新型コロナウイスの感染拡大が止まらない。デルタ株の流行により第5波が鮮明になる一方、長引くコロナ禍で緊急事態宣言の効果が薄れているとの指摘がある。また、ワクチン接種が進んでいない若年層の感染拡大も懸念される。

BSフジLIVE「プライムニュース」では、加藤勝信官房長官をゲストに迎え、感染急拡大に対する菅内閣の次の一手を掘り下げた。

「重症患者・高リスク患者以外は自宅療養」狙いは病床活用で重症者・死亡者数の抑制

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新美有加キャスター:
新型コロナ患者に関して「自宅療養を基本とする」とした政府の方針見直しについて。まず、現在の東京の医療逼迫状況を見ます。8月1日時点で、病床使用率はステージ4に近いステージ3。うち重症病床使用率と、療養者数に対する入院者数の割合を示す入院率もステージ4。厳しい状況です。
そんな中、菅首相は「重症患者や重症化リスクの特に高い方には、確実に入院していただけるように必要な病床を確保する。それ以外の方は自宅での療養を基本とし、症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備する」と発言しました。加藤さん、この方針の理由は。

加藤勝信 内閣官房長官:
ひとつは、東京はじめ首都圏や関西圏など各地域で、新規感染者数が急速なスピードで拡大していること。もうひとつは、新型コロナ発生から1年半以上が経ち、まったく未知のウイルスではなくなってきた。治療法もワクチンもかなり進んでいる結果、新規感染者のうち高齢者の占める割合が東京では20%から2〜3%へと、大変低い水準になった。感染の状況が変われば、医療の体制も変わる。
そこで、重症の方や重症化リスクの高い方が、しっかりと病院でケアを受けることで死亡や重症化の進行を防ぐ。また自宅で急に悪化する方が、確実に病院に入れるようにしっかり病床を確保するための運用として、今回の方針を出した。

反町理キャスター:
それは、中等症以下の人は基本的には自宅療養ということ? 

加藤勝信 内閣官房長官:
中等症の方の中には、すでに酸素が必要な重症化しつつある方もいる。中等症を外すのではなく、重症化リスクのある方が確実に病院に入るということを強調したい。

反町理キャスター:
すると中等症のうち重症化リスクを持たない人、また、軽症の人たちの入院はこれから無くなると。新規感染が急増し、中等症・重症患者の急増に伴う病床不足に備える方法という理解でよいですか?

加藤勝信 内閣官房長官:
不足というより、今ある病床を活用し、症状に合わせた治療内容を提供して重症者・死亡者をいかに抑えていくのかということ。

反町理キャスター:
自宅療養となると、独居の人はどうなるか。精神的なケアも行き届かない部分があるのでは。

加藤勝信 内閣官房長官
加藤勝信 内閣官房長官

加藤勝信 内閣官房長官:
地域ごとに診療所があり医師がいる。オンライン診療もある。定期的に病状をチェックし、必要があれば訪問していただく。訪問診療等についての報酬を充実させる政策も併せて行う。

反町理キャスター:
自宅療養か入院かという線引きについて、全国一律の基準を設けるというわけではないですよね。

加藤勝信 内閣官房長官:
基本的には他の医療と同じく、それぞれの症状があり、基本は医療現場の方が必要だと思った方にしっかり入院していただく。急激な拡大により、全ての患者が入院すればいっぱいになってしまう。余裕を作っておき、自宅療養の方に何かあれば入院していくということを意識していく必要がある。

反町理キャスター:
自宅療養がこれから一定量増える可能性がある中、それぞれの自治体の保健所が機能し、さばききれるのか。

加藤勝信 内閣官房長官:
保健所は本当に保健所でなければできない機能に特化していただき、他の部門からの応援や外部委託を活用し、健康管理をしてもらう仕組みに。開業医の皆さん、地区の医師会のご協力もいただき、うまく有機的なネットワークを作っていけるよう引き続き努力していく。

若い世代にわかりやすく正しいワクチン情報を伝えるためYouTubeも活用

新美有加キャスター:
東京都の年代別の感染状況、1月20日時点の重症者数は60代以上が8割以上を占めていましたが、今は40代から50代が全体の6割近く。新規感染者も1月には60代が最多だったが、現在は20代から30代が半分以上と変化。ワクチン接種の順位付けについては。

加藤勝信 内閣官房長官:
ここで急に方針を変えても、かえって混乱する。いずれにしても10〜11月までには希望する方全員に打つ。50代、40代はもとより若い方に対しても、ワクチン接種の必要性をしっかり訴えていかなければならない。

反町理キャスター:
アメリカでは、ワクチンを打てば100ドルもらえるような話もある。こうしたインセンティブについては。

加藤勝信 内閣官房長官:
インセンティブにはいろんな議論がある。基本的に接種はそれぞれの方の判断。そのために必要なわかりやすい情報を提供する。また、ネット上には明らかな誤情報もある。若い人に正しい情報を見ていただけるように、例えばYouTubeとのコラボなども行っている。

ロックダウンは日本にはなじまず…法整備しても理解がなければ運用は困難

反町理キャスター:
ロックダウンについて、菅首相は「日本にはロックダウンという手法はなじまない」と。一方、全国知事会の政府への提言には、ロックダウンのような手法を検討する要望が書かれている。感染急拡大の果てにこれを検討すべき状況に日本は向かっているのか。

加藤勝信 内閣官房長官:
特措法により、都道府県知事が外出の自粛要請や施設の使用制限にかかわる要請、命令をすることは可能。だが、罰則を伴って外出を禁止するなどのロックダウンは、わが国の今の法体系では行えない。まさに私権の大きな制約になる。実際に罰則をつけても、理解がなければ運用はなかなかできない。相当な課題があるため、総理もなじまないと申し上げている。

反町理キャスター:
なるほど。

加藤勝信 内閣官房長官:
ただ、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が、東京では今年の7カ月のうち6カ月で、実質ずっと続いている。自粛疲れもあり、飲食店にも大変なご負担をいただいている。特にワクチン接種が進む中で経済活動の先行きの見通しを、デルタ株もあり簡単ではないが、専門家の支援も得て示すことは非常に大事。

抗体カクテル療法は治療薬が承認され活用へ。薬の確保はできている

新美有加キャスター:
7月、抗体カクテル療法に使う治療薬「ロナプリープ」が特例承認されました。重症化リスクのある軽症から中等症の患者に使用するものですが、抗体カクテル療法への期待は。

加藤勝信 内閣官房長官:
海外の臨床実験では、入院または死亡に至った被験者の割合が約7割減少したという結果も得られている。まずは50歳以上、または一定の基礎疾患があり、重症化リスクのある方に積極的に活用していきたい。

新美有加キャスター:
使用により入院者を減らすとなると、やはり自宅療養されている方に打つのが一番いいかと思うが、今の段階では使用に一泊二日の入院が必要。今後、変わっていく可能性は。

反町理キャスター(左)と加藤勝信 内閣官房長官(右)
反町理キャスター(左)と加藤勝信 内閣官房長官(右)

加藤勝信 内閣官房長官:
今後、在宅の患者の方も含めて使っていくという方向で検討していきたい。新しい薬ですから非常に慎重に使っていく。今はまず、実践を進めていただいている。

反町理キャスター:
数は足りるのか。最初にファイザーのワクチンが出たとき、世界中の国による取り合いの競争になった。抗体カクテルについてもそのような状態になっている? 

加藤勝信 内閣官房長官:
具体的な数字は企業との関係があり申し上げられないが、先ほど述べた対象者の数を想定すると、必要な数は確保できている。

「内閣の一員として支持を高めることが責務」菅首相再選支持を明言せず

反町理キャスター:
最後に、コロナと関係ない話だが総裁選について。菅首相は先日「総裁として出馬するのは時期が来れば当然のことだ」と話した。加藤官房長官は記者会見でこの件について、菅首相の再選を支持するかどうかお答えになっていないと思う。これについては。

加藤勝信 内閣官房長官:
あれは政府の官房長官としての記者会見だから。私は当然、総裁である総理の内閣の一員であり、やはり総理総裁を国民の皆さんが信頼し支持をしていただける状況をつくっていくことが仕事。

反町理キャスター:
それは、官房長官として自民党総裁である菅さんの再選に向けて力を尽くしたい、ということでよろしい? いや、一国会議員として?

加藤勝信 内閣官房長官:
「総裁として出馬は当然」とおっしゃっておられますから、当然それを支持していただけるように政権としてしっかりとした仕事をしていく。それが私たちの責務だと思います。

BSフジLIVE「プライムニュース」8月3日放送

BSフジLIVE プライムニュース
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 “政治”、“経済”、“国際”、“環境”、“社会問題”の5つのジャンルから、いま世の中で関心の高い問題を毎回1つに絞り、その問題について相応しい人物(当事者や関係者)をゲストに、2時間に及ぶ解説と議論で、その問題を徹底的に掘り下げる。
フジテレビ報道局が制作するBSフジ夜のニュース議論番組。毎週・月曜~金曜日よる8時より放送中。キャスター:反町理/新美有加/長野美郷