日本酒離れが進む中、コロナ禍で打撃を受ける日本酒業界。局面を打開しようと、鳥取県湯梨浜町の老舗酒造がフルーティな新商品を開発した。伝統を一新、社運をかけた挑戦を取材した。

清酒の出荷量は年々減少

週末の居酒屋で、日本酒について聞いてみると…。

――普段、日本酒を飲みますか?

男性客:
あまり飲まないですね。日本酒が嫌いなわけではないけど、ビールが好きなので

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女性客:
私は大好きです。

――必ず飲む?

女性客:
でも飲むのは控えてます。翌日にひびくから…

近年顕著な日本酒離れ。ビールやカクテルなどの台頭で、清酒の出荷量はピーク時の昭和48年に比べ、令和元年は3割以下にまで落ち込んでいる。

フルーティーな5種類の日本酒 そのお味は?

本田航太記者:
湯梨浜町の東郷湖から、道を1つ挟んだ場所にある老舗の酒造会社。社運をかけた新商品の開発に取り組んでいます

こうした中、8月2日から販売が始まった日本酒「星取 PURPLE STAR」(2750円、720ml)。「鳥取県で一番星の企業になれるように」と命名された。

福羅酒造・福羅隆元社長:
全部で5種類あります

「星取」シリーズは、ライチ・梨・白桃・あんず・メロンの5つの風味で展開。デザインもおしゃれに工夫した。

日本酒はちょっと苦手だという本田記者が試飲してみると…。

本田航太記者:
メロンのような甘い香りがします。口当たりがやわらかく、ジュースのようで非常に飲みやすいです。後味もスッキリしていて、とても美味しいです

「星取」シリーズには果物は一切使われておらず、風味を出すための添加物も入っていない。酒の原料となる酵母の温度や湿度を細かく管理することで、果物のような香りを再現することに成功したという。

職人の感覚ではなく、温度と湿度をデータで管理

福羅隆元社長は、福羅酒造の5代目。明治時代から130年続く伝統を守り続けてきた。しかし、売上は近年右肩下がりに。コロナも追い打ちをかけ、2020年度はピーク時の4分の1に落ち込んだ。

福羅酒造・福羅隆元社長:
もう社運をかけて、新しいことに取り組まなければならない。方向性を180度変える。そのくらいの覚悟がないとやっていけないと思いました

そこで福羅社長は、新規顧客を開拓しようと「甘口」の日本酒を考案。伝統的な辛口にこだわるプライドを捨てた新たな挑戦だった。

福羅酒造・社員:
これが温度と湿度をリアルタイムで管理できるシステムです。これまでは職人がさじ加減で管理していました

造り方も刷新。杜氏による職人の感覚ではなく、徹底的にデータでの管理をスタート。

こうして開発した「星取」シリーズは、鳥取県内の百貨店や酒屋で8月に発売され、売れ行きは好調だという。

しかし…。

福羅酒造・福羅隆元社長:
まだ究極とは言えない、進化中。時代に取り残されないように、追いついていけるように、試行錯誤して改善していきたい。「日本酒売れない」って私自身が思ったら、それこそ先がない

福羅酒造・福羅隆元社長:
お客さんはもっと美味しいものを求められると思うので、その期待に応えたいと思います

老舗酒造が生き残りをかけた「星取」シリーズ。一番星として輝きを取り戻すことができるのか、注目だ。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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