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理容店が完全に浸水…約7割の世帯が床上浸水した地区も

死者・行方不明者88人を出した紀伊半島豪雨から10年が経った。

大きな被害を受けた三重県紀宝町は、教訓から事前の行動計画=タイムラインを全国に先駆けて導入。10年経った今、命を守るための取り組みは進化していた。

東口高士さん:
海抜20メートル。ここが浸かることあったら、紀宝町はないわね

東口高士さん(71)。紀宝町・鮒田地区の区長を長年務めている。

2021年4月、住民の悲願だった避難のための高台が完成した。

東口高士さん:
ここまで(海抜20メートル)でほとんど大丈夫。想定は想定やん。想定外が起こるんやから、起こったんやから

10年前の2011年9月、紀宝町を襲った「紀伊半島豪雨」。

台風12号に伴う大雨で町を流れる相野谷川が氾濫。1人が死亡、1人が行方不明となるなど甚大な被害を受けた。

東口高士さん:
ちょうどヒサシの下くらいとちゃうかな。(1階部分の)店は全滅やな

相野谷川沿いにある東口さんの理容店は完全に浸水。

鮒田地区は当時、約230世帯のうち7割を超える世帯で床上浸水した。

東口高士さん:
輪中堤があるやん。この堤防を越える手前の所までの写真は撮った。午後5時になったらここいっぱい、みんな池になっとった。自分の想定を超えたわけや。想定を超えるから災害、超えなかったら想定内

逃げ遅れのないように…「タイムライン」が続ける進化

想定を超える災害に対応できるための備えを…。豪雨から4年後の2015年、紀宝町が全国に先駆けて導入したのが「タイムライン」だ。

タイムラインとは、台風のように進路などが予測できる災害に備え、予め行政や関係機関がとるべき行動を時系列で細かく決めておく計画のこと。

紀宝町では台風上陸の5日前からの計画を決めていて、すでに実際の災害時に運用されている。

鮒田地区では、住民がとるべき行動をまとめた「地区版タイムライン」も独自に作っていて、全戸に配布して周知を図っている。導入から6年が経ったタイムラインは、時代にあわせてより進化していた。

東口高士さん:
台風が来た場合、3日前に役場から「タイムラインになりましたよ」と連絡がくる。それをどうやって知らせるかと言ったら、LINEでみんなに流す

町からタイムライン開始の一報を受けると、地域を取りまとめる班長などでつくるLINEグループで共有。高齢者らを取り残さないよう、すみずみまで働きかける。

さらに…

東口高士さん:
現状報告ってあるやん。何人避難しとるとか、全部わかる

町内14地区の区長が持つタブレット端末で避難状況をシェア。地区ごとの被災状況や足りない物品といった情報を共有できる。

東口高士さん:
進化は毎年しているつもりでおる。毎回、毎年、新しいものを

紀宝町防災対策室の担当者:
タイムラインを作成している地区のステージ状況が分かる形になっています

各地区のタブレット端末は、町役場の防災システムとも連動している。町は避難状況などをリアルタイムで把握できるため、タイムラインの段階ごとに住民がどう動いているかを管理・共有できる。

紀宝町防災対策室の担当者:
タイムラインが浸透することによって、みんな早め早めの避難が多くなって、避難者数も増えていると思います

それでも「防災はきりがない」 最も重要なのは住民の意識

階段を上ると、海抜60メートルまで避難できる鮒田地区の高台。救助ボートやショベルカーまで揃えた。

しかし、東口さんはどれだけ準備しても最後は住民の意識が重要と話す。

東口高士さん:
やっぱり人の問題やろな。人の教育が一番難しい。逃げてくれと言っても、逃げへんのやから。全国の人に言いたいのは、ちょこちょこ災害ありますやん。テレビで(放送)してくれるやん。してもろても、みんなどっかで他人事だと思っとるわ。(やることは)まだいくらでもある、防災はきりないで

(東海テレビ)