名古屋の夏の風物詩「にっぽんど真ん中祭り」は、コロナ禍の2021年、無観客のステージとオンライン配信で“ハイブリッド”開催した。

愛知県では本番直前に感染者数が1000人を超え、祭りを取り仕切る44歳の男性は、当初客入れをする予定だったステージを無観客にすることを決断。男性は、“オンラインとリアルのハイブリッド”という新しい形で祭りを成功へと導いた。

関係者1000人が接種 万全の準備で迎えるはずだった有観客のステージ

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8月26日から29日まで開催された第23回「にっぽんど真ん中祭り」。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、無観客となった名古屋市中区栄の久屋大通公園ステージとオンライン配信のハイブリッド開催となった。

“どまつり”を取り仕切る「にっぽんど真ん中祭り文化財団」の水野孝一さん(44)。

2020年はコロナの影響で、各チームが制作した映像を放送するオンライン開催となった。

コロナ下での2回目の開催となる2021年は当初、オンライン配信に加え、久屋大通公園に有観客のステージも設置する「ハイブリッド型」での開催を計画していた。

大勢の人を招く上で、水野さんたちが考えたのはワクチンの接種。“どまつり”を1つのコミュニティとして職域接種を申請し、どまつりの参加者や関係者約1000人に接種した。

どまつりに参加する大学生:
地域だと打てる機会がなかったので、提供してくれるのはすごくありがたい

さらに、久屋大通公園でステージに立つ69チーム・約4000人の参加者全員の自宅から会場までの交通経路を把握。

車での移動を基本とし、どの道を通るかまで事細かにチェックした。オンラインとリアルの融合…。新しい形の“どまつり”を作り上げるはずだった。

本番直前に感染者数が初の1000人超え…苦渋「無観客」の決断

しかし、本番8日前の8月18日。この日、愛知県の新規感染者数が初めて1000人を超えた。感染の急拡大を受け、水野さんはコロナ病床の状況と意見を聞くために名古屋市役所を訪れた。

名古屋市保健所の所長:
オリンピックでも(会場の)外にすごい人が来ていたわけで。実行委員会の方でコントロールできない人が集まることがあると心配です…

思っている以上に深刻な状況であることを知った水野さんは、事務局に戻りメンバーと協議。久屋大通公園ステージの「無観客」開催を決めた。

しかし、このような状況でも水野さんが中止ではなく開催をあきらめないのには理由があった。

水野孝一さん:
「やめます!」っていうのが本当は楽だったんですけど…。人生とか絆とか生きている証とか、そういう話にたくさん出会ったんですよ。だから絶対に安全でなくてはならない、安全に開催して成功しなきゃいけない

靴裏まで消毒…徹底した感染対策のもと繰り広げられたパフォーマンス

8月28日、どまつり当日。2021年は過去最多の438チームが参加。オンラインでは各チームが地元をテーマに制作した動画を審査。

一方、久屋大通公園にはステージの出演者が次々に到着。

入場は1チームごとで、手指の消毒と検温に加えて全身と靴裏まで徹底消毒。さらに2週間分の健康チェックシートを提出して、やっと入場することができる。

今回は出演者用に公園の地下の駐車場が用意され、指定された階段で会場に直接行けるよう準備された。熱中症対策のため、踊っている間はマスクを外すことができるが、演舞終了後はすぐに着用。

出番が終わったチームはそのまま帰らなければいけない。厳しい感染対策の中、それぞれのチームが無観客のステージでパフォーマンスを披露した。

水野孝一さん:
寂しいですね。でも、踊り終わった後に泣きながら帰っていくので、この5分間のためにわざわざ名古屋まで…。我々ももっともっと覚悟しないといけないなって

声援を送れない分、大きく拍手。水野さんは、無観客だからこそのおもてなしを大切にした。

「原点に返りイチからやっていきたい」“どまつり”を続けていくために

まつりは、いよいよフィナーレへ。

水野孝一さん:
今やれる精一杯だなと。(緊急事態)宣言下に示した方向を信じてくださって、ついてきてくださった皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです

大きな混乱なく終わった2021年の“どまつり”。その先に見えたものは…。

水野孝一さん:
失ったものも、たくさんありましたけれども…。絆だったり、繋がりっていうものを実感できた

「もう一度原点に返り、“どまつり”をこの名古屋でイチからやっていきたい」。水野さんは、既に来年のステージを見据えていた。

(東海テレビ)

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