卵を産むために改良された「採卵鶏」。卵を産むのはメスだけだが、卵を産むことができないオスは、そのほとんどが生まれてすぐに処分される。この命を無駄にせず、私たちの食に活用しようという取り組みがある。

年間10万羽のオスのヒナが処分

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沖縄県中城村にある「ともや農場」代表の具志堅真さん。3年前に脱サラして沖縄に移住、妻の実家が経営している農場を継ぐことになった。

具志堅さんの1日は、鶏たちの餌やりから始まる。

具志堅さんの農場で飼育されているのは、「採卵鶏」と呼ばれる卵を産むために改良された鶏。メスは平均で1日に1個卵を産み落とすが、卵を産むことができないオスはどうなっているのか…。

ともや農場 具志堅真 代表:
あまり知られていない事実というか、オスは卵を産まないので、孵化してオスかメスかの判別をされて、オスはすぐに処分されているというのが現状です

卵を産まないオスを業界では「抜き雄」と呼び、具志堅さんが飼育している「ボリスブラウン」という茶色の卵を産む採卵鶏だけでも、県内で年間10万羽が処分されている。

こうした現状を知った具志堅さんは、この命を無駄にしたくないという思いから、ある取り組みに挑戦している。

肉質が固く食用に向かない採卵鶏をどう活用するか

ともや農場 具志堅真 代表:
抜き雄を食肉用にする試験をずっと繰り返していて、それが実現しそうかなというところまで来ました

協同商会 稲嶺盛久 代表:
抜き雄の活用を国内でやっている例は多分ない。製品化に至らなかったんですよ、難しい・・・

中城村で家畜飼料の製造をしている稲嶺盛久さん。採卵鶏のオスを活用するという取り組みの発案者で、具志堅さんをサポートしている。

これまでにもオスのヒナを活用するアイディアはあったが、もともと肉質が固く食用に向かない採卵鶏を食肉用に飼育することは困難で、実行には至っていなかった。

エサの改良・機械導入など費用は数千万円に

協同商会 稲嶺盛久 代表:
比嘉先生という方がいて、先生が配合した餌を具志堅さんに持って行って頑張ってもらっている。これを突破口に農家さんの生活がもう少し良くなるんじゃないかなと

稲嶺さんが「先生」と呼ぶのは、家畜飼料の製造や研究に60年以上も携わる比嘉正雄さん。比嘉さんの自宅には、家畜飼料に必要な様々な原料がずらりと並んでいる。

比嘉正雄さん:
遺伝的に抜き雄は、太らないようにされているんです。それを肥育するのは非常に難しい。標準の配合方法を無視して、自分の培った技術でやっているんです

ともや農場 具志堅真 代表:
最初は細かったんですよ。それを比嘉先生に報告して、餌の配合など細かい調整をしてもらいながら、だいたい大きいので2キロを超えていますね

比嘉さんと稲嶺さん、そして具志堅さんは、試行錯誤を重ね約2年間かけて餌の開発に取り組んだ。その結果、採卵鶏のオスの平均体重が1キロ前後なのに対し、具志堅さんが育てたオスはその2倍の2キロになるまで成長した。

そうしてできたのがこちらソーセージ。生まれてすぐに処分されるはずだった抜き雄を活用した、鶏肉100%のソーセージだ。

ただ、餌の改良や機械の導入などでかかった費用はすでに数千万円に上り、まだ最終的な目標である商品化には至っていない。そこで具志堅さんは、商品化に向けた費用を支援してもらおうとクラウドファンディングを始めた。

日本から抜き雄の処分を無くし、失われる命を食に繋ぐ

ともや農場 具志堅真 代表:
抜き雄というものを知って、最終的にはこういう形になって人の役に立てる、人の命につないでいける価値…そういうものではないかと

「日本から抜き雄の処分を無くしたい」と話す具志堅さんは、この取り組みで人間の動物に対する意識を変えることができると信じている。

ともや農場 具志堅真 代表:
生まれてすぐ殺されてしまうのではなく、この子たちが3カ月間でも光を浴びたり、水を飲んだり、仲間と喧嘩したり、餌を食べたりという、そういう時間を与えられるのかなと。それから、命を無駄にしないで人間が動物たちに生かされている、ということの改めて意識付けになるかなと思います

失われる命を食に繋ぎ、そのありがたさを私たちに伝えてくれる取り組み。ソーセージはまだ商品化に至ってないが、将来的には薬膳スープなどの開発も見据えている。

(沖縄テレビ)