大雨の影響で河川が濁流に変わる瞬間を捉えた、1分20秒ほどの映像が話題となっている。
動画は新潟県魚沼市を流れる「佐梨川」の2021年7月29日の様子を、下流部にある小出小学校の近くで撮影したもの。撮影場所では降雨が確認できないが、上流部ではこの日、雨が降っていたという。
冒頭では普通の河川のように見えるが、画面奥の川の水は何やら様子が違うのが分かる。

そして数秒後…河川の様子は一変!茶色い水や木片が混じる濁流が押し寄せてきたのだ。

水位もあっという間に高くなり、先ほどまで見えていたブロックも飲まれてしまった。もしも人が川に入っていたら、命の危険があっただろう。

この動画は魚沼市が撮影したもので、“災害級の大雨”への警戒が呼びかけられていた8月13日に市がTwitterに投稿すると瞬く間に拡散。「自然おそろしい」「河原や中州にいたら、確実に逃げ切れない速度だった。」などと話題になり、80万回以上も再生されている。(8月18日時点)。
【急な川の増水に注意しましょう】
— 魚沼市広報【公式】 (@uonumahp) August 13, 2021
投稿した動画は11km離れた大湯温泉で降った雨が、約1時間後に小出小学校付近へ木やごみを伴って濁流となり押し寄せる映像です。
上流で雨が降っているときは川に近づかないように注意しましょう。
担当:建設課(撮影)秘書広報課(編集)
連絡先:025-792-1494 pic.twitter.com/mZn0DCZxwh
画面越しでも恐ろしさが伝わってくるが、河川が濁流に変わる様子をタイミングよく撮影できたのはなぜだろう。魚沼市に聞いたところ、当時の意外な状況が分かった。
1時間「9ミリ」の雨で濁流は発生
ーー動画の撮影目的と当時の状況を教えて。
日頃から「急な河川の増水に注意してください」と呼びかけていますが、濁流となる瞬間を見た方は多くありません。動画にできれば、防災の良い啓発になると思いました。
当時の状況ですが、撮影場所から直線距離で約11キロ離れた「大湯温泉地区」で雨が降り、河川水位の上昇と濁流の発生を確認しました。そこで約1時間後、安全を確認した上で市職員が橋の上から撮影しました。※橋の高さは約7.7メートル
ーーこの雨や濁流で被害はあった?雨量はどれくらい?
被害は出ていません。実はこのときの雨、記録では1時間の雨量が9ミリ程度で、2時間ほどで止みました。撮影場所でも降ってはいません。ただ、上流部では短時間の間に降りました。数字だと「これだけ」と思う雨でも、鉄砲水や濁流が発生することが分かります。

ーー佐梨川はどのくらい増水した?
佐梨川の水深は浅いところで約20センチ、深いところで約80センチですが、動画撮影時は増水の影響で約3メートルとなりました。河川の幅も通常時は約25メートルですが、こちらも動画撮影時は約37メートルになりました。

ーー魚沼市は濁流が発生しやすい地域なの?
魚沼市は山中にあり、河川の川幅は上流にいくほど狭くなります。そのため、沢の水が集まりやすい環境ではあります。佐梨川では年に2~3回、動画のような濁流がみられます。
気付いてから避難するのでは遅い
ーー河川が一瞬で濁流に変わったのはなぜ?
動画では木の枝、茶色い水が襲ってくるのが見えます。そのため、河川の上流部で崖のようなものが崩れて、たまっていた水が流れたのではないかと想定しています。
ーー上流で雨が降った時、河川が危険な理由は?
河川では川遊びや釣りができますが、雨が降っていなくても上流で雨が降ると、今回の動画のようになることもあります。濁流を視認してから約30秒ほどで飲まれてしまうこともあるので、気付いてから避難するのでは遅いことは周知したいです。

ーー上流での雨や濁流が分かるサインはある?
上流地点や山の方向に黒い雲がかかってるかどうか確認したり、雨雲レーダーを注意してみてはいかがでしょうか。国や県のホームページでは、河川カメラ(河川の状況が動画などで分かる)も公開されているので、参考にしてもいいと思います。

ーー人々にはどんなことを伝えたい?
遊んでいる場所で雨が降らなくても、動画のような状況になることを知っていただければと思います。また、大雨の時は消防などがパトロールで声掛けをすることもありますが、そのような時はすぐに河川から離れるようにしてほしいと思います。
なお魚沼市は「この映像は専門の職員が安全であることを確認したうえで撮影しています。一般の方が同様の映像を撮影するのは大変危険なため、同じような状況でも絶対に川に近づかないようにしてください。」と呼び掛けている。
少ない雨でも濁流が発生することがあること、悪天候時は河川に近づかないことはしっかり覚えておきたい。
(画像提供:魚沼市)
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