの体験談があった。

ーー ハラスメントを受けている女性議員は多いのでしょうか?

濵田氏:ヒアリングをしたのは、調査に協力してくださる女性議員を募って応じてくださった方だったということはありますが、60名全員がハラスメントを受けていました。中には、ヒアリングの会話をしている中で、自分の受けていたものがハラスメントだったということに気づく方もいらっしゃいました。

自作のポエムが頻繁に送られてくることも

ーー調査結果の詳細は現在まとめているとのことですが、一般の有権者からのハラスメントの実例を教えてください。

濵田氏: 一般の有権者が、女性議員を性的対象、恋愛対象として見ているのではないかというストーカー的な事例が多く報告されています。
「SNSで知った街頭演説の予定を元に議員を追いかけ回し、握手と称して手を触られ続けた」(20~30代女性議員複数名)
「質問されて結婚していると答えると『じゃあ応援しない』と言われた」(20~40代女性議員複数名)
「自分の顔をコラージュした性的な写真や文章が送られてきた」(20代女性議員)
「年齢や容姿、身体についてSNSで言及された」(20~50代女性議員複数名)
「街頭演説の際やSNS上で、『応援しているからLINEを教えて』と言われる(20~30代女性議員複数名)
「『自分のTwitterをフォローしてほしい』と言われる」(20~30代女性議員複数名)
「『自宅を教えてほしい』と言われる」(20~40代女性議員複数名)
「『つきあってほしい』と言われた」(20~30代女性議員複数名)
「『エッチしたいね』と言われた」(20~30代女性議員複数名)
「突然自宅に来てしまった」(20~40代女性議員複数名)
「街頭演説中に食べかけのお弁当をプレゼントされた」(30代女性議員)

また、ダイレクトメッセージやメールに日記やポエムが頻繁に送られるということも20~40代女性議員複数名から報告されています。自分が今日したことや感じたことを詳細に語りかけるように送ってきます。中には自分の詳細なプロフィールや先祖の話などを送ってくる方も。議員を脅したり傷つけたりするような内容ではなくても、長期間継続して送られてくることで、積み重ねが議員の大きなストレスになると聞きました。

ーー男性有権者から女性地方議員へのストーカー的なハラスメント以外には、どのようなものがありますか?

濱田氏: 「発言の揚げ足取りをされた」(20~50代女性議員複数名)
「未熟さを指摘されて『政治をわかっていない』などと説教を受けた」(20~40代女性議員複数名)
「子どものいる議員が母親の役割を果たしていないと非難された」(30~40代女性議員複数名)
「強い口調で怒鳴られ、自分や家族の身の危険を感じた」(20~40代女性議員複数名)などがあります。

加害者には男性が圧倒的に多く、少数ですが女性からの場合もあります。また、一般の有権者や支援者のほかに、「同僚男性議員からから会議室で体を触られた」(30代女性議員)「区役所職員にデマを流された」(30代女性議員)といった一緒に働く方からのハラスメントも報告されています。

ーーハラスメントを受けた女性議員はどのような影響を受けるのでしょうか。

濵田氏:当然ですが、ヒアリングでは精神的に悪影響を受けると聞きました。30代女性議員は、「死ね」というメッセージを送られてから外出に不安を感じるようになり、普段は帽子を目深に被り、誰にもわからないような格好で出歩いている、ストーカー行為を恐れてSNSで街頭演説等の情報を発信しなくなった、と言います。政治家は知名度が大切なはずなのにすっかり委縮させられて、ハラスメントが政治のキャリアを継続する壁になっていると言わざるを得ません。

公人は何をされても我慢しなければいけないのか

ーーひどい被害ですが、表明する、法的に訴えるなどの対策はとれないのでしょうか?

濵田氏:20代女性議員からは「メッセージを受け取っているだけで身体的な被害を受けたわけではないので、警察に相談しにくい」と、30代女性議員からは「周りにこういったハラスメントの話をしても、『それくらい我慢しろ』と言われてしまう」と聞きました。

被害を表明していないことがほとんどですが、訴えることが議員としてのマイナス評価に繋がると女性議員が考えていると見受けられます。議員という立場は、政治家としてたくましさ、冷静さ、強さも示す必要があり、望ましくない事案で注目を浴びること自体、政治家としてマイナスとみなされます。

地方議員に対する行政的な支援が少なく、訴えた場合の二次被害のリスクもあります。公人は我慢するものだという空気や、被害者を責める空気も声をあげられない要因でしょう。

ーー女性地方議員が男性からハラスメント被害を受ける背景にあるものはどんなことだと考えていますか?

濱田氏:加害者の男性が、女性地方議員を性的嗜好の対象として見ていると感じます。個人的につながりを持つために、プライベートに入り込もうとしてくることが特徴です。選挙ポスターには「あなたの声をきかせてください」といったメッセージがあることが多いですが、女性議員を無料で会えるアイドル、何を言ってもいい、ケアしてくれる相手と捉えているのかもしれません。

女性政治家が受けるハラスメントや暴力は、女性が政治家になるために払わざるを得ないコストのようなものとして捉えられることが多く見受けられますが、背景にはジェンダーバイアスや女性に対する差別構造があります。

それでも議員を続ける理由

ハラスメントを受けるリスクがある中で、女性地方議員はどんなモチベーションで仕事をしているのだろうか。船橋市議会で当選1期目無所属の佐藤つぐみ議員に聞いた。

ーーハラスメントやSNSでの暴言を受けることはありますか?それでも議員を続けるのはなぜですか?

佐藤氏:ハラスメントを受けたり、街頭演説で怒鳴られたりすることはあります。でも正当でない批判は、その方の気持ちのはけ口として使われているように感じているので気にしないようにしています。誰かのために動いている方の声を積極的にお聞きしたいと考えています。同じ言葉でも人によって捉え方が違うと思いまずが、私はマイナスに対して鈍感な方だと自覚しています。遠回しに嫌味を伝えられることがあるのですが、言葉の通りに受け取っています。大抵のことは、何を言われても気になりません。

船橋市議会議員 佐藤つぐみ氏

女性地方議員サポートの動き

ーー濱田さんが立ち上げた女性議員・候補者のサポートするStand by Womenではどのような活動をしているのでしょうか。

濱田氏:国会議員と違って地方議員の多くは秘書などがおらず、自らに寄せられる市民の要望やトラブルにひとりで対応しなければならない状況です。Stand by Womenでは、学生、社会人、研究者のボランティアで、数名の女性議員のサポートをしています。具体的には、4人一組で1名の議員のオンラインハラスメントの監視をしています。ハラスメントの相談を受けるスキルはトレーニングが必要となり、誰にでもできるものではありません。非常に機微な個人情報を扱いますし、酷いハラスメントは見るだけでストレスを感じてしまうからです。

ーー公的機関の行政的な支援はないのでしょうか。

濱田氏:2021年6月には、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律の改正案が施行され、その中で、国・地方公共団体がセクハラ・マタハラ等、ハラスメント防止のための研修の実施や相談体制の整備などを講ずるように定められました。今後具体的な体制が取られることが期待されています。

 

女性議員が増えることは政策の優先順位に影響があると言われている。2021年秋に行われた自民党総裁選挙では4名の立候補者のうち2名が女性になったことで、女性や生活に関する議論に注目が集まる結果になった。選挙活動でのハラスメントを防いで、地方議員に女性が増えることの意義は小さくない。2021年秋に行われる衆院選では、選挙活動中のハラスメント防止策にも注目したい。

【執筆:フジテレビ メディアソリューション 岸田花子】

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