今から58年前に、福井・越前市にある山あいの中学校の生徒が描いた絵がこのほど見つかり、展覧会が開かれている。
絵には、里山の豊かな自然の中で暮らす家族が描かれていた。現代の家族のあり方を考える。

2021年3月、58年前の1963年(昭和38年)に描かれた絵が発見された。パイプがむき出しの水道に、タイル張りの炊事場。いろりに、家族総出の農作業風景。当時の暮らしぶりが、生き生きと表現されている。

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58年前に“タイムスリップ”

これらの絵は、当時の越前市の武生第二中学校・坂口分校の生徒が描いた。坂口分校のある越前市坂口地区は、コウノトリが舞う自然豊かな里山。

当時の武生第二中学校・坂口分校の生徒
当時の武生第二中学校・坂口分校の生徒

絵を発見したのは、元美術教師の朝倉俊輔さん(64)。

元美術教師・朝倉俊輔さん:
この(封筒の)中に絵が入っていたんです

58年前の絵が入っていた封筒
58年前の絵が入っていた封筒

発見した絵をSNSに載せたところ、坂口分校出身で仁愛女子短大教授の内山秀樹さん(64)が反応。絵を沢山の人に見てもらいたいと、展覧会を開くことにした。

坂口分校出身 仁愛女子短大教授・内山秀樹さん:
58年間ずっと眠ったまま、誰にも見られなかった絵が、いま世の中に出てきた事がワクワクする。あの絵に描いてあるのは、私の小さい頃の生活そのもの

これらの絵を指導したのは、戦後の美術教育に尽力した鯖江市出身の美術教師、故・木水育男さん。

58年前、教頭として坂口分校に赴任していた。当時の木水さんを、坂口分校卒業生の小原キミ子さん(71)はこう語る。

坂口分校卒業生・小原キミ子さん:
(絵に対して)ギラギラっとした先生だった。目がギョロっとした感じで

元美術教師・朝倉俊輔さん:
(木水先生は)絵を描かせることで何をさせるかというと、もう一度、自分の生活や家族への愛情を再確認している

絵を描いた 坂口分校卒業生・加藤和見さん(71):
絵を描いたことは覚えていない。わらを二階に上げておいて、冬になると縄を編んだりした。これは柿の木。庭にあったあった!思い出すね。懐かしいわ

絵を描いた 坂口分校卒業生・岩倉敬子さん(70):
母親を描いたんやね。昔のタイルの流し台。記憶にあるなと思って。(絵を)描いたのは覚えていないです

絵を描いたことは忘れていたが、当時の光景や思い出、様々な情景が絵から一瞬で思い出され、58年前にタイムスリップしていた。

展示会で懐かしむ人と過去を知る人

展覧会が始まり、連日 多くの人が公民館を訪れている。
中にはこんな人も…

展覧会を訪れた人:
(主人の)お父さんとお母さんがここに住んでいて、冬は雪がすごかったから雪かきに来ていたから、懐かしいな

現在、家はなくなってしまったそうだが、思い出は絵の中に残っていた。
また、当時を知らない若い世代も…

父親:
脚で立っているのが当時のテレビ。厚みがあるね。今のテレビは薄いやろ?

子ども:
うん。薄い。今とは違う。洗濯とか昔のほうが大変

展覧会を訪れた人:
(絵を)見ると懐かしい

絵を通して、様々な世代の人が58年前に思いを馳せる。

坂口分校出身 仁愛女子短大教授・内山秀樹さん:
昔の古き良き物が多く残されている地区の中で、季節の移ろいが肌で感じられる。人と人との関係とか、人と物の関係。
コロナ禍を含め、豊かな生活をしていく中で重要なものが絵の中に描かれているのではないか

58年の時を超えて、本当の豊かさとは何か、絵は私たちに語りかけているのかもしれない

(福井テレビ)