世界経済フォーラムが2021年3月に発表したジェンダーギャップ指数では日本が156カ国中120位であるが、中でも政治分野は147位という低さである。

2018年に政治分野男女共同参画法、通称候補者男女均等法が成立、2021年6月に改正法案が国会で成立した。年内に行われる衆院選で政治分野での男女格差解消は進むのだろうか。自民党総裁選への出馬の意欲を示した野田聖子議員らが出席し、8月17日に行われた超党派女性議員による「クオータ制実現に向けての勉強会」第4回目を取材し、女性国会議員増加のハードルと対応策について調べてみた。

普段、政治の世界を取材していない筆者が見た政治の現場について述べる。

「女性議員を増やす」という党を超えた共通課題への取組

勉強会に出席した国会議員は、自民党・野田聖子議員、立憲民主党・辻元清美議員、公明党・古屋範子議員、日本維新の会・石井苗子議員、日本共産党・田村智子議員、国民民主党・矢田わか子議員、社会民主党・福島みずほ議員。

そのほか、勉強会・座長の田原総一朗氏、勉強会・事務局長の長野智子氏、専門家として小室淑恵氏が出席した。

選挙の立候補者が増えることが、女性議員を増やす第一歩であるが、勉強会では小選挙区の候補者になることに最初のハードルがあるという報告があった。

衆議院第一議員会館で行われた「クオータ制実現に向けての勉強会」
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野田議員:
「小選挙区では基本的に現職優先の考え方があり、動きが小さくなる上に、引退する議員がいても立候補者を選ぶ地方の審査会が男ばかりで女性が選ばれにくい。」

福島議員:
「日本は供託金がOECD加盟国の中で最も高い(※注)。政党が出すとはいえ、例えばシングルマザーなど、お金のない人が選挙に出にくい」

(※注)参考資料:列国議会同盟(IPU)PARLINEdetabaseより)

選挙制度を変えることが女性議員を増やすことにつながるかどうかは検証が必要だが、党で候補者を選ぶ意思決定に女性が参加することは効果が大きいと思われる。改正候補者男女均等法で政党に課されている候補者の選定方法の改善と、候補者の人材育成の促進を進め、各党が男性だけでない多様な目線で候補者を選ぶよう取り組むことを期待したい。

過酷な選挙活動と国会の働き方

出席議員からは、選挙活動の過酷さについて発言が多数聞かれた。

辻元議員:
「1人しか当選しない小選挙区の選挙は、熾烈などぶ板選挙(街頭を徒歩で巡り握手をするなどの活動)をする必要があるが女性には向かない。女性であるがゆえに受ける票ハラ、セクハラ、パワハラはほぼ全ての女性候補者が受けた経験があり、立候補を考える障害になっている。」

矢田議員:
「参議院比例の全国区の選挙活動は『残酷区』と呼ばれものすごく体力が必要、家庭も放ったらかしになるので女性にはまず無理。朝夕夜の駅立ちも体力勝負でないとやっていけない。改善の必要がある。」

古屋議員:
「女性議員を増やすためには、国会議員の働き方改革が必要。」

改正候補者男女均等法では、政党に選挙活動中のセクハラ・マタハラ等対策の促進を課しており、各党が相談窓口を作るなどして対応することが期待される。矢田議員からは、国民民主党の女性候補者向けの相談窓口設置、支援金増額の対応が紹介された。石井議員からは、日本維新の会が全国の女性議員ネットワークを作って勉強会をしているという報告があった。

当選後の国会議員の働き方も過酷である。勉強会座長の田原総一朗氏の「女性議員を増やすためには、国会議員の残業をなくすことだ」という発言に、「何が残業なのか、もうわからない」と笑いが起きるほど、長時間労働が常態化している。出産・子育てがある女性議員は両立が大きな課題だ。

選挙が過酷で国会議員が多忙なのは、果たして「あたりまえ」なのだろうか。出席議員からは、「選挙のあり方や国会議員の働き方に関して、世論を形成しながら変えて行かなければいけない」という意見があがった。

改正候補者男女均等法では、育児・介護の欠席事由の拡大、育児との両立対策といった環境整備を国が具体的に進めるよう定められている。小室氏からは、「男女限らず全国会議員に勤務間インターバル等の導入を検討し、『立候補することが家庭を捨てることではない』という状態にすべきではないか」というコメントがあった。

出産・育児がある女性議員が働きやすくするため、国会のオンライン投票の必要性は、出席議員で一致した意見だった。

しかし、衆議院規則第148条には「表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない」と定められており、実質的にオンライン投票が認められていない。

憲法が制定された時代より技術革新が進み、多くの企業においてオンラインで意思決定が進められている現状や、コロナ感染防止のために政府が国民にテレワークを強く推奨している現状を鑑みれば、検討する余地はあるのではないだろうか。

国会の根回し文化が課題

改正候補者男女均等法は国会閉会間際の2021年6月に成立したが、超党派の女性議員が協力して各政党内で成立に向けて尽力した、という話が挙げられ、国会の根回し文化についても意見が挙がった。

「根回し文化はある意味無駄」と語る野田氏

野田議員:
「女性議員が党内部の議員100名ほどに根回しのため説明をしてまわった。ある意味無駄なことだが、ちゃんとやったので成立した。そういうことをしないと法律が通らないのはどうなのか。」

矢田議員:
「政局中心の政治の世界では女性の活躍が難しいが、コロナの影響で、夜の飲み会が減り、飲み会の場で何かをちょっと決めようか、ということがなくなっていている。コロナを機に男性独特の根回し文化の世界を変えていかないと、女性の参画は増えない」

辻元議員:
「国対委員会は男同士が握りあう古い権威の世界。私はかつて国対委員長をやっていたが、女はわかっていないので融通が利かないという空気が漂った。国対委員が女性同士だったら、国対のやりとりはもっと実務的になると思う。」
「候補者男女均等法は世の中の色々な問題を解決する基礎になる法案だと説明しても、なかなか理解してもらえず、国対委員会での優先度はなかなか上がらなかった。」

女性議員が増えれば政策の優先順位が変わる!

女性議員を増やす意義についても意見があった。

野田議員:
「選択的夫婦別姓、LGBT法案などに反対している男性議員の中には、これらが自民の票を失う法案だろうと言う議員もいる。いえ反対で、これをやらないと国際的にも孤立しますよ、と言っても全然だめだった。」

田村議員:
「女性議員を増やす議論では、出産・育児で休まなければいけないマイナス面で見られてしまうが、国民の意見を政策に反映できるというブラス面に注目すべき。#Me Too運動やフラワーデモといった今まで表に出ていなかった女性の苦しみの問題や、選択的夫婦別姓の問題など議会にいかされるには、当事者たる女性が議会に増えるしかない。森氏が五輪会長を解任されるほどのムーブメントが起きている。今まで当たり前だと思って黙っていたが違うんじゃないかという気づきが、多くの女性に広がっていて、それに政党がどう応えるかをアピールする必要がある」

数値達成の義務化であるクオータ制や、各党の女性候補者割合の目標数値公開は改正候補者男女均等法に盛り込まれなかったが、「当該政党等に所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数について 目標を定める等、自主的に取り組むよう努めるものとする。」と定められている。女性候補者が出馬表明した自民党総裁選の行方、要注目だ。

今回は、女性議員がみた政界の課題を取材したが、性差関係なく参加できる仕組みが求められる。

【執筆:フジテレビ ニュース総局メディアソリューション部 岸田花子】