日本で唯一飛べない鳥 "ヤンバルクイナ"

2021年、天然記念物のヤンバルクイナが新種と認定されて40年。7月には沖縄県の本島北部が世界自然遺産に登録される一方、「やんばるの森」では希少な生き物が交通事故に遭う事例が後を絶たず、保護に向けた新たな取り組みも立ち上がっている。

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沖縄・国頭村安田で2021年9月14日の早朝、1羽のヤンバルクイナが道路に現れた。周りをキョロキョロと見回して、餌を探しているような様子。

1981年に新種に認定された国の天然記念物「ヤンバルクイナ」。2005年に個体数が700まで減少し絶滅が予測されていたが、捕食するマングースの駆除や人工繁殖を進めた結果、2021年に個体数は1600にまで回復した。

やんばる・地域活性サポートセンター 比嘉明男理事長:
よくそこに出てくるんですよ、ヤンバルクイナが。なぜ出て来るかというと、夜が明けてくる朝、車にぶつかった虫とかミミズが落ちていて、これを食べに来るんです

(左)やんばる・地域活性サポートセンター 比嘉明男理事長 沖縄県国頭村安田にて

8月末までに26件 ヤンバルクイナの交通事故が増加

やんばるの希少生物保護に取り組むNPOの理事長を務める比嘉明男さんは、ある問題に頭を抱えてる。

やんばる・地域活性サポートセンター 比嘉明男理事長:
交通事故が増えているんです。2020年の1年間の数より増えている。とても危惧しています

30年に渡ってやんばるの希少生物を保護し治療してきた「どうぶつたちの病院沖縄」の長嶺隆医師のもとには、交通事故に遭いけがをしたヤンバルクイナが運ばれてくる。

9月15日にも、脊髄を損傷し自力では立てなくなったヤンバルクイナのリハビリにあたっていた。

(左)どうぶつたちの病院沖縄 長嶺隆医師

どうぶつたちの病院沖縄・長嶺隆医師:
5月22日に国頭村で交通事故にあってしまって、路上で倒れているところを保護されたんですけど、背骨が折れていまして。脊髄が傷んじゃって足がうまく動かせない、自分で歩くことができない。今こうやって体重をかけたりしながら、少しずつリハビリをしている状態ですね

2021年に入ってから、8月末までにヤンバルクイナが巻き込まれた交通事故は26件。2020年の22件をすでに上回っている。

事故にあったヤンバルクイナは、死んでいる状態で発見されるか、生きていても病院に来るまでに命を落とす場合がほとんどだ。一命をとりとめ病院で治療を受けたとしても、けがの程度によっては長期間のリハビリが必要な場合や、野生に復帰することが難しい個体も珍しくない。

どうぶつたちの病院沖縄・長嶺隆医師:
例えば猫に襲われて、頭部を噛まれて両目が失明してしまったヤンバルクイナがいる。ケージの中では生きていけるけど、野生にはとても返せない。しかし、狭い場所では健康的には暮らせない。リハビリする施設がないなと…病院だけの施設ではとても足りないですし

長嶺医師の病院では、ヤンバルクイナ以外の希少生物の治療やリハビリも行っていて、病床が足りていない。

1日でも早く回復して野生復帰できる施設を作りたい

このような状況に立ち上がったのが、長嶺医師とともにヤンバルクイナの保護に取り組んできた比嘉明男さんだ。

比嘉さんが理事長を務めるやんばる・地域活性サポートセンターが、新たなリハビリ施設を建設するため7月にクラウドファンディングを始めたのだ。

やんばる・地域活性サポートセンター 比嘉明男理事長:
この施設を治療したヤンバルクイナのリハビリの場所として使いたい。1日でも早く機能回復して野生復帰できる施設にしたいと思っています

最終的な目標額は2000万円で、2022年秋の施設完成を目指している(クラウドファンディングの期間は9月30日まで)。

どうぶつたちの病院沖縄・長嶺隆医師:
比嘉理事長が「自分たちの作りたいリハビリセンターはどんなケージがいいのか、そこを考えなさい」と言ってくれて。もう泣きそうでしたけど、本当にありがたいなと思って

生物多様性が評価され、世界自然遺産の登録に至ったやんばるの森。希少な生き物を守り、豊かな自然を未来につなぐ取り組み。

やんばる・地域活性サポートセンター 比嘉明男理事長:
つないでいくことをしていかないといけない。我々の年代で止めずに、奇跡の森と言われたやんばるの森をずっと守っていく。我々に課された課題というのは大きいと思いますね

ヤンバルクイナの事故は早朝や夕方に多く、特に4月から8月の繁殖期は、ヒナの餌を探し回って頻繁に動くため事故が増加しやすい。豊かな自然や生態系を未来につなぐためには、環境を守る意識を持って行動することが私たち一人一人にも求められる。

(沖縄テレビ)