再生1000万回のミュージックビデオが映画化

ある映画が静かに感動を呼び起こしている。

僕が君の耳になる

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ごく普通の大学生が聴覚障害者の女性と出会い、恋に落ちていく純愛ストーリー。7月20日現在、全国17の映画館で上映している。

主演女優は聴覚障害者。映画には手話が使われ、全編字幕がつけられているが、観客は耳の不自由な方のほかに健常者の方も多く入っているという。

映画「僕が君の耳になる」より
映画「僕が君の耳になる」より

映画は、HANDSIGNというボーカル&手話パフォーマーが2017年にリリースした楽曲のミュージックビデオが元になる。

ボーカル&手話パフォーマー 「HANDSIGN」
ボーカル&手話パフォーマー 「HANDSIGN」

この「僕が君の耳になる」のミュージックビデオが動画サイトYouTubeで1000万回という驚異的なヒットを記録している。

映画の公開記念舞台挨拶に主題歌を担当したHANDSIGNの2人が登壇し、併せてラルフローレン社による聴覚障害の子どもたちへのランドセル贈呈セレモニーも行われた。

ラルフローレン社ランドセル贈呈 6月26日
ラルフローレン社ランドセル贈呈 6月26日

ラルフローレン社が日本で初めて聴覚障害などがある子どもたちにランドセル500個を贈ることになり、HANDSIGNがプレゼンターに選ばれたのだ。

HANDSIGNと子どもたち 6月26日
HANDSIGNと子どもたち 6月26日

日本初 ストリートダンスに手話

HANDSIGNの結成は2005年。

ストリートダンスに「格好いいかも」と手話を取り入れたところ、クラブで見てくれた大学生らが「感動した」「格好いい」などと好評だったため、以来ずっと手話をパフォーマンスの一環にしているという。

手話については、結成当初は本などを読んで独学で習得。現在は指導を受けながら制作に取り組んでいる。

手話を取り入れてから、聴覚障害者のファンから「ライブって楽しいものだな」と感想を教えてもらったり、自分たちの曲を「告白ソング」にしてくれたと告げられたり、アーティストとして自分たちの音楽が耳の不自由な人たちにも届けられて、「知らない世界を知るようになり、新しい発見がいっぱい」だという。

この手話を取り入れた音楽エンターテイメント活動が聴者と聴覚障害者の架け橋になったことが評価され、HANDSIGNのTATSUが2020年に青年版国民栄誉賞と称された「JCI JAPAN TOYP 2020」でグランプリを受賞、激励賞として内閣総理大臣賞と日本放送協会会長賞をも受賞している。

TATSUが「JCI JAPAN TOYP 2020」でグランプリ受賞 2020年8月
TATSUが「JCI JAPAN TOYP 2020」でグランプリ受賞 2020年8月

実話に基づいた曲が大ヒット

再生1000万回を記録した「僕が君の耳になる」も手話イベントを通じて知り合った方などの実話に基づいて作られたものだという。

イベント帰りの空港での雑談が、その後この曲を作り、さらにミュージックビデオを誕生させるきっかけとなった。

曲のミュージックビデオを動画サイトにアップして順調にファンを獲得していったが、コロナ禍の1年でさらに飛躍的にアクセスが増えたという。

ミュージックビデオ「僕が君の耳になる」より
ミュージックビデオ「僕が君の耳になる」より

「感動した」、「僕の妻も聴覚障害者」、「今後福祉の仕事に進めたい」などといったコメントが多く寄せられた。

コロナ禍の自粛で多くの人々がより一層人とのつながりを求め、人とのつながりに励まされているのだろう。

今後も「手と顔で歌う」

厚生労働省によると、日本の聴覚障害者は約34万人。

首相や首長の会見に手話通訳が常に側にいたり、動画サイトで手話関連のチャレンジ動画が若者によって多くアップロードされたり、手話が我々の生活にますますなじみのあるものになっている。

これは、HANDSIGNのような各分野にいるいろんな立場の人々の努力によるものだろう。

HANDSIGNの2人 TATSU(左) SHINGO(右)
HANDSIGNの2人 TATSU(左) SHINGO(右)

ますます多くの人が違いや障害を乗り越え人生を楽しむために、HANDSIGNは、今後も「手と顔で歌い」、「手を声にして」、もっと多くの人々に音楽で元気にしたいと抱負を語った。