マスク生活がすっかり馴染んだ中、「そういえば“マスクオフ”の顔を見たことがない」という人が周りにいないだろうか?

名前と目元は知っていても、いざマスクを外した状態で会った時、すぐに名前と顔が一致しなかった、なんてことがAfterコロナの時代にはあるかもしれない。

なかなかマスクが外せない生活の中でも、“マスクオフ”の顔をしっかりと覚えてもらいたい。そんな人にぴったりの「スマイル名刺」をご存知だろうか。

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長屋印刷株式会社(名古屋市)が販売するこの名刺、名前と一緒に「顔の下半分」が印刷されているのだ。名刺を縦に持ち、マスクを着けた相手の顔に重ねると“マスクオフ”の顔が完成!

名前と一緒に、本来の顔も覚えてもらえる、というアイテムで、6月28日に販売を開始した。

リアルな顔が印刷された名刺は一見不気味にも思えるが、その使い道を理解した瞬間、思わず笑えるアイテムに早変わりする。

Twitterでは「アイデアがすごい」「マスク問題、名刺で解決!」「社会の変化に応じたアイデアですね」といった声が挙がるほか、「この2年、今だにどんな顔の人かわからず話している人がいる」という人もいたりと注目されているが、そんな中で気になるのが「顔全体の写真を載せる方がわかりやすいのでは?」という点だ。

あえて「顔半分」をデザインした意図は? そして実際にこの名刺を注文した人はどのくらいいるのだろうか?

長屋印刷の中川剛代表取締役にお話を聞いた。

あえて手で“合成”する「無駄な遊びゴコロ」

――「スマイル名刺」開発のきっかけは?

弊社の販売商品に普通の名刺もありますが、コロナ禍においてオンライン化が進み、ビジネスで直接会う機会が減ったことが原因で、当然売上も落ちておりました。

そこで、印刷の会社である弊社が何かできないかと考えて、コロナ禍でDXや効率化が加速する時代の流れで、あえてアナログな名刺交換というコミュニケーションの場で、コロナ禍の今だからこそ、役に立つ商品はないかと考えて開発いたしました。


――顔全体がわかる写真入りの名刺と違う、この「スマイル名刺」ならではの点は?

ポイントは「無駄な」あそびゴコロと、サービス精神です。

顔がわからないのなら名刺に顔(全体)の写真をのせればいいわけで、そういった名刺、写真とか似顔絵とか、もうありますよね。だけど、あえて、下半分だけ。それをかざしてわざわざアナログでその場で顔と名刺を合成をするという無駄な行為。

コロナ禍で、リモートも増え働き方も変わる中、同時に効率化が求められるようになりました。もちろん大事ですが、 コミュニケーションの基本はサービス精神であり、「無用の用」「(一見)無駄な」「あそびゴコロ」で、マスク姿が日常・普通となった名刺交換の場が少しでも明るくなるといいな、と考えております。

こちらは「名刺マスク」
こちらは「名刺マスク」

なお同社は、マスクに名刺が印刷された「名刺マスク」を2020年10月に発売している。この「名刺マスク」は話題になった月にこれまでの約200倍の注文があったそうで、飲食店やホテルなどから数多くの問い合わせが寄せられたという。

そんな中で新たに発売した「スマイル名刺」のポイントは、「“無駄な”あそびゴコロ」と「サービス精神」

顔全体が印刷されている名刺を使えば「顔を覚えてもらう」という目的は達成できるが、あえて顔の下半分だけを印刷することで、相手の顔に名刺をかざして“合成”するひと手間が、コロナ禍で少なくなったコミュニケーションの種になってくれるというわけだ。

コロナ後の新入社員など、マスクありの顔しか見たことがない人が増え、中川氏は食事の際などに「あれ?こんな顔だっけ。街でマスク無しで会ってもわからないなあ、と思うことが結構ある」というのだ。

こういった経験が知人たちの間でも「マスクあるある」だとわかり、「Withコロナの時代において、はじめましての場を少しでも明るくできるような商品になればよいなぁ、という思い」で開発したという。

就活生にも使っていただきたい

――「スマイル名刺」にはどれくらいの注文がある?

販売がまだ始まったばかりですので、まだ受注数としましては、十数件です。

ただ、このアナログなコミュニケーションツールを面白いと思ってくださる、広告代理店やクリエーター系の方々、名刺交換でインパクトを求めている通訳やガイドなどの一度きりの出会いをお仕事にされている方からのお問い合わせや反響に手応えを感じています。

ビジネスシーンだけでなく、第一印象でインパクトを残したい就活生にも使っていただきたいと考えております。

――「紙の名刺」ならではのメリットは?

今まで【普通】であった、名刺交換が【アナログ】な方法として変化し、認識されてきました。だったら、紙でしかできないアナログな無用な遊びができること、はじめましての場でくすっと笑っていただけるネタを提供できるのがメリットだと思います。

Twitterでスマイル名刺のことを【スマイル名刺を顔に合わせるとソーシャルディスタンスが守られるのがよい】とツイートしてくださった方がいらっしゃいました。正直、そこまでは考えていませんでした(笑)。アナログを突き詰める方向で考案したものが、デジタルの中で広がっていくのも不思議な心地よさを感じています。

「デジタル名刺」「オンライン名刺」といったサービスが広まりつつある中、紙の名刺だからこそできた、ユニークな遊び方。
「スマイル名刺」は長屋印刷の公式サイトで、20枚1320円(税込)から注文できる。PC専用サイトを使って画像の切り抜きやレイアウトをする「セルフコース」と、スマートフォンなどで撮影した顔写真の切り抜きなどを代行してもらう「おまかせコース」がある。

一見、ジョークグッズのようにも思える「スマイル名刺」。だがそこには、コロナ禍で失われがちな人と人とのコミュニケーションを大切に、出会いの場を明るくしてくれるアイデアが詰まっていた。
 

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プライムオンライン編集部
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