”妊娠8カ月”自宅療養中に出血も 入院先に見つからず

新型コロナウイルスに感染していた、千葉県・柏市の30代の妊婦が、自宅療養中に出血したものの、入院先が見つからず、自宅で出産。その後、赤ちゃんが亡くなっていたことが分かった。

柏市などによると、この女性は妊娠8カ月。発症からの経緯は以下の通り。
8月 9日 発症
  11日 感染確認、自宅療養に
  14日 『呼吸が苦しい』と訴え、中等症の症状に
  15日 妊婦ではなく、“コロナ患者”として入院先を探すも、見つからず
  17日 腹部の張りと少量の出血を訴えるも、入院先見つからず。
     夕方になり腹痛を訴え。午後5時過ぎ、自宅で出産。
     赤ちゃんは心肺停止の状態。病院で死亡確認。
出産当日の17日には、かかりつけ医、母体搬送コーディネーター、保健所、千葉県医療調整本部が協力して、5回に渡って入院調整を実施するも、受け入れ先はなかった。

柏市が記者会見『非常に医療体制がひっ迫している。その一言に尽きる』
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”3つの不運”が重なり悲劇が・・・

今回の例は、複数の不運が重なったと言える。コロナ患者として入院先が見つからず、対応が難しい”妊婦のコロナ患者”としても受け入れ先が調整できず、さらに早産リスクもあった。新型コロナに感染した妊婦の出産は、感染対策のために帝王切開や赤ちゃんの隔離などの処置が必要。対応できる病院が限られているため、入院調整が困難なケースが見られるという。

『妊婦のたらい回し』で思い出される14年前の出来事

『妊婦のたらい回し』『死産』と言えば、思い出されるのが、2007年に起きた悲しい出来事。奈良県で30代の妊婦が9つの病院に受け入れを断られ死産。その後、各地で同じようなケースが相次いでいたことが発覚し、社会に衝撃を与えた。この問題などを教訓に、全国で救急患者の受け入れについてのルール作りが進められた。

今後、妊婦の不安払拭も、”最大限”必要だ
今後、妊婦の不安払拭も、”最大限”必要だ

その際、東京都で整備されたのが『東京ルール』だ。

●5カ所以上の病院に断られ●20分以上搬送先が決まらない場合、中核となる病院やコーディネーターなどが受け入れ先を探す他、当番病院が受け入れる仕組みとなっている。

通常だと、東京ルールが適用されるのは1日20件ほど。

ところがコロナ禍の今、その数は6倍にも増えている。『救急搬送困難事例』は、各地で後を絶たない。そんな中、再び幼き命が犠牲になった。妊婦の不安払拭に最大限努めるとともに、広域での入院調整をスムーズに進めるなど、ぜひ手を尽くして欲しい。

(フジテレビ報道局・解説委員 平松秀敏)

平松秀敏
平松秀敏

『拙速は巧遅に勝る』。テレビ報道は、こう在るべき。
『聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥』。これが記者としての信条。
1970年熊本県出身。県立済々黌高校、明治大学卒。
95年フジテレビ入社。報道カメラマン、司法・警視庁キャップ、社会部デスクを経て、現在、解説委員。
サザンオールスターズと福岡ソフトバンクホークスをこよなく愛する。娘2人の父