厳しい暑さが続き、今年も熱中症と疑われる死者も出ている。環境省と気象庁では、今年4月から「熱中症警戒アラート」の運用を全国的に開始し、熱中症への注意を呼び掛けている。しかし、「熱中症警戒アラート」の存在は知っていたとしても、活用する人はまだ少ないようだ。

「熱中症警戒アラート」とは、気温や温度、日射量などを基に算出した「暑さ指数」が33℃以上と予測された際に発表されるもの。危険な暑さへの注意を呼びかけ、 熱中症予防の行動を取るように促すための情報だ。
※暑さ指数(WBGT)は、気温だけでなく汗の蒸発に関係する湿度、日射・照り返しなどの輻射熱を取り入れた熱ストレスを表す指数で、単位は度(℃)。乾球温度(気温)、湿球温度(湿度に関係)、黒球温度(輻射熱)の値を使って計算。

7月27日の熱中症警戒アラート(画像提供:環境省)
7月27日の熱中症警戒アラート(画像提供:環境省)
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健康機器メーカーのタニタは全国の15歳以上の男女1000人を対象に「熱中症に関する意識・実態調査2021」を6月29日〜7月1日に実施し、7月19日に調査結果を発表。

その中で「熱中症警戒アラート」を知っているかを聞いたところ、認知率は63.0%と半数を超える結果となった。

熱中症警戒アラートを知っていたか(画像提供:株式会社タニタ)
熱中症警戒アラートを知っていたか(画像提供:株式会社タニタ)

一方で、「熱中症にならないために気にしているもの」を聞いたところ、屋内/屋外ともに「気温」が最も多く、「暑さ指数(WBGT)」や「熱中症警戒アラート」を参考にしている人は全体の1割ほどだった。

しかし、熱中症の発生リスクは「気温」だけでなく、汗の蒸発に関係する「湿度」や、日射/照り返しなどの「輻射熱」も関係し、熱中症指数計で「暑さ指数(WBGT)」を確認し、こうした発生リスクを正しく把握することが熱中症予防の第一歩になるという。

熱中症にならないために気にしている(注意を払っている)もの(画像提供:株式会社タニタ)
熱中症にならないために気にしている(注意を払っている)もの(画像提供:株式会社タニタ)

また、夏のマスク着用に関する質問では、猛暑日でもマスクを着用しようと思うか聞いたところ、「そう思う」は69.1%となり、昨年と比べ8.4ポイント上昇したことがわかった。

ただ、暑い中でのマスク着用は、熱中症のリスクを高めることにもなるので注意が必要だ。

今年の夏のマスク着用についての意識(画像提供:株式会社タニタ)
今年の夏のマスク着用についての意識(画像提供:株式会社タニタ)

半数以上の人が「熱中症警戒アラート」を知っているのにも関わらず、これを活用する人が約1割ということが分かったが、この調査結果をどう思っているのか? そして熱中症対策としてどんなことをすればよいのか?

タニタの担当者に詳しく聞いてみた。

「どのようなものかまでは、まだ知られていない」

――そもそもなぜこのような調査を実施した?

熱中症に関する意識・実態を把握することで、より効果的な熱中症対策の方法を検討し、熱中症に対する正しい知識を身につけていただくための啓発活動に繋げていくことを目的としています。また、熱中症指数計などの商品開発にも生かしています。2019年より実施しており、今年で3回目となります。


――「熱中症警戒アラート」を活用する人が1割という結果、どう思う?

今回の調査で「熱中症警戒アラート」の認知率は63.0%と過半数を超えていますが、行動の指標としている人はまだ少ないという実態が明らかになりました。「熱中症警戒アラート」の意味合いやその活用方法についてさらなる啓発を図り、定着させていくための取り組みが必要だと感じます。


――なぜ気にしない人が多いと考えられる?

先ほどの通り、今回の調査で「熱中症警戒アラート」の認知率は63.0%でしたが、その内訳をみてみると、「どのようなものか知っていた」は15.9%にとどまり、「名前は聞いたことがあった」は47.1%となっています。

名前は聞いたことがあっても、実際に「熱中症警戒アラート」がどのようなものかまでは、まだ知られていないのが現状のようです。また、アラートの基準となる「暑さ指数(WBGT)」への理解度も関係していると考えています。

暑さ指数の把握、こまめな水分補給などが重要

――熱中症警戒アラートはやはり気にすべき?

熱中症の発生リスクは「気温」だけでなく、汗の蒸発に関係する「湿度」や、日射・照り返しなどの「輻射熱」も関係します。熱中症警戒アラートは、「気温」「湿度」「輻射熱」から算出される「暑さ指数(WBGT)」をもとに発表される重要な情報ですので、ぜひ参考にしてください。

――熱中症にならないためにどんなことに気をつけるといいの?

自分の体感だけで暑さを判断するのではなく、熱中症指数計を用いて「暑さ指数(WBGT)」を把握することが予防の第一歩と言えます。そして、こまめな水分補給や、扇風機・エアコンの使用、涼しい服装を心掛けるなど、場所や時間帯などに応じて必要な対策をとることが大切です。

今回の調査でも、「熱中症にならない自信がある」と答えた人の割合が最も高かったのは60代以上の男性です。熱中症は年齢に関係なく発生します。健康を過信し、「自分は大丈夫」と油断することなく、熱中症の発生リスクに対する正しい知識を身につけ、行動することが重要です。

※イメージ
※イメージ

――タニタが行っている熱中症の取り組みを教えて。

現在タニタでは、熱中症指数計の製造・販売をはじめ、自治体と協働して住民に対する熱中症リスクの「見える化」や啓発セミナーを実施しているほか、中学生を対象とした熱中症予防対策に関する出前授業などを行っています。今後もハードとソフトの両面から、熱中症予防に積極的に取り組んでいきます。


まだまだ厳しい暑さが続く。熱中症警戒アラートの全国的な運用は始まったばかりでまだ詳しく知らない人も多いかもしれない。しかし、これを参考にしつつ、こまめな水分補給や、扇風機・エアコンの使用、涼しい服装を心掛けるなどして対策することを心掛けてほしい。

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プライムオンライン編集部
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