白熱した試合の裏で…

7月24日から千葉の幕張メッセでテコンドーの試合が始まった。

初日は女子49キロ級の山田美諭選手が3位決定戦に挑むも、惜しくもメダル獲得に届かず。翌25日は女子57キロ級で濱田真由選手、男子68キロ級の鈴木リカルド選手が登場したが、どちらも初戦で敗れる悔しい結果となった。

各国の選手が八角形で囲まれたテコンドーの舞台に上がり、全力のプレーを見せ、舞台を降りていく。

しかし舞台に上がったのは選手に限った事ではなかった。
白熱した試合の裏に多くのスタッフの支えを見た。

防具を装着したスタッフが倒れ…

25日のトーナメント開始約1時間半前、幕張の会場に入った。
カメラの撮影位置を確認しつつ、ふとテコンドーの本番の舞台に目を向けた。

すると防具を装着したスタッフが八角形の舞台上に倒れたことに気づいた。

何があったのかと心配に思っていると、急ぎ足で「MEDICAL」と赤字で書かれた白いベストを着た数人が担架を手にその周囲に集まってくる。

試合中のアクシデントに備えた救急オペレーションの訓練が始まった。

彼らはあお向けに横たわった選手役のスタッフの防具を素早く外し、マスクをしたまま器具を使って酸素吸入のしぐさを行った。

そして選手役からふと離れる。AEDを使用した心肺蘇生の訓練だ。

コロナ対策のためかスタッフは皆、ゴム手袋をつけている。

手際の良い救急オペレーションの訓練はものの3分ほどで終えられた。

コロナ禍ならではの試合運営

その後しばらくしてアナウンサーがトーナメントの開始を告げた。

それぞれ赤か青の防具を身につけた選手が舞台に上がり、これまで磨いてきた技をぶつけあう。

テコンドーは1日で各階級のトーナメントの決勝戦までをすべて行うため、試合スケジュールは分刻みだ。

一つの試合が終わり、選手が舞台を去ると、今度は青色のボランティアジャージーを着た4,5人のスタッフがモップを手に舞台に駆け上がってきた。

銀色の樽を抱えた1人のスタッフがモップ隊の先頭に立ち、腰をかがめて体を左右に振りながら消毒液を舞台に噴射していく。残りのスタッフはその後に続いて、選手が戦った後の舞台にモップがけを流れるように行っていく。

試合と試合の合間は数分しかないが、安全安心な大会に近づけるためのコロナ禍ならではの運営が行われていた。

練習を重ねたであろう無駄のないその動きはプロフェッショナルの意識を感じさせた。

「プロフェッショナル」なスタッフたち

日本代表選手の舞台が幕を閉じたあとも、27日まで各国テコンドー代表選手の激しい戦いが幕張で繰り広げられる。

その間、スタッフらはこの日のようなプロフェッショナルの意識を持って安心安全な大会の運営に尽力し続けるのだろう。

これは幕張の会場に限ったことではないはずだ。客席の観客にその姿が届くことはないが、選手にはきっと届いていると思う。

コロナというハンデを負った東京大会の裏には多くのスタッフ、そしてボランティアの支えがあることを再認した。

(フジテレビ 五輪取材班 亀岡晃伸)

亀岡 晃伸
亀岡 晃伸

イット!所属。プログラムディレクターとして番組づくりをしています。どのニュースをどういう長さでどの時間にお伝えすべきか、頭を悩ませながらの毎日です。
これまでは政治部にて首相官邸クラブや平河クラブなどを4年間担当。安倍政権、菅政権、岸田政権の3政権に渡り、コロナ対策・東京五輪・広島G7サミット等の取材をしてきました。