玉城デニー沖縄県知事を支える県政与党勢力、いわゆる「オール沖縄勢力」への不支持を金秀グループの呉屋守將会長が表明し、波紋を呼んでいる。オール沖縄とは一体何だったのか…。勢力の中心にいた前の知事、翁長雄志氏との関りを振り返る。

革新と保守が党派を超え協力した「オール沖縄」

沖縄テレビの取材に応じた金秀グループの呉屋守將会長。目前に控える衆議院選挙でオール沖縄勢力への不支持を表明し、活動をこう振り返った。

金秀グループ 呉屋守將会長:
翁長知事を中心とする幅広い辺野古新基地建設反対の一つムーブメント。すべて翁長知事が先頭に立って、その指導力のもとに集まったということでやっていました

2021年9月17日
2021年9月17日
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故・翁長雄志前知事(2014年):
県民の心を一つにして、オール沖縄。イデオロギーよりアイデンティティ

2014年10月
2014年10月

2014年の県知事選挙で「普天間基地の辺野古への移設反対」を訴えて当選した翁長前知事。

選挙戦は自民・公明が推す現職に対して、革新と保守が党派を超えて協力し、さらに一部の経済界が翁長前知事を支援した。この枠組みがこそが「オール沖縄」勢力だ。

革新と保守が党派を超えて協力したオール沖縄勢力
革新と保守が党派を超えて協力したオール沖縄勢力

選挙戦の際、翁長前知事が「三顧の礼」で協力を仰いだ人物がいた。嘉手納町長を5期務め、県内で保守の重鎮と知られる宮城篤実さんだ。

元嘉手納町長 宮城篤実さん:
翁長さんに「知事選挙に立候補して組織を新たに作ろうと思っている。その組織のトップになってくれ」と言われた。ウチナーンチュ(沖縄県民)のアイデンティティを確立するために、力を貸してほしいと。私は純粋な人物だったと思うね

2021年9月20日
2021年9月20日

”辺野古移設反対”の一点で団結

2013年、オスプレイの配備反対や普天間基地の辺野古への移設反対を政府に求め、県内41全ての市町村長が建白書に署名した。本土復帰最大規模の要請行動がオール沖縄の源流となり、その中心にいたのが当時、那覇市長だった翁長前知事だ。

2013年
2013年

元嘉手納町長 宮城篤実さん:
当時のオール沖縄の姿勢は翁長雄志を中心にして、私は保守も革新もある程度、了解の上で成り立っていると思う

「辺野古移設の反対」という一点でまとまったオール沖縄という枠組み。

知事選では移設に反対の立場をとる革新勢力と共に、かつて自民党の県議会議員で議長も歴任した仲里利信さん、金秀やかりゆしグループなど保守・経済界が顔を連ねた。

さらに2014年の衆議院議員選挙では、オール沖縄が支援する候補者が全ての選挙区で自民・公明の候補者を破り県内を席巻した。

故・翁長雄志前知事(2015年):
全ての選挙で、辺野古新基地反対という圧倒的な民意が示されています。沖縄は自ら基地を提供したことは一度もありません

2015年 安倍首相(当時)との初会談
2015年 安倍首相(当時)との初会談

嘉手納町長 宮城篤実さん:
多くの人が共鳴したのは、ウチナーンチュのアイデンティティをしっかり探ろうというあの姿勢。誰もが共鳴し得る内容だったわけよ

経済界が離脱、翁長前知事の死

2018年の名護市長選挙で辺野古移設に反対する当時の現職が敗北すると、金秀グループの呉屋会長がオール沖縄会議の共同代表を辞任。

金秀グループ 呉屋守將会長:
共同代表を辞任することによってですね、もう一度原点に立ち返って、このオール沖縄が何だったのかを考える機会にしたいなと思っています

2018年3月
2018年3月

さらに、金秀グループと同じく組織の中心的な役割を担っていたかりゆしグループも離脱。

翁長知事を支援するオール沖縄会議の中では、敗北した名護市長選の総括や県民投票に対する意見が分かれたほか、革新の政党色が強まっていると保守層から反発が上がるなど、足並みが乱れていた。それでも両者は、翁長前知事の支援を継続することを明言。

そして2018年8月、翁長雄志前知事が死去。

金秀グループ 呉屋守將会長:
翁長さんはずっと保守・中道の中でこれまでの政治家としてのキャリアを築き、政策を打ち上げてきた。そういう人こそ我々も信頼して頼れるところがあったと思います

呉屋守將会長は2020年、翁長前知事の後継として擁立した玉城デニー知事の後援会長を辞任。オール沖縄勢力と完全に離別した。

元嘉手納町長 宮城篤実さん:
高く理想を掲げることは賛成だが、しかしそれは達成されなければ、ある意味で意味がないと考える人と、掲げることを続けることが大事だという二つの意味がある。特定の思想信条のために戦うことは出来ない、限界だということを悟って今回の構図になったと思う

宮城さんは保守・革新の立場を超えた「オール沖縄」は、翁長前知事だからこそ構築できた枠組みだったと振り返る。

元嘉手納町長 宮城篤実さん:
100人いたら100人の意思があるし理想があるし、人生があるわけ。それをずっと一緒に持ち続けるということは、翁長雄志が亡くなった今、誰もそれをやり得る人がいない

新たな政治潮流を生み出した稀代の政治家が死去してから3年、オール沖縄の凋落で県内政局は新たな展開を迎えている。

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
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