新型コロナウイルスの重症化を防ぐ効果があるとされる「抗体カクテル療法」。
この治療薬の導入で、医療現場にも変化が起きているという。

細胞への侵入を阻止「抗体カクテル療法」

谷本正憲石川県知事:
軽症者の重症化を抑える新たな治療法である「抗体カクテル療法」については、すでに感染者を受け入れる県内全ての病院で実施可能となっています

県議会で抗体カクテル療法について答弁する谷本知事
県議会で抗体カクテル療法について答弁する谷本知事
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石川県議会で、谷本知事が話した抗体カクテル療法。
どのような治療法で、どれだけの効果があるのか?
 金沢市の金沢医療センターで、2020年春の第1波から最前線で戦い続けている北俊之医師に聞いた。

金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長:
当院では、これまでに12例の患者さんで投与しましたが、患者さんは全員お元気になられまして退院されております。
例えば熱があった患者さんでも、比較的早期に解熱しますし、入院期間も短くて済みますので、早めに療養施設に移動することも可能になっております

金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長
金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長

抗体カクテル療法で使用する治療薬「ロナプリーブ」。「カシリビマブ」と「イムデビマブ」という2つの薬剤を混ぜ、点滴で投与する。

抗体カクテル療法で使用する「ロナプリーブ」
抗体カクテル療法で使用する「ロナプリーブ」

新型コロナウイルスは、スパイクと呼ばれるたんぱく質の突起を使い、体内の細胞に侵入して増殖する。
抗体カクテル療法は、2種類の薬剤に含まれる抗体がウイルスと結合し、細胞への侵入を阻止。発症から7日以内の軽症患者への投与が効果的とされている。

東京都は9月9日、投与から2週間が経過した患者420例のうち400例、実に95.2%の患者の症状が改善したと発表した。

この治療薬の導入で、医療現場にも変化が起きていると北医師は話す。

金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長:
石川県全体の病床が逼迫した時には、療養施設に直接入所された患者さんが多くおられました。
しかし、そこで悪くなって、病院に搬送される患者さんが結構おられました。
ところが、入院患者さんにこれを使い始めてからは、当院から療養施設に移動したあと、こちらに戻ってくることはなくそのまま自宅に退院されることから、病床も比較的回転が速くなり、多くの新しい患者さんを受け入れることも可能となっています。

撮影:金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長
撮影:金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長

「救える命は救える」コロナと戦う体制に手応え

効果を実感する一方、この治療薬には課題もある。

抗体カクテル療法で使用する「ロナプリーブ」
抗体カクテル療法で使用する「ロナプリーブ」

金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長:
(薬が)使える患者さんというのは、重症化の因子がある方。例えば50歳以上とか、糖尿病がある方、呼吸器疾患、心臓疾患、肝臓疾患、腎疾患、免疫不全があるような方、あと肥満の方ですね。そういう方に適用になりますので、比較的若くて元気な方は、現在はこの薬は使えません

金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長
金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長

また、点滴薬であるため、飲み薬のように患者が気軽に服用できないことも課題の1つだ。

しかし北医師は、この1年半でコロナと戦う体制が整ってきたことへの手応えも感じている。

金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長:
以前は使えるお薬が、2020年の春ごろはアビガンというお薬しか使えなかったんですけど、その後はさまざまなデータがそろってきて、われわれが使える武器はどんどん増えてきております

金沢医療センター呼吸器内科・北俊之部長:
発症後、なるべく早い時期に患者さんが病院にいらっしゃって、適切な治療を行うことによって、「救える命は救える」と思います

医療の進歩で、少しずつ光が見えてきたコロナとの戦い。
一番の課題は、感染者の急増で医療崩壊を起こさせない事。

そのためには、私たち一人一人の努力が大切だ。

(石川テレビ)

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